書名&たまえもん度★をクリックすると「たまえもん書評」が表示されます
講談社、2000円、長編。
平凡な毎日を過ごす、主婦である香取雅子は、ある日パート仲間である弥生から「夫を殺した」という電話を受ける。
雅子は同じパート仲間である、ヨシエ・邦子を巻き込んで、弥生のアリバイ作りと死体処理を協力する。
死体処理は、自宅の風呂場でバラバラに解体し、廃棄することになったが・・・。
平凡な主婦たちが、些細なきっかけで、日常から「アウト」していく様を、峻烈に描く迫真作。
それにしても・・・主婦でも、こんな風に道をはずれていくものなのだろうか?
昨今、小説をはるかに越えてしまう度肝を抜く事件が続々と起きているが、この小説はそれでもなかなか凄みのある強烈なインパクトがある。
講談社、1800円。
第121回直木賞受賞作。
冒頭でいきなり、子供の失踪事件が語られる。
不倫の最中に起こった事件を契機に、母親であるカスミは子供の行方を追い求めていくが・・・。
謎解きはもちろんだが、子供を捜す母親の心理描写に、より多く筆をさいている。
全体的に、しっかりと書きこまれており、読み応えのある作品。
新潮社、1400円+税。
失踪した女性作家が残したもの—それは自らの封印してきた過去をさらけだす手記だった。
小海鳴海こと、生方景子は、ある日一通の手紙を受け取った後、失踪してしまう。
その後に残されたものは、彼女自身が10歳のときに、ある男に拉致監禁された過去を綴った原稿だった。
本書は、小海鳴海女史の「残虐記」という原稿と、それを挟み込むかのような夫・生方淳朗による2通の手紙から構成されている。
表紙扉絵が物語るように、10歳の少女が、見知らぬ男に監禁されている恐怖、あるいは不安、そして得も言われぬ感情へと醸成されていくさまが描かれている。
何とも、今風な題材であるが、いい意味でじわじわと気持ちの悪さを存分に味わうことが出来た。
著者ならではの作品といえようか。
(2004.2.25初版発行)