まえがき

 設計図は本来加工手順を図面として表記するものである。設計者は強度や剛性などの部材に要求される必要な機能を設計するばかりではなく、どのようにして加工するかを設計しなければならない。

 従来の機械設計法は、主として、機械加工(切削加工)の手順を表現するものだった。したがって、鋳物、鍛造、プレス、等の成形加工品の設計はに関しては、いわゆる機械設計法の標準と呼べるようなものが存在しない。後工程の「職人技」を頼りに、「ほぼこのようなものを作ってほしい」というというような意匠デザイナーのような設計をしているのが現状だ。しかし現在では、職人技がNC機械に置き換わってしまった。また、設計の殆どが機械加工部品ではなく成形加工品になってしまった。すなわち、現在は機械設計法が存在しない時代である。

 現在のCAD/CAMは、CG(コンピュータグラフィック)技術が作り出した文化であり、本来、設計のためのCADは、「camCAD」でなければならないはずだ。

 現在実用化している3次元CADは「ソリッドCAD」と呼ばれるもので、機械加工向きに形状を定義する。しかし、殆どの部品が成形加工で作られる現在においては、素材が変形して最終形状に至るプロセスを定義するのに適した「トポロジーCAD」が有利である。また、従来のCADは、形状をポリゴン(平面近似)で処理するが、曲面を曲面のまま近似なしに連続面で記述するトポロジーCADは、後工程のCAMやCAEにとっても有利で、形状データーを共有することができる。従来のCADはデーター量が極めて大きいために電送が難しく、電子商取引や遠隔地間での協調設計等、の次世代の要求するビジネス環境に乗りにくい。

 本来camCADは企業の開発ツールではなく、社会の文化となるような基本的な技術でなければならない。したがって、多くの人が個人的に入手可能な価格帯の製品が要求される。しかし、現在の技術の延長線上には、このような社会的要求に応じられる回答がない。「tpCAD/CAM/CAE」は、既存の文化を抜本的に書き換えて最終的回答を得ようという提案である。