赤間の日記
７／２ 金曜日 晴れ
ネットで小説サイトを開いたのを記念に日記をつけます。
今日は期末テスト初日でした。
ボクは普通に受けました。
現国・数学Ｂ・地理だったけど、現国が厳しかったです。
虚栄心の固まりのボクには、テストの点が悪いこと自体より
周りからの反応が変わってしまうのが一番怖いです。
必死に頑張っています。
ボクは完璧でなければならない。
７／３ 土曜日 雨
今日のテストは完璧でした。全てが予定通り。
テスト教科は、英語Ｂ（英文法）・生物・生活一般。
英語Ｂは昨日の夜、教科書の練習問題を全部暗記して楽々。
生物は、まずは許容範囲。生活一般も同じく許容内。
これなら なんとかなりそうです。
来週も引き続きテストです。
絶対に負けません。誰にも。
７／４ 日曜日 雨
明日のテストに備え、数学と古典の勉強をしました。
数学は微分積分。古典は枕草子と漢文の範囲をです。
猛勉強の一日でした。疲れました。
ボクには目的があります。だから毎日がんばれます。
目的を果たすため、ボクは完璧になります。
７／５ 月曜日
今日はいい日でした。テストは完璧。そして、帰りに好きなあの人と話をしました。
彼女の名は浅黄信子。話の内容はたわいもないことでした。
テストの調子は……。梅雨の季節は……。社交辞令のような会話でした。
それでも、それが嬉しかった。
彼女は 同じクラスで近くの席にいます。小学校の時からずっと一緒。
完璧でないボクも知っているはず。ですが、もう忘れてしまったかもしれません。
その方が都合がいいです。
彼女はボクとは違います。ボクのように自ら自分を作らなくとも完璧です。
だからボクも完璧になります。でないと、彼女は認めてくれないでしょう。
今日は長めに書いてしまいました。明日はテスト最終日です。
７／６ 火曜日
全てのテストが終了。しかし、保健体育はいつもながらしてやられました。
他は上々。しかし、ボクはこの先が一番怖いです。みんなは結果が来るまでテストは忘れます。
でもボクは怖いです。もし完璧からかけ離れた結果が表れたら……。
怖がってばかりもいられません。明日からは普通の授業が再開。
さぁ、完璧なボクを演じ続けなければ。
７／７ 水曜日
忙しい毎日の復活です。ボクは授業でやった内容をその日の内に学校指定のワークでやります。
これが、後々テスト後の提出を楽にします。
そして努力している自分が好きです。目標にほんの少しずつ近づく自分が。
今日は彼女とは特に話はありませんでした。授業でも完璧な彼女。ボクは惚れています。
でも、毎日会えるだけで幸せです。この幸せが続いて欲しいです。
７／８ 木曜日
今日は少しテストが返ってきました。その話題で、浅黄さんに話しかけてみました。
でも、なにか避けられたようでした。点が悪かったんでしょうか。
少し哀しい気分になりました。
７／９ 金曜日
気分が悪いです。一体…どうしたんでしょう。
今日返ってきたテストは完璧に近いものでした。数学と英語……。
浅黄さんも同じくらいよかったです。
でも……なぜか浅黄さんは冷たい。目を合わせてくれない。
何がいけないんだ…。ボクは決して、点がいいからとそれを鼻にかけたりはしない。
それは醜いことを知っているから…。ならば、いったい何が。
哀しいよりも、苦しい気分です。
７／１０ 土曜日
浅黄さんから冷たくされて以来、なにか気分が晴れません。
週末には次の週の予習をほぼ完了させる予定ですが、気分が乗りません。
浅黄さん…なぜ。
７／１１ 日曜日
考えました。なぜ浅黄さんがボクに冷たいのか。
結論はでませんでした。彼女を傷つけるようなことをしたのでしょうか。わかりません。
愛しい人の顔を早くみたい。けれど、今は怖いです。
ボクの心の支えが消えかけています。
７／１２ 月曜日
今日も浅黄さんはボクに冷たかったです。
周りから見てもボクが暗いのが分かるのか、親友の阿部が話してきました。
ボクは自分を作って完璧でいますが、阿部はその壁を超えてくるようにボクの心に入ってきます。
少々迷惑ですがそれを楽しくも感じています。
阿部は元気のないボクに明るく話しかけてきました。
阿部、キミが友達でよかった。
７／１３ 火曜日
気づきました。浅黄さんの顔色が最近悪いです。
先週はさほどではなかったと思いましたが、休み明けに段々青白くなっていました。
今日など眉をひそめた状態でいました。かなり疲れているようです。
中森さん・林さんなど、仲の良い友達が彼女を心配しています。
ボクも心配です。彼女は背は小さい方ですが、元気で明るい笑顔が似合います。
あんなに青白く、疲れ果てた彼女を見るのは辛いです。
ボクは冷たくあしらわれるのを覚悟で話してみました。
彼女は辛そうな作り笑いで「大丈夫…なんでもない」、そう答えました。
もはや冷たく接する元気もないのでしょうか。
心配です。
７／１４ 水曜日
浅黄さんが学校を休みました。
先生は「テスト明けで体調を崩した」といっていました。
帰り際に、先生から浅黄さんに資料を渡すようにいわれました。
同じ町内に住んでいるのでいるからです。
帰りに届けました。本人は出てこられませんでしたが
浅黄さんのお母さんも体調を崩したといっていました。
早く良くなって欲しいです。
７／１５ 木曜日
浅黄さんが学校に来ました。どうみても無理をしています。
顔色は幾分良くはなっていましたが生気を感じられませんでした。
昼休みにボクがいつものように学校中を彷徨いていた時、
校舎の端っこで浅黄さんと阿部がいるのに気が付きました。
何の話かはわかりませんが、浅黄さんが辛そうに額に手を当てながら話をしています。
阿部は笑いを浮かべながらそれでいて真面目に話しているようでした。
阿部がボクに気が付きました。阿部はボクとは逆の方向に歩いていきました。
浅黄さんに話しかけようとしましたが、ダメでした。
二人はいったい何の話をしていたのでしょう……。
浅黄さんが困っているなら、ボクに相談して欲しいのに…。
このまま彼女に疎まれ続ければ……ボクの完璧さなど必要は……
しかし…あまりに急変した浅黄さんの態度………。
もしかしたら…まだ望みは
７／１６ 金曜日
今日も昼休みに学校中を彷徨いていました。実をいうと完璧な仮面は
その仮面がはがれるのが怖く人との交わりを臆病にさせます。
結果、ボクには阿部のような変わった奴以外親しい友達がいません。
阿部もいつも僕と話しているわけではありません。
結果、ボクは所在なき教室を抜け校内を彷徨くのです。
しかし、今日はいつもとは違いました。
教室に戻る途中で何かを抱えて走る人影を廊下の先に見ました。
教室はなにやらガヤガヤしています。阿部と浅黄さんがいません。
話を聞くと浅黄さんが倒れたそうです。
その時はなしていた阿部は浅黄さんを抱えて保健室に行ったのです。
ボクの見た人影はソレでした。病院に運ばれたようです。
浅黄さん…無理に学校に来なければいいのに…。ボクは浅黄さんが心配でした。
しかし、それと同じくらいに気になることがあります。
ボクは浅黄さんになにもしてやれませんでした。
けれど阿部は相談されたり、さらには倒れたときにすぐに助けたり。
なにもできなかった、その場にすらいなかった自分が情けなかった。
情けない………。
７／１７ 土曜日
浅黄さんはしばらく入院することになってしまいました。かなり厳しい状態のようです。
お見舞いに行きたいところでしたが、面会はまだよくないかもしれません。
阿部は言いました。「早く良くなって欲しいよな」
阿部はいい奴です…。けれどボクの心には阿部に対する嫉妬の心が生まれました。
阿部をねたむ理由などない…。あるとすれば僕自身の不甲斐なさ………。
情けない………。
７／１８ 日曜日
嫌な気分な一日でした。勉強なんて気分ではありません。
浅黄さんのことが心配です。五日ほどの間にずいぶんやつれて……。
それでも学校に来て、結果倒れて入院……。病気にかかったんでしょうか。
しかし、医者に診てもらっても「疲れ」と診断されたそうですし……………。
そして阿部への嫉妬……自己嫌悪……
こんなボクは……完璧でも何でもない………
情けない………。
７／１９ 月曜日
今日はお見舞いに行ってみました。
受付で病室を聞いて行ってみましたが、先に阿部が来ていました。
阿部はボクが中にはいると席を外しました。
浅黄さんはだいぶ元気になっているようでした。
同時にまたボクには冷たかったです。
様態などを話そうとしましたが、「帰って欲しい」と言われてしまいました。
帰り際、阿部が病室に戻ってきました。
「もう帰るのか？」と聞かれましたが返事はできませんでした。
阿部は…帰れと言われないようです。
浅黄さんが元気になってきていて嬉しいです。
…けれど、同時に哀しい気持ちになっていきます。
阿部への嫉妬心も…………。
７／２０ 火曜日
今日も浅黄さんのお見舞いに行きました。
夏休みが始まり、一応講習が一週間あるので午後が空くようになったので。
………もう来ないでと言われました。なんで……………。
浅黄さん、あ、あああ…あなた… あなたに嫌われたら………。
い、いや まだだ…。ここ一週間で大きく変化した態度…。
望みはまだ……まだ…。
７／２１ 水曜日
気が重い日が続きます。勉強にも身が入りません。…困りはしませんが。
病院に行くわけにも行かず……学校が終わってからも嫌な気分で過ごしています。
阿部からお見舞いに誘われましたが…断らざるを得ませんでした。
阿部は……知っているのか。最近、ボクの心を崩してくる……。
キミは………親友だよね？
７／２２ 木曜日
阿部は毎日お見舞いに行っているようです。日曜にも行ったと言っていました。
浅黄さんはだいぶ元気になっているようです。
阿部は言いました…
「赤間って、浅黄に気があるんだろ？もっと見舞いにいってやれよ」
ボクは笑いました。ボクの仮面は笑うことしかできませんでした。
泣きたかった……
何もできないボクに 崩れそうな心に
助けを求めたかった…………
７／２３ 金曜日
今日、ＨＲで先生が浅黄さんがもうすぐ退院すると言っていました。
今週でとりあえず退院して、来週は様子を見て学校に来るようです。
「だいぶ元気そうだったからな」阿部が言いました。
他のクラスメートも浅黄さんの話で盛り上がっていました…………。
なんでここまで盛り上がるんでしょう？しかも男子の反応が変です。
ボクを見てニヤついているのは……まぁ分かる気もしますが。
女子の方はまるで無関心。ほんの数名が男子同様の反応でいるだけ………。
まぁとにかく、浅黄さんの退院はうれしいことです。
例え…嫌われていたとしても、あなたの笑顔が早くみたい。あの笑顔が。
７／２４ 土曜日
浅黄さんの退院が待ち遠しいです。
お見舞いに行きたいけど…行けない。もしかしたら、もう退院したかな？
月曜日には来たらいいな……。
７／２５ 日曜日
講習も７月いっぱい。浅黄さんの復帰もボクの気合いを高めてくれます。
この気持ちは久しぶりです。予習は完璧。明日が待ち遠しい。
７／２６ 月曜日
浅黄さんが学校に来ました！
…けれど、様子がおかしいです。浅黄さんもクラスも。
浅黄さんは、体こそ元気そうですが…暗い感じがします。
病み上がりだからでしょうか………。
そしてクラス。
まず男子の反応が…変な目で見て、あざ笑うような……
そしてほとんどの女子が浅黄さんに無関心。無視とまではいきませんが…。
一部の女子はやはり男子と同じ様な行動。
なんでだろう…。浅黄さんは明るく元気で人にも好かれるいい人なのに。
阿部は普通にしていましたが…それはちょっと悔しい。
なにか気になります。なにか変です。
今後、自体が悪化するようなことがなければいいのですが……。
７／２７ 火曜日
今日も昨日と同じようなクラスの反応。
普通、退院して学校に来れば喜ぶだろう…。
なぜ？もうすぐ講習も終わり夏休み本番。浅黄さんとも会えなくなる。
前のように親しい方なら休み中になにかしら会えてもいいんだけど……。
………浅黄さんが冷たいのは変わりません。
長い夏休みが、酷な物になりそうです……。
７／２８ 水曜日
浅黄さんの家は、ボクのうちの近くです。
歩いて……１０分くらいかな。
その彼女の家に今日、阿部が行った。
午前で終わる講習の後、阿部は浅黄さんと浅黄さんの家に行った…。
阿部…ボクはキミと親友でいられるか…わからないよ。
誰か……なんとかしてくれぇ…。
７／２９ 木曜日
今日で講習が終わります……。なぜか嬉しい… なぜ………。
だって…浅黄さんと会えないんだよ、しばらく。
今までなら結構仲良かったし…会えなくもなかったけど……
だから、寂しい…哀しいはずなのに。
講習が終わるのは嬉しいけど…阿部が気になる。
浅黄さんの家に…また行くのか………？
明日から…どうすれば…………。
７／３０ 金曜日
本格的に夏休みになりました。
宿題はどっさり。性格的にコツコツやっていきますが……。
浅黄さんにしばらく会えない事を考えると寂しいです。
あんな風に冷たくされても…会えないのはつらい。
でも、なにか気が楽な気がします……なんででしょう？
７／３１ 土曜日
今日は気分も夏休みです。本当に気が安らぎます。
……考えてみると、学校では浅黄さんに冷たくされ、阿部は嫉妬心で遠ざけ…
居場所がなんとなく、無くなっていた気がします。
そのせいかな…安心感があるのは。
休み明けは文化祭の準備とかあるから、みんなともっと触れないと。
臆病なままでもいられないですし………。
赤間の日記 ７月 終わり