書名&たまえもん度★をクリックすると「たまえもん書評」が表示されます
河出書房新社、1300円。
著者・村松氏が、21年間もの間、人生における最大の伴侶として過ごした、牡ネコであるアブサンに捧げる「アブサン物語」の続編。
特にこの作品中では、改題前が「アブサンの最期」だったことからもわかるように、21才(人間でいえば、とっくに100才は越している年齢)で、見事なまでの大往生をとげ、天国へと旅立つまでを淡々とした筆致ながら、克明に綴っている。
アブサンの最期・・・もう横たわっているしかできなくなったアブサンが、必死に起きあがろうとして、きちんと正座して村松夫婦に最期の挨拶をしようとするシーン、最期の最期に奥様の腕の中で、安らかに眠るように息を引き取るシーンには、思わず涙があふれてしまった。
2000年の夏の日に旅立っていった、実家のネコの最期に重なるものがあり、ネコの人生・・・ネコ生?・・・ネコでありながら、もうすでにネコではなく、村松氏も言ってるように人生の伴侶ともいうべき存在になる、ネコとの別れはいつの日でも悲しい。
実家でもコセツ亡き後、さまざまなネコたちが庭先に現れるが、彼女以外のネコとまた暮らしたいとは思えない。。。と、我が父の胸の内が、この本を読んでよく理解できる。
きっと父にとっては、コセツはネコであって、ネコでない・・・家族だったに違いないからだ。
だからこそ、コセツの代わりとなるネコは、コセツ以外の何者でもないんだろうと思えるのだ。
村松氏も、アブサン以降、外ネコはいるのだが、伴侶としてのネコとの同居は考えていないらしい。
河出書房新社、1300円。
村松夫妻の最良の伴侶だったアブサンが逝ってから、5年。
今だに村松家のそちこちに、アブサンの思い出、残り香が色濃く残っている。
村松氏は村松氏のアブサンとの思い出があり、奥様には奥様のアブサンがいる。
それぞれの胸の内にあるアブサンを、氏は自分の心に問いかけながら・・・また、奥様の心の中のいるアブサンについては優しく推し量りながら、綴ったエッセイ。
さらに今回は、アブサン以外のネコたち・・・とりわけ、外ネコとして生きていけないのではと危惧されたアダチを始め、袖萩一族に対しての著者を始め、周囲のあたたかい心配りも語られており、アブサンを取り巻く世界が広がっているのも興味深い。
PHP文庫、450円。
新選組、鬼の副長「土方歳三」。
武州多摩・農家の六男であった彼が、浪士隊に身を投じ、激動する幕末に「士道」を貫かんと、近藤勇・沖田総司らと共に徳川幕府警護のための「新選組」を結成—京の都を震え上がらせるほどの鉄の組織を作り上げるが、やがて時代の波に流されていく。
生地日野を皮切りに、小石川伝通院、木曽、京、伏見、流山、会津・仙台、そして函館と著者自身が土方歳三の足跡を綴ったライブ紀行。
わずか六年にすぎない、しかしながらその生き様は疾風怒濤のごとき歳三の旅を、さまざまな風になぞらえながら、最期壮烈な死を遂げる函館まで追い求めていく。
「誠」に殉じた男が駆け抜けた35年の人生を、虚実とりまぜて浮かび上がらせていく。
真の歳三の面影があちらこちらに見え隠れするような、新選組ファンにとっても嬉しい1冊。