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新潮社、1800円、イラスト+フォトが素敵なエッセイ集。
1994年春〜95秋にかけて、雑誌「SINRA」に掲載されていたものに新たに加筆した作品。
『やがて哀しき外国語』の続編にもあたるものだが、かなり自然体で書かれたエッセイ。
春樹氏がつぶやいたり、感じたことが、そのまま「文章」となって目の前に表れた、といった感じがする。
安西水丸氏のイラストと、村上春樹氏の奥様の写真がさらにその効果を倍増させている。
しかも当事者たちの「なごやかな絵日記風に・・・」という試みも見事に成功している。
内容もケンブリッジでの生活や、小旅行、スポーツ雑記など多岐にわたるが、中でも表題にもあるように猫とのからみが多いのも特長。
いずれにしても肩のこらない、ナチュラルな気持ちになること、請け合いのエッセイ。
新潮社、1300円、短編連作集。
この本には、全部で6篇の短編が収録されている。
しかも、ひとつひとつが独立したものであり、またそうでないとも言えるものなのである。
何故かというと、『短編連作集』でありながら、主人公や物語において、何ら関連性がなく・・・いや、ひとつだけあるとすれば、全ての作品に共通するものは『阪神大震災』なのだ。
しかも、そのキーワードの関わり方も、それぞれに大なり小なり、趣が異なる作品ばかり。
最後に〈連作『地震のあとで』〉ともあり、非常に納得させられる。
阪神大震災、という未曾有の災害であり、自然の脅威の前に、人間個々の存在は何と無力なのだろうか。
また無力でありながらも、ちっぽけな存在でありながらも、『人一人の人生』は、何と愛おしいものなのだろうか。
さまざまな想いが、それぞれの作品を読みながら、感じる、あるいは考えさせられる短編集。
中でも、「かえるくん、東京を救う」と、「蜂蜜パイ」が印象的。