クローバーの君
 食べ終えた包装紙と共に摘み取った花を2種類袋の中に入れておいた。包装紙を捨てると一緒に行ってしまったようだ。
大分歩き駅のホームまで登ってから気がついたのだった。袋を開けてそれを何度か確認すると胸が絞め付けられた。

 己を過ちを、というよりそうなってしまったこととして。彼女はそういう存在者なのかもしれない。

 逢っていても、こっそりと永遠の離別を意識する。
 それがあたかも自然であるように、2人の心はある。永遠の離別を無くそうと狂いはしない。それぞれが各々のやり方で受け止めている。その上で2人は沈黙を共有している。
 逢っていても、こっそりとしか話をしない。

 将来のこと、日々のこと、この先、眼前にある先の道のことも話はしない。
 彼女が先に進むことがたまにある。
 並んで歩くのは何かの会話をしている時だ。
 その時にだけ横に出てくる。
 相手の根底に到りたい、という会話。
 2度と逢わなくても耐えられるものを探しているから。
 
 泣きはしない。
 泣くことより苦しい状態を知っているから。
 相手の顔を意識的に見ようとしない。
 形状よりも相手の深い心は五体に現れるから。
 相手の笑顔で誤魔化されるのが嫌だから。
 笑顔はすぐ、忘れてしまうものだから。

 時間の流れにのって覚えていられるのは、
 ほんの僅かに、僅かな心の形しかないのだから。
 沈黙を共有したという記憶しかないのだから。

 クローバーの君よ
 クローバーの君よ

 
2002年05月19日 04時09分12秒
クローバーの君弐
 クローバーの君よ

 毎日君を思い出し、私と同化して欲しいと祈る。
 週末に君を思い出し、横にいて欲しいと狂う。
 君を忘れるために、運動にゲームに本に没入する。

 君の肉を喰らいつくし、私の血と肉となって生きて欲しい。
 解っている。それもまた君に永遠の離別を与えてしまうことを。
 何時の日か血と肉となった君と私の肉体で、他の異性を近づけるということを。
 それすらも許したくないのだ、ということも。

 それすらも許せなくなる。
 私は許せない。
 
 君との連絡を大義名分で拒絶する。
 義にすがり付いて、隘路から逃げようとしているのだろうか。
 この先、2人が上手くいくために義を介在させようとしているのだろうか。

 義は唯一、君の根底を見るのを邪魔しない。
 義に到りて仁なれば、各々は1つになれるのだろうか。

 唯一許されるのだろうか。
 唯一許されるものだろうか。

 なぜなら義には、拒絶という永遠の離別を含んでいるのだから
 なぜなら義には、情熱が無く永遠の離別を邪魔しないのだから。


 どこへも進まぬ。
 
 どこまでも進めぬ。

2002年05月19日 04時20分08秒