〈樋口 有介〉
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文藝春秋、2000円+税。
一家惨殺の羽田事件の生き残りである美少女美亜、そしてその事件を追う女性刑事吹石夕子。
しかも羽田事件が解決しないうちに、今度は美亜の友人が殺される事件が発生する。
現場検証している夕子が見かけたもの—それはかつて警察学校時代に教官として指導された椎葉元警部補の驚くべき姿だった。
椎葉はある事件をきっかけに警察を辞め、離婚し、ホームレスとなっていたのだった。
夕子は膠着した羽田事件を解決するために、1日2000円で椎葉に調査を依頼する。
また美亜も一日も早く犯人を見つけてほしいという願いから、椎葉を探偵として雇うことになる。
二人の女性から頼られながら、独自の視点で事件を追い始める椎葉だったのだが…。
「ホームレス探偵」という、目新しい設定が面白い。
反目しあう美亜と女性刑事夕子、その二人の真ん中に位置することになる椎葉とのやりとりもテンポがある。
事件解決への関心より、椎葉の生き方、事件解決の手腕が興味深い。
しかも椎葉や夕子の今後にも大いに興味がそそられ、続編を是非期待したい。
(2003.10.10初版発行)
講談社、中篇ミステリー3編収録。
柚木草平シリーズ第3弾。
第1弾「誰もわたしを愛さない」、第2弾「初恋よ、さよならのキスをしよう」は未読だが、いきなり本書から読んでも大丈夫だったように思う。
柚木草平、38才、元刑事のルポライター、バツイチで一人暮らしをしているのだが、難事件は次々と解決するくせに、とにかく美人には滅法弱いときている。
そんな柚木をめぐって、今回もさまざまな事件の依頼が舞い込むのだが…。
エステクラブを経営する女性実業家、トップ女優、雑貨店を経営するお金持ちの女性オーナー。
謎に包まれた事件を鮮やかに解決するハードボイルド探偵柚木が大活躍。
物語的には、どれも少々物足りない面もあるが、美人と柚木との軽妙なやりとりが楽しめる1冊。
(1992.10.30初版発行)