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新潮社、1800円。
「時と人」シリーズの第一作。
17歳の自分が、気がついたら25年も先の自分になっていた・・・しかも、高校生だったはずなのに夫もいれば、自分と同じ(はずの)17歳の子供までいる。
時空を超えた主人公が、さまざまな驚きやとまどい、ときには困難にも明るく立ち向かいながら成長していく物語。
最近は世の中の変化する速度が、ますますスピードアップしており、10年でも充分その違いに驚くのに、主人公は「25年」もいきなり飛んでしまう・・・にもかかわらず、とまどいながらも、その現実と立ち向かう主人公の姿に、つい応援してしまいたくなる。
北村氏らしい、さわやかで後味のすっきりする作品。
新潮社、1700円。
「時と人」シリーズの第二作。
今回は、何度も何度も同じ時間を繰り返してしまう、女性の物語。
ある事故をきっかけに、時空がターンするように、同じ時間に戻ってしまう。
しかも、他の人はどうやら普通に時間が進んでいっているらしい。
前作のようなグイグイと読み進んでいく、といったパワーは感じないが、やさしい北村ワールドが堪能できる作品。
新潮社、1800円。
「時と人」シリーズの第三作。
太平洋戦争前から、昭和〜平成へと時を紡ぐ物語。
水原真澄こと、まあちゃんも、神戸で比較的恵まれた家で育ち、幸せな女子校生活を送っていた。
そんなある日、父の勤務する会社の社主のお嬢様である、田所八千代の家に招かれることになった。
そこで初めて出会ったのが、八千代の従兄弟である結城修一であった。
言葉すらかすかに交わすくらいの、まだ「恋」とも呼べるほどではない、淡い憧れ——。
やがて、戦争が始まり、真澄たちも例外なく、お国のために飛行艇を作る作業に従事するようになる。
空には、日増しに本土を攻撃する敵機の襲来も激しくなり、しばしば作業を中断しながら、防空壕に逃げ延びる日々が続く。
そんな過酷な毎日の中で、ふとしたきっかけで修一への気持ちが心の奥底に根づいていく。
しかし、そんなある日運命が二人を大きく引き裂いてしまうのだったが・・・。
現代のように、率直に愛の告白も何もできない時代に、まして命の保証さえない時代に、一途に相手を思う気持ちを育んでいく真澄と修一。
しかし、運命の歯車は過酷なまでに二人に残酷である。
だからこそ、この作品は、珠玉のような愛を、「時」で奏でたラブストーリーでもある。
新潮社、1400円。
小学3年生のさきちゃんと、お話をつくる仕事をしているさきちゃんのお母さんの物語。
絵は「おーなり由子」さんが手がけている。
画風が物語にぴったし!って感じで、思わずほほえみながらページをめくってしまう楽しい1冊。
この本のタイトルにもなっている「さばの○○○」(実際の本では、ちゃんと文字が入っている)、さきちゃんのあたたかい気持ちにホロリとさせられる「川の蛇口」などなど、温かく優しい・・・それでいて、どれもが日常どこにでもあるようでないような不思議な北村ワールドがたっぷり楽しめる作品。
新しい北村氏の世界にふれられて、とっても満足。
さきちゃんの視点、お母さんの見る角度、感じ方などなどがなつかしいようで新鮮なのもいい。
おーなり由子さんのイラストもとってもステキで、次は彼女の「絵の本」を是非手にとってみたい。
講談社、1600円。
花屋を営む瀬川章一郎は射撃を始め、友人に誘われ鴨猟に出かける。
しかし不幸なことに、その途中である男に出会ってしまう。
男は瀬川から猟銃を奪い取ると、ある家に押し入り、そこにいた女性を人質に立てこもる。
一方、テレビディレクターの末永純一は、どうしても成功させなければならない番組のプランを考えながら、車で家に帰ろうとしていたが、そこで見たものは我が家を取り囲む、ものものしい数台のパトカーだった・・・何と、凶悪な男が立てこもり、妻である友貴子が人質になっているという。
凶悪な男を黒のキング、末永自身を白のキング、妻を白のクイーンとし、序盤戦〜中盤戦〜終盤戦と、チェスゲームを模した章割りで物語が進んでいく。
その間に妻である友貴子の同級生のいじめに合ったつらい過去が、同時進行で語られていく。
並行しながら進行する、現在の事件と過去の事件・・・そして最後に勝者となるのは誰なのか、ゲームはどのような展開を見せるのか、一気に読ませてしまう作品。
北村氏のすみずみまで計算しつくした物語は、芸術的でもある。
もう今回もどっぷり、北村マジックにはまってしまったのが実感。
次なる手は、いったい何なのか、楽しみで仕方ない。
角川書店、1200円、短編連作集。
「覆面作家シリーズ」の第一作。
謎の覆面作家は、実は大金持ちのお嬢さま。
しかも美しく、おしとやかで言うことなし——のはずだったのに・・・。
実は非常に驚くことに、家の中と外とでは、人格・素行が一変してしまうという、性癖(!?)の持ち主でもあったのだった。
そんな愛すべき(!?)お嬢さまの千秋と、彼女の編集担当者である岡部良介とが、繰り広げる笑いがいっぱいのミステリー。
TVドラマ化。
角川書店、1200円、短編連作集。
「覆面作家シリーズ」の第二作。
覆面作家であり、お嬢さまでもある千秋と、その編集担当の良介とが繰り広げる、とっても愉快でハートフルな短編ミステリー集。
良介の双子の兄である刑事の優介も、いい味出しててナイスな存在。
角川書店、1339円、短編連作集。
「覆面作家シリーズ」の完結編。
個人的には大好きなシリーズなので、もっと続きが読みたいと切望してしまう。
日常における数々の事件を、お嬢様であり、覆面作家でもある千秋が、鮮やかな推理で事件を解決していく作品。
千秋と良介のじれったいような恋の行方も気になるのだが・・・。