講談社ノベルス、960円、長篇ミステリー。
以前から気になってはいたものの、実は本書が初めて手に取る京極作品である。
途中、一旦挫折しかかったのだが、最後まで絶対読むべきだと思った。
終戦から七年たった頃の東京が舞台となる。
雑司ヶ谷で老舗産婦人科経営する久遠寺家で妙な噂が広まる。
妊娠して二十箇月も経つのに一向に赤ん坊が産まれない妊婦、しかも妊婦のご亭主は密室から煙のように失踪してしまう。
おまけに失踪事件の起きる前から、この病院では産まれた赤ん坊が次々に行方不明になるという。
久遠寺家の長女、涼子は、それら一連の謎を解決すべく、榎木津の探偵事務所に相談に来るのだが…。
日本的な悲劇を背負った家系に連綿と続く、呪いと哀しみ、狂気を描いた作品。
古本屋にして陰陽師でもある京極堂店主・中禅寺秋彦が難事件を解決する京極堂シリーズ第一弾。(1994.9.5初版発行)