〈岳 真也〉
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学研、1800円+税。
鬼と恐れられた新選組副長・土方歳三の半生を綴った書。
とりわけ鳥羽伏見の戦いで大敗を喫した後、北へ北へと転戦しながら、闘い続けた歳三にスポットをあてている。
秋山香乃/著の『歳三往きてまた』と同様の設定である。
『歳三往きてまた』は女性作家の視点で、男としての歳三を恋い焦がれるまでに描かれているが、本書では男性作家の手により、そのあたりは淡々と描かれているように感じた。
本書の中で、もっとも印象的なのは、最後の函館での一場面——何故、歳三が流山で近藤とともに腹を切って果てず(あるいは降伏せず)、戦って戦って戦いぬくことを選んだかという箇所である。
鉄の意志で自らの心血を注いで作りあげた「新選組」、また同志たちへの想い…全てを歳三は「義」という言葉に集約する。
この世に義というものがあることを満天下に知らしめたい、そのために最後の一人となっても戦い続けるであろう、土方歳三の真の姿がここにあるように感じた。
それにつけても、土方歳三なる御仁は、一体どれくらいの作家を魅了するのだろう。
さまざまな作家の手による、土方歳三物語を読むにつけ、永遠の義に生きる歳三を偲ばずにいられない。
(2002.4.27初版発行)