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学習研究社、1500円。
障害者教育に対して、何の知識もなかった著者が、偶然のなりゆきで、盲学校の教師となり、そこで過ごした6年と4ヶ月を綴った作品。
著者が触れた、盲学校の世界・・・。
その時々で感じた、喜びや悲しみ、驚きや、苛立ちさえも、実に素直な文体で描かれている。
もともと『障害者教育』に対して、知識もなければ、情熱も持っていなかったからこそ、そこで体験するひとつひとつが、実に新鮮に感じられているのがよくわかる。
読み進んでいくうちに、『目が見えない』ということが、どんなものであるのか、また障害者と社会の関わり方、さらには障害者自身の問題にも直面しつつ、一人の人間として、悩み傷ついていく姿も赤裸々に語られている。
決して、涙がボロボロこぼれるだけの本ではない。
勇気がたくさん湧いてくるだけの本でもない。
だけど、常に真摯な姿勢で、盲学校の生徒と過ごした著者の、心と身体の変化が痛いほどに伝わってくる。
日常生活に倦む、疲れる・・・学校を去るにあたっての本音も隠さず、綴られている。
辞めてから、月日がどんなにたっても、著者にとっては、盲学校の体験が、今なお新しい。—これは、あとがきである。
大学を卒業して、すぐに飛び込んだ、盲学校の生活は、著者にとって、青春そのものだったのではないだろうか。
学校でのエピソードの合間に、考えさせられる箇所にたくさん出会った1冊でもある。