〈小林　惠子〉

文藝春秋、１３００円。
古代史上もっとも有名でかつ謎に包まれている、聖徳太子。
彼が女帝推古天皇のもと、強力に律令国家の基礎づくりをした時代ではあるのだが、人物像そのものはあまりにも美化されたものが多く、到底実在の人物と思いにくい。
この書は、歴史家である著者が膨大な史料や過去の歴史書等を駆使しながら、本物の太子像を解明しようと試みている。
六世紀から七世紀にかけての世界、特に東アジア・中央アジアに照準をさだめ、英雄「聖徳太子」は、海を渡ってきた遊牧騎馬民族突厥（とつけつ）なのではないだろうか？と、仮説をたてている。
これまでの数々の聖徳太子に関する諸説とは、趣の異なる１冊。
興味深い題材ではあったのだが、いかんせん私自身の知識不足で、当時の東アジア・中央アジア系の状況が今ひとつ、飲み込みにくく消化不良気味になってしまった。