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ノンノベル、780円。
大学教授の秘書をしている古橋万由子は、ある画家の遺作展を見に行った。
ところが、そこである絵を見た瞬間「鋏が・・・!」といって気絶してしまう。
その事件のあと、画家の息子が訪ねてきて「あなたは母の生まれ変わりです」といい始めた。
不思議なすべりだしで始まる物語は、やがて・・・。
恩田さんの初期の頃の作品。
新潮社、1400円。
1991年刊行の本が復刻されたもの。
ある地方の高校では、連綿と受け継がれているゲームがあった。
それは3年に一度、「サヨコ」を指名された生徒があることをしなければならない・・・といったルールだった。
そして、今年は六番目の「サヨコ」が指名される年だった・・・。
「学校」という、ある一時期誰もがそこにいた場所で、物語でありながら、現実感と想像のはざまをゆれるような感触が味わえる。
じわじわとした緊張感と恐怖感で、次のページをめくるのさえもどかしい作品。
TVドラマ化。
祥伝社、1700円、短編集。
読後感を一言で表するなら、「お正月の福袋」といった感じ。(いい意味で・・・)
デビュー作『六番目の小夜子』に登場した関根秋の父親であり、元判事の関根多佳雄を主人公とした12編の短編集。
12編もの短編が、趣がそれぞれに異なり、幻想的なもの、ホラー的なもの、ファンタジー風、本格推理などなど、バラエティに富んでいる。
300ページにも満たない1冊の本の中で、ありとあらゆる仕掛け、さまざまな手法、趣向が楽しめる。
余談だが、最後の「魔術師」という作品は、S市を舞台に市町村合併・都市伝説を扱ったものだが、個人的に合併当時、住んでいた街でもあり、ある意味で興味深く読むことができた。
集英社、1600円+税,、長篇小説。
人類は時間を遡行して、歴史を修復することができるのだろうか?—SF映画の大作を思わせる壮大なテーマに取り組んだ意欲作。
未来から過去の歴史を検分して、「もしもあのとき、この事件が起こらなかったら…もしくは、違った方向になっていれば…」という、ifものである。
1936年2月26日—いわゆる「2.26事件」である。
よりよい歴史を作り出すために、未来の国連が選んだ日本の歴史分岐点をこの日に定め、当時の軍人が再生を実行していく。
果たして、人類の悲惨な未来を救うべく、歴史再生は成功するのだろうか?
最初の興味深さから、途中面白みが半減してしまったように思う。
ページ数の割には、手応えが物足りない。
「不一致→再生を中断」というシーンがあまりにも多く、少々くどく感じる。
2.26事件を歴史分岐点とするにも、作中での時代背景なり、もっと盛り込んでもよかったのではないだろうか。
単に私自身の2.26事件への無知ゆえなのだが、今ひとつわかりにくかったのは事実である。