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新人物往来社、1700円。
皇后光明子を擁する藤原氏の勢力に、真っ向から対立した旧豪族勢力の橘奈良麻呂の悲劇を描く長編小説。
時代の息吹を、生き生きと感じさせるがため「栄えるもの、滅びるもの」が際だち、滅びゆくものの哀しさが、よりいっそう光を放つ作品。
新人物往来社、1800円。
第18回歴史文学賞受賞の同作品を含む、聖武帝&皇后光明子の時代の様相を描く短編集。
時代を彩る人々の光と影が微妙に交差して、それぞれの生き様が鮮やかに浮かび上がる。
時の権力をめぐり、それぞれの視点によって全く異なる生き方が生じるのは、現代も全く同じだと感じた。
中でも、「すたれ皇子」が読み応えがあった。
廣済堂、1800円。
骨董美術誌の編集者である加納理江子が、「大和山寺逍遥」という記事取材のために草山寺を訪れた。
そこで発見したものは、厳重に封印された厨子。
しかも、その厨子からは不思議な形をした仏像が出てきたが、その胸に抱かれた刀剣は、正倉院秘蔵のものと酷似していた・・・。
その謎を追い求めながらも、理江子にとって、かつての上司の不可解な行動がさらに謎を深めていく。
歴史ミステリーとして、秀逸。
奈良には親戚が住んでいることもあって、よく遊びに行ったが、興味があったのは比較的古代、つまり万葉の時代のものばかりだった。
この本を読んで、新たに正倉院とその時代にも関心が深まった。
新人物往来社、2800円。
古今和歌集等を選定し、和歌の神様ともうたわれる藤原定家が書き記したといわれる小倉色紙の謎をめぐり、美術館の展示会企画及び準備、骨董美術誌の特集記事の組み方、さらには過去にさかのぼって宗祇、定家自身の恋や人生等々をからめながら展開。
1999年7月10日(土)の「世界不思議発見」でも「定家と小倉色紙の謎にせまる」を放映。
非常に丹念に綴られており、素人にも小倉色紙の謎や百人一首、藤原定家について関心が深まる。
過去と現代を交互に行き来しながらの、謎解きはまたミステリアスな醍醐味を味合わせてくれる一冊。