〈花村　萬月〉

角川書店、１４００円、長編。
実は以前から花村作品を読んでみたいと、思ってはいた・・・のだが、なかなかその機会に巡り会えなかった。
ということで、初めて手にした作品がコレ。
そもそも、この作品を「この作家の最初の１冊」にしたのは、とても単純な理由である。
ズバリ、タイトルと表紙で決めた・・・と言っても過言ではない。
「吉祥寺」は、私にとって強烈な思い入れのある特別な街、なのである。
今、住んでいる土地からさかのぼって、３つ目の街。
期待と希望と、淋しさともどかしさ。
優しさと新鮮さと、疲れと行き場のない想い・・・いろいろな思考や感情が錯綜した、そんな街だった。
で、この物語は、吉祥寺の傾きかけた木造２階建て、「幸荘」の住人たちが主役。
明日を信じて夢見る若者たちの、伝説的なアパート「幸荘」を根城に、「超」がつくほど貧乏な、ミュージシャン、カメラマン、小説家の卵たちが繰り広げる「今日」という日々を綴った物語。
関係ないけど、この幸荘・・・私が住んでいたアパートの隣にあった「五栗荘」（今は、もうない）をモデルにしたみたい、と思い出してしまった。
生の「吉祥寺」という街に触れられる１冊。
作中に登場する、食べ物屋さん（肉のサトウとか、くぐつ草等々）関係が妙になつかしい。