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廣済堂出版、1619円。
「女帝3部作」の、第1作目。
この3部作は時代が新しい時代から、古代へと逆行していく形だが、それぞれを読んでみても特につながりはなく、独自に読んでいっても差し支えない。
奈良東大寺の大仏(毘盧遮那如来像)を建立して、平城京を代表する聖武天皇と光明皇后の娘である阿部媛がヒロイン。
しかも彼女は『孝謙・称徳』と、2度までも帝位についている。
2度も天皇位であった彼女のまわりには、もう一人有名な人物がいるが、それが怪僧ともいわれる「道鏡」である。
しかしこの作品では、一般的に伝えられるようなものではなく、女帝であった孝謙・称徳天皇の内面的な苦悩や弱さを支える、運命の人として描かれている。
が、しかしながら同じような題材でも、黒岩重吾氏の「弓削道鏡/上下巻」のほうが、私としては数段おもしろかったように思える。
廣済堂出版、1800円。
「女帝3部作」の、第2作目。(第1作は孝謙天皇&道鏡、第3作は推古天皇&聖徳太子)
日本の歴史をひもとくと、史上もっとも怖い、鉄の意志を持った女性が持統天皇である。
著者あとがきにも、「意思が強くて、執念深くて、それでいて明るく元気のいい魅力的なヒロインを描きたかった」とあり、確かに中国やヨーロッパの国々の女王や女性に比べても、遜色ない行動派ヒロインがまさしく持統天皇といえる。
大化の改新・壬申の乱といった国内の争い、対半島(白村江の戦い)&大国唐への防備などなど、この時代はまだまだ「国」としての方向性が確立していない、激動の時代でもある。
そんな時代において、父・天智〜夫・天武が築き上げんとした「律令国家」を強力に推し進め、完成させた手腕は、見事であるという他ない。
しかしながら、この作品は中大兄&鎌足の大化の改新から、物語が始まっており、その後のさまざまな事件を描写することにページが割かれており、「炎の女帝」としての持統天皇の存在そのものが希薄に感じてならない。
ともすれば、サブヒロインの額田王のほうが、存在感と魅力が際立つ結果となっている。
もっと持統天皇の讃良媛時代からのドロドロした執念や、迫力をグイグイ描写して欲しかった・・・というのが率直な読後感である。