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福武文庫、500円。
本のタイトルは「皇女アナスタシア」だが、その他4編を含む5つの歴史ミステリーが掲載されている。
ロシア革命で消えたニコライ2世の第4皇女アナスタシアを自称したアンナ・アンダーソン。
フランス革命のさなか断頭台の露と消えたマリー・アントワネットの息子ルイ17世。
アレクサンドル・デュマの小説でも有名な「鉄仮面」こと、太陽王ルイ14世王政下に実在した謎の囚人ユスターシェ。
「ヨーロッパの孤児」と呼ばれ、バイエルン王国を震撼させた謎の少年カスパール・ハウザー。
即位からわずか33日で急逝した、ローマ教皇ヨハネ・パウロの変死事件。
いずれも、さまざまな角度から、事件の謎にせまる興味深い1冊。
新書館、桐生操文庫、810円。
フランス革命は、ルイ十六世とその王妃であるマリー・アントワネットを、断頭台におくりこむといった悲劇を生んだ。
しかしながら、二人の子供であり、次代の王でもあるルイ十七世にも、それ以上の悲劇的な運命が待ち受けていた・・・。
当時まだ8才だった、ルイ十七世は母であるマリー・アントワネットや家族とも引き離され、タンプル塔に幽閉されるが、9才で病死したと伝えられていた。
が、しかしながらこの説には、異論も多い。
実はタンプル病死説は贋者であったとか、ルイ十七世は塔から脱走していた、あるいはその後のルイ十七世候補ノーンドルフなどなど、様々である。
苛酷な運命に翻弄された少年、ルイ十七世の謎にせまる1冊。
トラベルジャーナル、1400円。
煌めく太陽、どこまでも晴れ渡った青い空、青い空、白壁の家々に咲き乱れる花々—南フランスといえば、かつてピカソ・ゴッホ・マチスなどの芸術家に愛された土地であり、またコート・ダジュールなど世界のブルジョワたちの集う場所でもある。
明るく健康的なイメージが強い南仏だが、その一方では予言者ノストラダムスや「悪徳の栄え」でおなじみの作家マルキ・ド・サドの出身地でもある。
マルセイユでの悪魔つき事件やテンプル騎士団の財宝とキリストの謎、聖母マリアの予言によって出現した奇跡の泉ルールドなどなど、南仏地方に伝わる数々のミステリアスな事件が紹介されている。
他にもブイヤベースやワイン、フォアグラとトリュフといったフランス料理の二大珍味、世界的に有名な香水の故郷グラース、ドイツのマイセンと並ぶ陶磁器の都リモージュなどなど、ミステリー以外にも南仏の魅力がさまざまな角度で語られている1冊。
南仏について広く浅く知ることができ、旅行ガイドにもなる便利な書である。
TOTO出版、1000円。
副題は『西洋おもしろ風俗習慣』。
そのタイトル通り、やんごとなき姫君たちの寝室から、結婚事情、結婚生活、食生活、日々の生活や習慣、その他こぼれ話など、多種多様な逸話が披露されている。
時代も古代から19世紀までの、ヨーロッパ全域にわたるエピソードの数々は、時代や国は異なれど、充分現代にも通用あるいは起こりそうなものも多々あり、興味深い。
それにしても女性の地位というものは、時代によって、大きく左右される。
読んでいて、なんと理不尽な!と、思うようなことが多すぎる。
かくも差があるのなら、やはり女性天国と呼べる時代は現代に他ならないと痛感した次第。
(1994.2.10初版発行)