新潮社、各1600円+税、上下巻。GMO(Genetically Modified Organisms)すなわち遺伝子組み換え作物のことである。 魚のカレイの遺伝子をもつジャガイモ、害虫を殺す機能もつ作物の創生、害虫に強いと同時にタネが実らない大豆、ひいてはイネやトウモロコシまでもが種子不捻技術で席巻されてしまったら…国際的な「食の支配」という陰謀を描くサスペンス。 かつてジャーナリストであり、現在は翻訳家として米国に拠点を構える蓮尾一生は、公私ともに抱えた二つの事件を同時に追い求め始める。 ひとつは蓮尾にとってアメリカでの唯一無二の親友ともいえる、小さな友人アダムの死。 もうひとつは世界的な科学ジャーナリストであるレックス・ウォルシュが秘密裏に書き進めているという新作の独占翻訳及び出版を手がけることであった。 アダムは家族4人、無惨に殺され、レックスは「この仕事はなかったことにしてくれ」と謎の言葉を残して失踪する。 残された蓮尾が、もうひとつの手がかりをもとに辿りついた結末とは—!? 服部さんの著書は、実はこの本が初めてなのだが、女性作家でありながらも、何とも緻密で骨太なストーリーなのだろうと感心してしまった。 ただ惜しむらくは、GMOの謀略が蛇行しつつも、着地点が微妙だったこと。 最初はスリリングで、スピーディーな展開に圧倒されたが、後半はややまわりくどく感じられた店が残念である。 (2003.7.30初版発行)