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角川文庫、640円。
ある日、気がついたら全く見知らぬ世界にいた・・・しかも、そこではテレビゲームさながらに指示通り行動しなければ生き残れない不思議な空間だった。
そして、そこで始まったサバイバルゲームとは?
最初から最後まで、一気に読んでしまうおもしろさ。
貴志氏の新境地ともいえる作品。
角川書店、1500円。
生命保険会社で事務をとる若槻は、ある日1本の不可解な相談電話を受ける。
そして、名指しで訪問依頼を受けて行ってみた家で見たものは・・・。
読み進むほどに、恐怖がざわざわと増幅していく。
人間の奥ひだに隠された本物の恐怖が描かれている。
一級品の心理ホラー小説。
映画化。
角川文庫、640円。
阪神大震災被災者の心を癒すボランティアに参加した主人公が出会う一人の少女——恐怖は、そこから始まったのだが・・・。
貴志氏のはじめての作品。
最初はゆっくり、じわじわと恐怖がこみあげ、ラストは・・・息もつかせぬ展開で一気に読ませる。
この作品も映画化。
角川書店、1700円。
ホスピス医の早苗の恋人が、アマゾン学術探検隊に加わってから様子を知らせるメールが届いていたが、ある日連絡が途絶えてしまう・・・。
突然帰国した恋人は、異常な食欲亢進と感情の高ぶりをみせ、「天使の囀りが聞こえる」と口走り、自殺してしまう。
早苗は彼だけではなく、他にも同様の自殺者や失踪者がいることに気づき、調べ始めるが・・。
「憑依」という謎を、生物学的に解き明かしていく、恐怖の物語。
角川書店、1400円、長編ミステリー。
この作品を読み進んでいくうちに、いつもの貴志氏の作品とはちょっと雰囲気が異なるように感じた。
全体的にテンポと、衝撃度が違うのだ。
貴志氏の作品は、いつも冒頭で、強烈なショックをうけて、猛スピードで読み進みたい衝動に駆られるものだが、この作品にはそれがない。
主人公である高校二年生、櫛森秀一の心理状態や環境など、ディテールにこだわっての進行は、今までにない「じわじわ状態」である。
秀一が普通の高校生活を送りながら、頭を悩ませている問題は、平和な自分の家に、母の離婚した元夫である曾根が闖入し、居座ってしまったことから始まった。
妹の遥香や、母に向ける曾根の視線。
息を潜めるように暮らすようになった、我が家。
秀一は、そんな曾根から愛すべき家族を守るために、曾根を強制終了するべく、周到な計画を練り始めたが・・・・。
心に青い炎を灯すかのように、一人で思いつめていく秀一だが、全てが実行されたときに気づく、日々の平凡な生活や愛すべき家族・友人との別れが哀しい。
これまでの貴志作品への、固定観念を捨てて読むことを勧めたい1冊。