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マガジンハウス、1400円+税。
紅茶の香り、白磁のお茶碗、異国の教会をも想起させる眩い大きな窓のある西洋式の居間。
ここはわたくしの家の中でも一番好きな場所—そして、わたくしの前には美しい年下の友人、月絵さんがわたくしの女学校の話を聞きたがります…
時代は大正時代を想起させる。繻子のリボン、テェブルクロス、菫の砂糖漬け、薔薇のジャムなどなど、小道具も独特の雰囲気を漂わせる演出に大きな役割を演じている。
わたくしは、人妻でありながらもいつまでも夢見がちで頼りなげで可憐な月絵さんの紡ぐ、儚くも残酷な物語の世界に引きずりこまれていく。
まるで舞台か、映像の世界…を彷彿とさせる物語だ。
ゴシックロマン小説と紹介されており、女性の、女性による、女性に対する、美しい中に意地悪な棘(まさしく、薔薇の花!)が見え隠れする、美しい作品。