〈郡司 ななえ〉
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ナナ・コーポレート・コミュニケーション、1300円+税。
27歳で失明した著者が、盲目の夫との間に、子育てをするがために、大の犬嫌いを克服して、盲導犬とパートナーを組む決心をする。
黒のラブラドール種、メス、1歳6ヶ月現在体重27キロの大型犬ベルナ—著者は、怖々「…ベ、ベルナ、カム」と最初の呼びかけをするのだが、ベルナは心から嬉しそうに見上げて、バタバタとしっぽを振りながら、体をすり寄せていくのだった。
著者とベルナの心の通い合いの第一歩である。
やがて夫婦の間には幹太クンが誕生し、お姉さんになったベルナと共に、子供の成長を見守り続けていく様子が、目に浮かぶように描写されている。
やがて月日が流れ、ベルナも年老いて、目が見えなくなった時点で、盲導犬の常としてリタイアさせるのだが、郡司家では成長した幹太が、今度はボクがベルナの目になると宣言—こうしてベルナは郡司家で最期を看取られることになる。
途中、何度も涙と笑いがこみ上げてくる。
『盲導犬クイールの一生』とは、また異なる意味での感動を与えてくれる。
ベルナは何とお茶目な側面をもった…しかも意志も貫く盲導犬なんだろう!
クイールがそっと渡辺さんの側に影のように寄り添っていた印象に比べると、ベルナは郡司さんと一緒に大慌てしながら、幹太くんのおしめを替えてあげてるような、そんな擬人化した姿さえ思い浮かぶようだ。
そんなところからも伺えるように、ただでさえ大変なはずの子育ても、著者にとっては、ベルナと一緒にいとも楽しげに乗り越えていく。
晩年のベルナと一緒に始めた「盲導犬のお話の会」も、現在3代目のペリラとコンビを組み、日々盲導犬理解への啓蒙に努めているとのこと—楽しそうにお話の会を続けているに違いない。
(2003.6.6初版発行)
ナナ・コーポレート・コミュニケーション、1300円+税。
『ベルナのしっぽ』の補足編にあたる。
『ベルナのしっぽ』に描ききれなかったエピソードや、著者が子育て・家事の合間に創作した短歌を織り交ぜて綴ったもの。
前作同様、盲導犬ベルナとその家族がいきいきと描かれている。
それにしてもベルナは、とても人間らしい感情の持ち主だ。
喜びも、悲しみも、共に味わい、心配もすれば、プライドも頭をもたげてくるといった具合だ。
幹太クンのお姉さんとして、ななえさんの娘として、人間味あふれたベルナがそこかしこでしっぽを振っている。
ベルナは今でも星になって、郡司さんたちを温かく見守っているに違いない。
(2002.12.30初版発行)