書名&たまえもん度★をクリックすると「たまえもん書評」が表示されます
かもがわ出版、2200円+税、絵・文・句から構成されている。
2002年4月〜2003年3月まで京都新聞紙上に連載されたもの。
京の街では、あちらこちらで町家を保存しよう、あるいは活用していこうといった機運が盛り上がっている。あるいは町家に住みたい!といった声も多く、京町家は今、ちょっとしたブームでもある。
本書は、ギャラリーMを経営する傍ら、京都の児童文学や句会でも活躍し、絵画歴も45年に及ぶ松本祐佳さんが京都の町を隅々まで歩き、絵筆を握って描いた作品集である。
祇園祭、粟田祭、時代祭、お火焚き祭、節分などの季節の題材や、古くは応仁の乱まで遡る歴史と佇まいを誇る蕎麦処や、江戸時代創業のお米屋さんまでさまざまな町家が紹介されている。
写真以上に、その風情が伝わる絵は、町家をこよなく愛する京都人ならでは…と思わず魅入ってしまう。
観光都市京都の表看板が、由緒ある寺社仏閣や四季折々の花鳥風月を愛でることならば、さしずめ何気ない小路にひっそりと佇みながらも京の町並を支える町家こそ、もう一つの京看板なのではないだろうか。
日本全国、どこに行っても金太郎飴のごとき景色が多い中、京都だけは永遠に京都であり続けるためにも、この町家に代表される風景を大切に保存していってほしいと切に願ってしまう。