僕はイギリスで、こんな映画を見た
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久馬榮道は、2002年3月に日本に帰国しました。
2002年4月以降の映画の感想は、
ここ
にあります。
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3月
- 『ワンス&フォーエバー(原題)We were soldiers』
ベトナム戦争にアメリカが本格的に参戦することになった
戦いを、メル・ギブソン主演で映画化したもの。
まあ、それなりに見所があるように作ってあって、
それなりに面白かったです。
それにしても疑問なのは、なぜ今この映画なの?
ということです。
いままでハリウッドでは、さまざまなベトナム映画が作られて
きましたが、それらを総合すると、事実か事実で無いかは
知りませんが、おおよそ次のような
ベトナム戦争のイメージが出来上がる。
まず、たいていの兵隊は麻薬中毒で、徴兵制の
くじはなぜか黒人に不利で、
人口比の割りに、やたら黒人が多い。
指揮官は、ワグナーを鳴らしながら突進するような異常なやつか、
それとも意気地なしか、どちらか。
砲兵もどじばかりで、たいていは味方を殺してしまう。
麻薬で訳わからなくなった兵士は、
一般の女性を強姦したり、
間違って(または意図的に)民間人を殺す。
まあ、アメリカ軍が沖縄(もちろん沖縄の兵士は、
たくさんベトナムに行ったわけで、
沖縄の兵隊が平均的なベトナムのアメリカ軍と
考えるのは、あながち間違いではないと思いますが)
で行ってきたことを考えれば、
そう歴史的に間違っているとは
思えないんですが、
本当はどうだったのかは、私にはわかりません。
しかし、この映画は、そういったアメリカ軍にまつわる
悪いイメージを、一生懸命言い訳してるみたいで、
なんか後味が悪いです。
ようするに、ベトナムで戦ったアメリカの兵士は、
麻薬中毒患者でも精神異常者でもなく、
ごく普通の一般市民が、戦ってた、とでも
言いたげな映画なんですが、
本当にそうなんですかねえ。
そのわりには、一般人を殺しすぎだと
思いますが。
まあアメリカ政府と大部分のアメリカ市民は、今でも
日本に原爆を落としたのは正しいことだと主張している
信じられない国だからなあ。
まあ、まともな神経ではないよなあ。
それに、この映画を見ると、まるでベトナム戦争自体が
アメリカにとって
正しい戦争だったがごとく描かれている気がするのですが、
だれがどう見たって、あの地にフランス軍やアメリカ軍が
いたのは、間違いだと思いますが。
ちなみに、はじめベトナム軍によるフランス軍の
皆殺しのシーンがありますが、もちろん
このようなことが行われるようになったのは、
フランス軍が先。
遅れてきた帝国主義の国フランスは、植民地で
ヨーロッパの国の中ではいちばん酷い事を
してきたわけです。
われわれはフランスは芸術の国ということで、
そういった歴史的経緯は見落としがちですが、
最近でも、まだ信託統治(ようするに植民地のことです)
の島で、原爆実験をやってるからなあ。
そんな国は、フランスぐらいでしょう。
それにしても、反テロという名で、世界中に
暴力の拡大再生産を率先して行っているアメリカが、
ベトナム戦争を言い訳する映画を今この時期に
作った、ということが、とっても気になります。
あきらかに、これはアメリカのプロパガンダ映画でしょう。
第2次世界大戦中の日本のプロパガンダ映画と、
良い勝負か。
ハリウッドも、こんなアメリカ政府の言いなりのような
映画を作って、恥ずかしくないのかなあ。
イギリスで見る最後の映画が、こんな映画になるなんて。
- 『シッピング・ニュース(原題)The Shipping News』
ケビン・スペイシー、ジュディ・リンチ、
ケイト・ブランシェット、ジュリアン・ムーアという、
なかなか濃い配役です。
けばいケイトに、ばたくさいジュリアンという組み合わせ
(と言っても2人が会うことはないですが)は、
なかなかなものです。
ま、所謂ほのぼの物。
「家族って良いよねえ、そうよねえ」と、
なんとなく癒される話かと思いきや、
(まあ、そういう話なんだけど)監督が
『マイ・ライフ・アズ・ア・ドッグ』や
『ギルバート・グレイプ』や『サイダー・ハウス・ルール』や
『ショコラ』のラッセ・ハルストレムなんで、
ただですむわけない。
この家族ほのぼの物って、簡単そうで難しい。
だいたい、観客が飽きちゃうからねえ。
オズ安二郎なんてのは、ただの家族ほのぼの物監督って
思われてるけど、かれが上手いのは、
そうとうなユーモア−のセンスを、
実に上手に隠し味にして、
ちゃんと観客を飽きさせないこと。
良く見逃されそうだけど、こういう基本が
大事なんです。
(で、なかなか出来そうで、これが出来ない。)
北野武の『菊次郎の夏』なんかが
高く評価されるのも、そう言った点だろうなあ。
で、ハルストレム監督。
この人の場合、な〜〜んか退屈なんだけど、
最後までついつい見てしまう見せ場がある。
当たり前の場面でも、な〜〜んか変。
『ギルバート〜』でも、
良く考えると凄い話になっている。
(脇を固めるジョニー・デップや
デュカプリオなんかも良いんだけど。)
『サイダー〜』でも、ごくありきたりの
話なんだけど、どこか変。
その変さかげんが、この人の持ち味。
『ショコラ』はやっぱり、
辛し入りチョコレートを上手そうに食べる人達の
変さ加減。
どの映画も、かならず印象的な場面があり、
それが後に引くんだよねえ。
本映画も、当たり前のシーンなんだけど、
きになるシーンがいっぱいあり、それで
ついつい最後まで見てしまいます。
- 『サウンド・オブ・サイレンス(原題)Don't Say a Word』
はっきり言って、この映画はとても面白いスリラーです。
とってもお勧めです。
なのに、この日本語題名はひどい。
なんで、原題のまま『ドント・セイ・ア・ワード』じゃあ
駄目なんだろう。
とにかく、原作が全米探偵協会のエドガー賞を
受賞(と言っても、私はこれがどんな賞だか知らないんだが)した
だけあって、本当に面白い。
監督のゲイリー・フレダーは、前作
『コレクター』(この映画も原題は「Kiss the Girls」で、
イギリスで検索するのに苦労しています)の
演出も冴えていましたが、
本作の演出もなかなか凄い。
出演は、まあこの類の映画には欠かせない
マイケル・ダグラスに絡むのが、
患者の少女役、『17歳のカルテ』の役が印象的だった
プリタニー・マーフィ。
この二人だけで、この映画は成功です。
悪役がちょっと物足りないけど、
それを補ってあまりある二人の演技です。
脚本は、最後のクライマックスが、私には
ちょっと不満なんだけど、それはあら探しというもの。
本当に良く出来ていて、はらはらドキドキ。
まあ、何度も書きますが、ひさびさです、
こんなに面白い映画を見たのは。
- 『(原題)Gosford Park(予想日本語題名)ゴスフォード・パーク』
ロバート・アルトマンですよ、監督が。
で、この映画、彼の映画の特徴、
1.時間が長い。
2.登場人物が恐ろしく多く、しかもだれが主人公かわからない。
3.脈絡の無いエピソードの塊。
という特徴をみごとにすべて持ってます。
もうこれだけで、私の妻は、妻の好きなイギリス貴族物の
映画にもかかわらずパスです。
ま、でも本作は、アルトマンの映画の中では
分かりやすい部類だと思います。
主要な登場人物こそ24人と多いですが、時間は
2時間半と、彼の映画としては短いし、
いちおう筋らしきものもあるし。
時代は1930年代、イギリスの田舎の成金貴族の屋敷。
そこで繰り広げられる宴会の様子が丹念に描かれていますが、
この映画で興味深いのは、召し使い達の普段の生活も、
丹念に描かれていることです。
どうやって飯食うのかとか、いつお風呂に入るのか、
面白いです。
ま、ぼうとう、イギリスの冷たい雨(イギリスの雨って、
本当に冷たいのです)が降りしきる中、
主人を雨の中で待つ召し使い、その厳しい表情。
これだけで、この映画の持つ雰囲気を
見事に描いていますが。
ところが、最近のアルトマンってわかり良い。
前作(なんだろうか)『フォーチューン・クッキー』どうよう
事件が起きます。
ま、しかし、これも『フォーチューン〜』どうよう、
警察はまったく事件を解決する気は無いし、
回りの人々もまったくマイペースで生活している。
このあたりも、しっかりアルトマンの映画ですねえ。
で、人々の生活を何気なく描く中に、
いろいろな人間模様がジグゾウ・パズルのピースのように
結びついていくのです。
ま、はっきり言って、だれが犯人かなんてのは、
この際どうでも良くなります。
というか、犯人は初めからわかっちゃう。
でも、人間模様の描き方は、そりゃあ見事です。
なかなか最後は感動しましたねえ。
なかなかアルトマンの映画って、普通には
感動させてくれませんからねえ。
2月
- 『ビューティフル・マインド(原題)A Beautiful Mind』
ラッセル・クロウが主役の、ノーベル賞を受賞した数学者
ジョン・ナッシュの半生を描いた作品。
監督はロン・ハワード。
彼は古くは『コクーン』や『スプラッシュ』などの
軽い娯楽作品を得意としていたが、
『バック・ドラフト』やら『身代金』で、グッと
名監督の風格が出てきたのに、最近はまた
『エドtv』とか『グリンチ』とか、なんか
彼らしさが発揮できない映画が多かった監督さん。
ようするに、作品の出来、不出来が激しいんですよねえ。
で、本作。
さすが、いろいろな賞にノミネートされるだけあって、
なかなかの力作で、見ごたえたっぷりだったです。
とくに最後、ノーベル賞を受賞するところでは、
わたしゃあ泣けましたよ、本当に。
ここからは、ネタばらしになる恐れがあるので注意。
にしても、主人公のジョン・ナッシュは数学者で
精神分裂症を克服してノーベル賞を取るんですが、
そりゃあ変わってるなあ。
だいたいが、数学でノーベル賞を取ること事態が
変わってる。
ノーベル賞には数学は無いですから。
(数学の最高賞はフィールズ賞。
コンピュータに関係した仕事だとチューリング賞。)
分裂症ってのは被害妄想になることが多いので、
自分がスパイされていると思うことは多いらしいのですが、
自分がスパイしているというのは、変わってる(らしい)。
で、分裂症って、幻聴を聴く事は多いらしいですが、
こんなはっきりした幻覚を見るのは、
変わってる(らしい)。
まあ、いちばん変わってるのは、
分裂症を克服する話って多い(現実に多くの人が克服している)の
ですが、ノーベル賞まで取る話ってのは変わってる
(しかも実話)。
まあ、精神分裂症というのは、名前は恐ろしいですが、
100人に1人くらいはかかる恐れのある病気で、
そんなに珍しい病気じゃあないらしいし、
映画にもありましたが、
現在は薬でかなり治療可能らしい病気だし、
多くの人が社会復帰してますから。
まあ、それにしても、数学者には変わった人が多いから、
ジョン・ナッシュくらいの変人は、
別に精神が病んでいると診断されない数学者でも、
このくらいの変わった人は結構いるからなあ。
この映画の教訓って、「数学者と結婚するのは
注意しましょう」か、「ノーベル賞とるほどの
数学者ってのは、そうとう変」ってのか。
(もちろん冗談なんですが。)
ところで、彼はゲームの理論で有名
(最終的には、それでノーベル賞を取る)なんですが、
映画にはリーマン予想の話も出てきたような気が
するんですが、私は専門家じゃあないんで
詳しくは分からないですが、彼はリーマン予想も
研究してたんだろうか?
- 『アリ(原題)Ali』
はじめ、ウィル・スミスが伝説のボクサー、モハメッド・アリを
演じると聞いて、なにかの冗談かと思ったって。
それとも、モハメッド・アリをネタにしたパロディー映画でも
作るのかと思ったんですが、監督がマイケル・マンと
聞いて「マジ!!」と思いました。
しかし映画を見てなっとく。
ウィル・スミスって、俳優だったのね。
まあ、彼はアリの喋くる芸を、見事に再現してくれる
わけなんだけど、それ以外にもちゃんとしっかり
シリアスな演技になってる。
試合のシーンも、なかなか見事なわけです。
マイケル・マンって、『ラスト・オブ・モヒカン』とか
『ヒート』は退屈だった(というか、内容の割に、
時間が長すぎた)んですが、ここんとこ
(今が旬の)ラッセル・クロウの演技が渋かった
『インサイダー』などは、良かったなあ。
で、本作。
当時の公民権運動のマルコムXとの交流とか、
イスラム教への改宗、徴兵拒否などの
大きなエピックを主体に、
なかなか見事に見せていました。
ま、アリの女性問題に関しては、そうとう引けた描き方でしたがね。
- 『オーシャンズ11(英語題名)Ocean's eleven』
まず、映画の始まり、おお、このざらついた
画像はスティーブン・ソダーバーグだ。
彼は、去年から『エリン・ブロンコビッチ』や
『トラフィック』と大当たりなんだけど、
本作も含めこの3作、どれもまったく異なった
味わいの映画なのに、どれもソダーバーグの
雰囲気を持つのはさすがです。
そして始まりから、ドキュメンタリー・タッチで
なかなか上手いこと見せます。
出演者も、ジョージ・クルーニー、
ブラッド・ピット、マッド・デイモン、
ジュリア・ロバーツ、そして久しぶりの
アンディー・ガルシアと、出演者も
なかなか豪華です。
原作は、今でもカルト的な人気がある
『オーシャンと11人の仲間達』という映画が
元ネタらしいが、私は知りません。
というわけで、まあそれなりにそこそこ
面白かったです。
しかしなあ!
(注意、ここからはネタばれになります。)
なんかこう、いまいち興奮しないんだよなあ。
この映画を要約すると、
「オーシャンと9人の仲間達は、仲良く
泥棒しました。
アンディー・ガルシアは女と金を取られた
間抜けでした。」
ということになるわけです。
だけど、アンディーの役って、ラスベガスでも
有数のやり手でのしあがってきた役なわけで、
そんでいいのかなあ、この辺りから、
急に緊張感がなくなります。
要するに、この映画の中での対立軸は、
ジョージ・クルーニーとアンディー・ガルシアだけなんですが、
それの間に、なんかこう緊張感が無いのです。
それに泥棒たちって、悪党だぜ。
こんなに大金を前にして、仲良く泥棒してて
良いのだろうか。
それで本当の悪党と言えるか、という
疑問もわきます。
9人もいれば、1人ぐらい裏切り者が出ないと。
そこで、わたしが、新しい脚本を考えてみました。
やはり、緊張感を増すためには、対立軸を
増やさなければいけません。
そこで、ジョージ・クルーニーとブラッド・ピットは、
今でこそ仲良く泥棒やってますが、
かつてはジュリア・ロバーツをめぐって、
一騒動の過去があったとします。
そして計画は、一見順調に見えますが、
ブラッド・ピットは実はアンディー・ガルシアと、
ジュリア・ロバーツを通じて、
ほんの少しだけ接触がある。
で、最後の最後でブラッド・ピットは
アンディー・ガルシアに裏切りの電話を入れるが、
実はすべてジョージ・クルーニーに見ぬけられていて、
その裏切りの電話を上手く利用されて、
まんまとクルーニーは逃げおおせる。
で、実は初めからジュリア・ロバーツは、
クルーニーの仲間だった、という
ストーリ。
これならちょっとは、興奮できるんじゃない。
- 『フロム・ヘル(英語題名)From Hell』
切り裂きジャックの話。
切り裂きジャックを追い詰める刑事にジョニー・デップ。
デトロイト出身の双子のヒューズ兄弟が監督。
私この監督達は良く知らないんですが、
なんでも、たいへん才能のあるインディペンデントの
若手監督として、注目されているらしい。
たしかにビクトリア朝時代の興味深い映像が、
これでもか、これでもかと出てきて、
映像だけで結構楽しめる。
それにしても、私イギリスの貴族って、
けっこう胡散臭いと思ってたけど、
この映画見てやっぱりね、と思いました。
- 『トレーニング・デイ(英語題名)Training Day』
デンゼル・ワシントンとイーサン・ホーク主演の刑事物。
新米刑事イーサン・ホークが、
ベテラン刑事デンゼル・ワシントンに付いて、
刑事の見習をすることになるのだが、
それがとんでもないことに、
というような話。
デンゼル・ワシントンは、今まで演じたことの無い、
徹底的な救いの無い悪を演じるのだが、
これだけ今までと異なる演技をしても、
彼の個性がしっかり残るのはさすが。
とはいえ、この映画、ちょっと救いが無さ過ぎるんじゃあ
ないだろうか。
私はあんまり好きじゃあない。
それにしても、この映画は、すでに10月に
日本で公開されているとは驚きです。
- 『マルホランド・ドライブ(英語題名)Mulholland Drive』
デビッド・リンチの最新作。
去年のカンヌ映画祭で、コーエン兄弟の
『The Man Who Wasn't There』と監督賞を
分け合った映画です。
はっきり言ってコーエン兄弟の『The Man 〜』は、
とても面白かったので、これに匹敵するデビッド・リンチの
映画って、と思って、見に行きました。
う〜〜ん、映画が始まると、そこはもう
デビッド・リンチの世界。
ブルネットの超美形美人。
脈絡の無い展開。
記憶喪失。
こりゃあ、『イレイザー・ヘッド』
(直訳すると「消しゴム頭」だけど、本当に
消しゴム頭の話だった)や『ブルー・ベルベット』や
『ツイン・ピークス』が好きな人には、
たまらない世界です。
まあしかし、観る人に、こんなに緊張を
しいる映画って、映画としての本道から言って良いんだろうか、
と思って見ていましたが、
心配ご無用。
最近のデビッド・リンチって、
『ストレート・ストーリ』のように、
何て物分りの良い監督になってしまったんでしょうか。
少なくともこの結末は、私にはとっても
分かりやすかったです。
思えば、『ツイン〜』の時には、
途中からリンチ自身も混乱してたんじゃあないかなあ。
ビデオで全部持ってるんで見直すと、
やっぱ破綻してるよなあ、
と思えます。
ようするに、監督自身が破綻しなくなった。
この『マルホランド〜』も、一見とても
わかりにくい映画に思えますが、
見事に理屈が通りすぎている。
でもまあ、こんなに理屈が通りすぎていて
良いんだろうか、という気もしますが。
もっと分けのわからない映画のほうが、
リンチらしいです。
しかし、映画全体としては、
一見ふらふらとしてどこに行くのやら、
という映画に見えて、
実は実に絶妙なバランスの上に
なりたっている、
絶妙な映画となっています。
まあ、だからカンヌ映画祭で、監督賞を取ったんでしょう。
- 『アモーレス・ぺロス
(スペイン語原題)Amores Perros
(英語訳)Love's a Bitch』再び
前に、ここでこの映画に付いて書いたんですが、
2月5日の朝日新聞の夕刊の
沢木耕太郎の「銀の森へ」という欄で
紹介してあったんですが、いつもながら
切れ味さわやかな評論でした。
そもそも私は、映画雑誌とか映画評論というのは
あまり見ないんですが、この沢木耕太郎さんの
朝日新聞のエッセイだけは、まあちょくちょく
見ています。
それにしても、日本だと今ごろ公開してるんですねえ。
イギリスでは、私の住んでいるリーズの隣の
ブラッフォード国際映画祭でグランプリを取ったらしいので、
5月くらいにやってました。
そのほか、カンヌ映画祭批評家週間グランプリや
東京映画祭グランプリを取ったらしいですが、
取るだけのことはあります。
本当にドキドキしました。
沢木さんのエッセイでは、
マケドニア(イギリスじゃあ「マセドニア」と
言ってますが)の悲劇を描いた『ビフォア−・ザ・レイン』と
比較してありましたが、なかなか
対照的な映画を持ってきましたねえ。
私はどちらも好きな映画ですが。
1月
- 『カンダハール(英語題名)Kandahar』
2001年9月11日以前なら、カンダハールと聞いても、
それ何?、という感じだったですが、
すっかり有名になってしまったアフガニスタンの地名。
もっとも9月11日以前でも、世界情勢に敏感な人には、
「カンダハールの悲劇」という大虐殺があったところとして
有名らしいですが、私は知らなかった。
国連の緒方さんも、9月11日以前には、
アフガニスタンの悲劇は、世界中の人から無視されていること、
と言ってますから、ここがどんな場所だったか、
想像つきます。
この映画は、アフガニスタンからカナダに亡命した
女性が、アフガニスタンの悲劇を世界の人に知ってもらおうと、
イランの監督に頼んで自分が主役になって撮影したもので、
主役の女性の体験が色濃く描かれている。
まあ9月11日以前、アフガニスタンに興味が無かったのは
世界中どこでも同じらしく、この映画も
カンヌ映画祭に出品された時は、
「こんな重要でない地域を映画にすることに
どんな意味があるのか」という質問があったらしいが、
9月11日以降、この質問をした記者は、
世界の笑い者になったわけです。
でもまあ、この記者を攻めるのは、かわいそうな感じもする。
で9月11日以降、この映画は世界中から注目され、
主役の女性は国連の特別特使になってしまったわけです。
映画は、カンダハールの妹に会いに行く主人公が、
途中さまざまなアフガニスタンの現実に出会う、
という内容なんですが、
監督に特に政治的メッセージは無いということですし、
たしかに、ただ淡々と描かれています。
とにかく、こう言った映像を見るチャンスは
あまり無いわけですから、
なかなか興味深かったです。
それと、もう一つ感心したのは、
この映画にはユーモアが有る事です。
まあ、深刻な話題を、そこはかとないユーモアでくるんで
見せると言うのは、イラン映画の得意とすることですから、
このあたりは本当にモフセン・マフマルバフ監督が、
上手です。
逆に言えば、このあたりの悲劇と言うのは
本当に悲劇ですから、これをマジで
悲劇に描くと悲惨過ぎて...ということになってしまう。
だからワンクッションおいて、一つ離れた視点で
見ることになるんですが、こういったことが
上手いんです。
- 『ブラック・ホーク・ダウン』再び
数日前に『ブラック・ホーク・ダウン』のことを
書いたときには、この映画のくわしい情報が分からなかったもので、
いまいち何を書いているか、ピントはずれだったんですが、
1月28日の朝日新聞(いままで、私の住んでいる
リーズ.イギリスでは
読売新聞は買えたんですが、最近、朝日新聞も買えるように
なりました)に、この映画のことが書いてあって、
やっと色々なことがわかりましたんで、
この間の続きで、もうちょっと書きます。
この映画の舞台になっているソマリアってのは、
90年代にず〜〜〜と内戦になり、
国連軍が仲裁に入ったが、この映画の舞台になった
作戦が失敗しアメリカ軍は撤退。
で、それから事態はますます悪化しているわけです。
でまあ、朝日新聞によると、この映画は
今アメリカで大ヒットしていて、
アメリカがアフガニスタンの次に狙っている
ソマリア進行のプロパガンダになっていると、
多くの団体から抗議が来ているらしい。
とにかく、この映画の事件により、アメリカ軍が撤退したので、
もうここは、地球上でも珍しい、アメリカのにらみのきかない
所になってしまって、多くの過激派組織の訓練所があったりする
というのが、次にアメリカがここをターゲットに考えている
理由らしいのです。
映画の内容は、まあアメリカ政府のプロパガンダに
なっていると言われても、しょうがないですわねえ。
まあ、アメリカの負け戦を描いた作品ですが、
それにしてもアメリカ兵は勇敢に描かれているし、
ソマリアの住民は、ただアメリカ兵にバタバタ
殺されるだけが役割の、醜悪な黒人に描かれている。
この映画の
プロデューサのジェリー・ブラッカーマイヤは
『パール・ハーバー』も作ったンですが、
ま『パール〜』でも日本人には一切名前が無く、
無表情なまるで人間で無いように描かれていたんですが、
この映画のソマリア住人も、やっぱ
ただテレビゲームのごとく、
バタバタ殺されるだけの人間に描かれている。
しかしまあ、ブラッカーマイヤは『パール〜』の時は、
政治論争になるのを恐れて、「これは恋愛映画だ」と
言ってて、しっかり戦争映画を作ったわけだが、
今度はしっかり戦争映画、しかも
しっかりアメリカ政府のお望みのものを作ったわけだ。
『ブラック〜』で描かれた作戦は、どう見たって
上官が無能と言うか、それまで比較的アメリカ軍は
うまくやってきたので油断があったというか、
とにかく、もし失敗したときはどうするか、
というような判断を検討した形跡が無い。
とにかくアメリカ軍が絶対勝つ、という前提にしたがって
行動しているわけですが、これって第2次世界大戦で
日本軍が負けたパターンと同じじゃあないか。
日本軍もそうとう愚かですが、ま、
どこの国でも同じようなことはあるんだなあ、
という教訓ですね。
やっぱ仕官たるもの、負けたときには被害を最小に抑えるのも
仕事だろう、と思ってしまうが、
このアメリカ軍の指揮官には、その発想が無い。
そしてだらだらと戦力を投入しては、
順番にやられていく。
こういうメリハリの無い戦い方は、
いちばん戦争で良くないパターンですね。
おまけに、最後に病院で血をふくにいたっては最悪。
そう言う事態になら無いように最善を尽くすのが
上官の仕事だし、もうやってしまったことは、
粛々と裁きを待つしかないでしょう。
まあ、娯楽映画だと考えると、それなりに
楽しめますが、ナンなんでしょうね、この映画。
- 『バニラ・スカイ(原題)Vanilla Sky』
まず題名。
この映画はスペイン映画『オープン・ユア・アイズ』の
ハリウッド・リメークなんですが、
どう考えても『バニラ・スカイ』って題名は
変だなあ、と思っていましたが、
映画を見て納得。
こりゃあ、たしかに、「バニラ・スカイ」だわあ。
元ネタとなった『オープン・ユア・アイズ』は
非常に脚本が良く出来ているので、
まあ、これをぶち壊さないように気を付けて
映画化すれば、誰が撮ってもそこそこの
映画になるわけですが、
キャメロン・クロウ監督は、
まあ良い意味でのポップな感覚に仕上げて、
まずまず成功したんじゃあないでしょうか。
『オープン・ユア・アイズ』と『バニラ・スカイ』と
どっちが良い映画かというのは、なかなか
難しいところですが、
やっぱ監督の技量としては『オープン〜』の
アレハンドロ・アメナバール監督の方が上でしょう。
キャメロン・クロウのポップな感覚は
買うけど、やっぱ映画の重みが違うし、
『バニラ〜』が成功したのは、
『オープン〜』の完璧な脚本があったればこそ。
ま、しかし、『バニラ〜』の方は後に作られただけ
有利なわけで、『オープン〜』じゃあ、
ちょっと間が悪かったりしたところを、
スッキリと仕上げていますから、
ま、それなりに見る価値はあります。
俳優は『ザ・エージェント
(英語題名:ジェリー・マクワイガー)』でキャメロン・クロウと
組んだトム・クルーズ。
これに『オープン〜』に同じ役で出ていたときには
まだほとんど無名だったペネロープ・クルーズと
キャメロン・ディアスが脇を固めるという豪華版。
キャメロン・クロウは自伝的映画『あの頃、ペニー・レインと
(英語題名:オールモスト・フェイマス)』で、
なかなか興味深い映画を撮ったわけですが、
それ以外は『ザ・エージェント』もたいして印象無いし、
そんな凄い監督ってわけじゃあないですが、
この映画で、ずいぶん評判も上がるでしょう。
でも、何度も言うように、この映画の成功は、
元ネタの『オープン〜』の脚本が非常に
よろしいことなので、
この監督も次が勝負ですね。
- 『ブラック・ホーク・ダウン(原題)Black Hawk Down』
ソマリア紛争でのアメリカ特殊部隊デルタ・フォースを
描いた映画。
題名は「黒い鷹、舞い降りた」という意味かと
思っていましたが、実は「ヘリコプター墜落」という
意味なんだそうで。
現在のアフガニスタンも含め、世界中には
さまざまな紛争があります。
このソマリア紛争なんかも
http://www1.jca.apc.org/vaww-net-japan/
vaww-j/ja/tribunal/somalia.htm
を見ると、とにかくグチャグチャ。
おまけに平和を維持するはずの平和維持軍も
こんな酷い事をしているとは、
うすうす思っていたけど酷すぎる。
でこの映画、アメリカ軍はどう見たって
作戦の失敗でしょうがね。
奇襲は奇襲になってないし、
戦力の逐次導入とか、そりゃあまずいよねって、
素人が見ても思う。
おまけに、最後に将軍が病院で床に落ちた血をふくなんて、
将軍はたとえ失敗した作戦であろうと、
もっとどうどうとしていないと。
これだけまずい作戦なのに、アメリカ軍の
死者が17人って事は、よっぽど装備が
良いんでしょうねえ。
なんせ敵はテレビゲームのように、
バタバタ死んでいきますから。
ちなみにイギリスでは、この映画の前に
イギリス軍の募集のコマーシャルやってますが、
そりゃあ逆効果じゃあない。
なんせ、なまなましい戦争の実態を描いてますから。
指は吹き飛び、手はちぎれ、胴体はなくなる。
ま、『プライベート・ライアン』や
『レニングラード』ほどじゃあないけどね。
まあ、成果と言えばジョシュ・ハートネットが、
やっと俳優らしくなってきたということですかねえ。
『愛ここにありて』じゃあ、なにこの人、
って感じだったし、『パールハーバー』じゃあ、
良いとこなかったし。
で、内容がとっても中途半端なんだけど、
それというのも、やっぱリドリー・スコットが
監督しているからかなあ。
この人も『エイリアン』『ブレード・ランナー』
『テレマ・アンド・ルイーズ』あたりまでは
良かったんだけど、
ここんとこ『白い嵐』『G.I.ジェーン』
『グラディエータ−』(何でこんな映画が
アカデミー賞なんですかねえ)と、
中途半端な映画を作り過ぎな気がする。
どれも最後には、「だからどうなの」と言いたくなる。
それに比べると兄弟のトニー・スコットは、
『トップ・ガン』のあと、ちょっともたもたしてたけど、
ここんところ『トゥルー・ロマンス』
『クリムゾン・タイド』『エネミー・オブ・アメリカ』
『スパイ・ゲーム』と、
脇の甘さは兄弟似だけど、同じ甘いのでも、
なんか吹っ切れたような映画が多い気がする。
それにしてもプロデューサのジェリー・
ブラッカーマイヤは大丈夫なんだろうか。
私、この人の娯楽第1主義の映画って大好きなんだけど、
ここんところ本作と言い『パール・ハーバー』と言い、
大丈夫?っていう映画を2つ続けたからなあ。
だいたいが、あの負けることが大嫌いなアメリカで、
アメリカがやられる映画を作ったって駄目でしょう。
- 『ドメスティック・フィアー(原題)Domestic Disturbance』
ジョン・トラボルタ主演のサスペンス。
彼は離婚した妻と子供がいるんですが、
その元妻の再婚相手がヴィンス・ボーン。
もうこの辺りから、話が見えちゃってるところが
まずいよなあ。
ヴィンス・ボーンって、(本当につまらなかった)
リメーク版「サイコ」でもそうなんだけど、
出てきた瞬間、これは悪そう、って
思えちゃうところがまずい。
オリジナル版ヒッチコックの「サイコ」は、
アンソニー・ホプキンスが、
ただの兄ちゃん、殺人犯、老婆という複雑な
キャラクターを、さりげなくやっちゃったところが
凄いんだけど、なんせヴィンス・ボーンじゃあ、
見るからに悪そうだからなあ。
まあ、監督が『マーキュリー・ライジング』の
ハロルド・ベッカーだから、
まあ可も無く不可も無しで、
2年後には綺麗に忘れる映画だわナア。
『マーキュリー・ライジング』も
ブルース・ウィルス主演で、
この少年とアレックス・ボールドウィンを
脇に持ってきて、この内容だったら、
他の監督だったらさぞかし面白い映画になっただろうに、
って感じですか。
まあ、そこそこ面白かった。
- 『(原題)The last caastle
(予想日本語題名)ラスト・キャッスル』
アメリカの軍事刑務所。
そこにある日、ロバート・レッドフォードが
やってくる。
彼は3つ星の将軍、つまり相当えらいんだが、
大統領に逆らって、刑務所送りになったらしい。
でまあ、そこで、どうらか、こうたら、
という映画です。
前半の地味なことを思うと、後半のまあ
派手なこと派手なこと。
私は好きですね。
あと、ストーリに必然性が無い、という
意見もあるようだけど、
まあドリーム・ワークスの映画ですからね、
脚本の甘さは、こんなもんでしょう。
それと、彼らがこういった行動に出るのは、
やっぱ刑務所にいても軍人は軍人、
というところじゃあ、ないですか。
そういった点を差し引いたとしても、
なかなかこの映画は面白かった。
まっ、しかし、最後はたかが中佐では、
3つ星の将軍には貫禄で勝てないということでしょう。
ま、我々の世代には、ロバート・レッドフォードには、
オーラが見えますからね。
このオーラが見えない世代には、
この映画は、ちょっと拍子抜けかもしれないなあ。
最後に、どっかで見たことある刑務所だと思ったら、
『グリーン・マイル』でも撮影に使われたんですね。
- 『指輪物語、旅の仲間
(原題)The load of rings』
原作は、かの有名なトールキンの
長〜〜〜い、長〜〜〜い小説。
それを、3部作として映画にしようという試み。
今回はその第1部。
それにしても、これはかなり有名で熱烈なファンもいるので、
映画化するのは難しいと言われてきた原作。
この雄大で幻想的な映像を映画化しようとして、
20年くらい前にアニメで映画化されました。
当時のアニメの技術では、今のようにコンピュータ・
グラフィックは使えないので、
どうしても大人数のシーンでは、
迫力が出ません。
そこで、映画会社としては、力技に出ました。
なんと、大人数のシーンは、あらかじめ実写フィルムで
撮影を行い、後にそれをアニメのセルに
手書きで写すという、ムチャをやったわけです。
(ロトスコーピング方式というらしいです。)
結果は大失敗。
アニメとしての躍動感が失われ、そのわりに
イマイチ迫力の無い映像にしあがり、
映画は大失敗。
興行的にも大失敗で、映画会社は
倒産したんだっけ?(ちょっと、あやふや。)
そんないわく付きの原作を、
今度は3部作として映画化しようと言うわけなんですが、
今度は、現在のコンピュータ・グラフィックの
技術を上手く使い、大成功な映像だと思います。
それに、ハリー・ポッターが原作者の意向を
尊重するあまり、歯切れの悪い映像になったことを
思うと、
この映画はトールキンの意向を気にすることなく
製作できた分、なかなかストーリ展開も
テンポが良いです。
ちょっと時間が長すぎるかなあ、
ということもありますが、
映像の美しさを考えると、
なかなかの映画でした。
ちなみにトールキンは、私が今住んでいる
ヨークシャー
(彼はヨークシャーで英語教師をしていたそうな)の自然から
小説のイメージを得たそうですが、
映画の方は、監督のイメージがニュージーランドなんで、
すべてニュージーランドで撮影が
行われたそうな。
- 『(原題)Mean Machine
(予想日本語題名)ミーン・マシーン』
あまり日本じゃあ知られていないけど、
イギリスでは結構知られているビニー・ジョーンズ。
ガイ・リッチー監督の(私が大好きな)
『ロック・ストック・トゥー・スモークド・バレル』とか
(ブラッド・ピットのハチャメチャな英語が良かった)
『スナッチ』とか、なかなか渋いところで
出ているんですよねえ。
でこの映画、そのガイ・リッチーが特別プロデューサに
名を連ね、ビニー・ジョーンズがサッカーの
元スーパー・スター役で主役です。
内容は、元サッカー選手のビニーが、
ふとした事で刑務所に。
そこでサッカー・チームの面倒を見ることになったんだが、
そこはそれ刑務所、所長も含めて一筋縄では行かない
奴ばかり。
話は少年マガジン的に進み、まあ予定調和説のごとく
展開するんで、話はミエミエなんですが、
なかなかそれはそれで楽しく出来てます。
- 『エネミー・ライン(原題)Behind Enemy Lines 』
紛争中のボスニア・ヘルツェゴビナ。
NATO軍の定時飛行は簡単な仕事のはずだったが、
そのジェット機がやばい物を写したがために、
大変なことに...
という話。
主役は、提督役のジーン・ハックマンは
ともかくとして、オーウェン・ウィルソンは、
ジャッキー・チェンと競演した
『シャンハイ・ヌーン』も何となく印象無いし、
大丈夫だろうか、と思って見ていたんだが、
これが意外とがんばっていて、
なかなか良かったです。
それにしても、こう言う映画、
いつもはアメリカ人1人を助けるために、
たとえ敵とは言え、そんなに殺して良いのだろうか、
という疑問が残るんだが、
これはそこらあたりを、
うまくしのいでいると思う。
まあ、ストーリはどうって事無いんだが、
撮影の見せ方が上手いですね。
それと、それぞれのキャラクターの引き出し方と。
こういった、目立たないところでがんばっているのが、
この映画が成功した秘訣でしょうね。
それにしてもこの映画、もう日本で公開されていたとは。
最近はイギリスで公開するよりも、
日本で公開するほうが早い映画もあらわれてきました。
12月
- 『(原題)Atlantis:The Lost Empire
(日本訳)アトランティス』
ディズニーのアニメで、失われたアトランティスの
謎をめぐっての冒険。
時代は第2次世界大戦前に設定してあって、
なかなかレトロな感じが良く出ていた。
にしても、この映画、なかなかデザイン的にも良く出来ていて、
映像もまことに美しいのだが、何と言いましょうか、
ディズニー生誕100周年記念作品というには、
ちょっと何かが足りない感じがする。
確かに鳥肌が立つような映像も、数回はあったけど、
今のアニメのレベルと言うのは凄いんだから、
もうちょっとなあ、工夫が欲しいのですが。
まあ、ライバル会社の『アタナスシア』には及ばないとして、
同じディズニーのアニメの『美女と野獣』にも
まけてる。
『ターザン』のような躍動感も無い。
とにかく何かが足りない映画でした。
- 『(原題)the 51st State
(日本訳)51番目の州』
サミュエル・L・ジャクソンが、自分でプロデュースして、
自分で主役した映画。
彼の役は黒人なのにスコテッシュ・キルト(スカートのようなもの)
に身を包む謎の天才化学者で、それが女殺し屋、ギャング、
警察に追われ、リバプールの町をてんやわんや。
監督は、香港出身のロニー・ユーで、香港で
少し映画を撮った後、ハリウッドで「チャイルド・プレイ」
なんかを撮ったらしいが、良く知らない。
だけど、その香港出身の映画監督が、じつに
北イングランドの「らしさ」を撮影していて、
興味深い。
やっぱ、もとイギリスの植民地だからかなあ。
朝の、フル・イングリッシュ・ブレックファーストには
ブラック・プティングが付いてくるし、
リバプールでマンチェスター・ユナイテッドの
応援をするのは、ゆるされないのね、とか、
土曜日の3時からは、サッカーにきまってる、とか、
リバプールのゴミゴミとした、汚らしい風景は、
本当にイギリスっぽいし、
競演のロバート・カーライルは、
強い北イングランド訛りだし、
ディープなイギリスが好きな人にはたまらない(?)かも。
- 『(原題)A Christmas Carol:the Movie
(予想日本語題名)クリスマス・キャロル』
今のアニメのレベルから言うと、ちょっと落ちますよねえ。
それに、今までにたくさん映画化されてますから、
今更、と言う感じもいなめません。
それでも、原作が良いから、まあ、それなりに楽しめます。
コンピュータ・グラフィックを用いた幻想的な
映像は、それなりに楽しめます。
- 『ズーランダー(原題)Zoolander』
ベン・スティーラが自分で脚本手伝って、
自分で監督して、自分で主演した映画。
ズーランダーってのは、主役の名前です。
ベン・スティーラは、スーパー・モデルの役で、
しかも思いっきりずっこけてくれる役で、
自分のキャラクターを最大限生かした
アイデアは面白いんだけど、アイデア倒れと言うか、
ちょっとこの手の映画にしてはテンポが悪い。
しかし、気になる俳優ではある。
何と言っても『メリーに首っ丈』は良かったけど、
私の好みは『アメリカの災難』が大好きです。
『トゥルー・ロマンス』ではシリアスに決めた
パトリシア・アースクェットが、
身も心もたるみっぱなしの演技が良かった。
- 『バンディッツ(原題)Bandits』
ブルース・ウィルスとビリー・ボブ・ソートンという
芸達者な2人組みが、銀行強盗を演じる映画。
監督は『レイン・マン』や『ワグ・ザ・ドッグ』の
社会派バリー・レビンソン。
なかなか出だしは好調なペースではじまって、
快調に話は流れていくのですが、
どうも途中でケイト・ブランシェットが
出てきたあたりから、話はもたつき始めます。
娯楽映画にしたいなら、もっとテンポ良く
流さないと行けないと思うんだが、
この辺りが退屈だった。
ラストはなかなか面白かったんだけど、
これが「真実の話」となると、
え〜〜〜〜、納得できん、となります。
11月
- 『スパイ・ゲーム(原題)
Spy Game』
題名通り、スパイの話。
主演がブラッド・ピットとロバート・レッドフォード。
監督が『クリムゾン・タイド』や
(私の大好きな)『エネミー・オブ・アメリカ』の
トニー・スコット。
なかなか冒頭からはらはらドキドキ。
いきなりブラッド・ピットが中国でつかまるところから
はじまる。
この出だしは満点だ。
で、彼を巡って香港のCIAでは会議が
開かれる。
ロバート・レッドフォードは引退間際の
諜報部員と言う設定で、プラッド・ピットは
かつての彼の部下。
でまあ会議では、どうもピットに対して
歩が悪い。
映画はレッドフォードが昔を回想する
シーンを挟みながら、レッドフォードが情報をあやつり、
なんとか彼を救出しようとするのを
描いている。
まあ、スパイの話なんだけど、
大げさな道具も派手なアクションも無し
(回想シーンには登場するが)に、
ただひたすら情報とレッドフォードの集中力だけで
勝負しているところが、この映画が成功した
秘訣でありましょう。
とにかく面白かった。
にしても、こういう映画でいつも後味が悪いのは、
アメリカ人1人を助けるためには、他の国の
人間の命って、何人犠牲になっても
良いのかなあ、という疑問ですね。
中国側のアメリカ協力者はどうなったかも
描かれてないし。
彼らの命はどうなっても良いのね、って感じですね。
それとCIAの行ってきた悪事の見本みたいな
映画でもありまして。
また最近、テロ事件以来、CIAの非合法活動(暗殺も含む)を
認めるような法案がアメリカで可決されたらしい。
あの国は、どうなっちゃってるんでしょうねえ。
このトニー・スコット監督は、前作『エネミー・オブ・
アメリカ』で、いかにアメリカはひどい盗聴を行っているかを
描いたわけですが、なんかこの監督、一見愛国主義者のようで、
やんわりと皮肉なメッセージが入っているところが
面白い。
ま、どっちにしろ、諜報活動のプロ
CIAが、アメリカに対して裏切れば、
どんなこと(勝手に軍隊を動員するとか)でもできちゃうぞ、
という、
ひょっとしたらCIAでは本当に上(大統領?)の命令を
無視してかってにやっている
(実際、過去にそういうことがあったので、
一度はCIAの権限を弱める方向に行ったんだけど、
今回のテロ事件で元に戻りそう)
ということを想像させるような映画でもありまして、
なかなかいろんな意味で興味深いです。
- 『シャイナ(原題)Shiner』
日本語題名を予想するのは、難しいなあ。
なんせ主人公のあだ名なんで。
ジョン・アービング監督作品。
ジョン・アービングと言っても、『ホテル・
ニューハンプシャー』(私大好きな映画で、
特に熊の役(本当にそう言う役がある)のナターシャ・
キンスキーが好き)や『ガープの世界』
(これも良かった)や
『サイダー・ハウス・ルール』の
原作者のジョン・アービングとは違い、
映画『ハンバーガー・ヒル』の監督をやった
あのジョン・アービングらしい。
でその『サイダー・ハウス・ルール』で
アカデミー助演男優賞を受賞した
マイケル・ケインが主役です。
『サイダー・ハウス・ルール』では
孤児院の院長で、堕胎医師で、手術用のエーテルで
ラリって眠るのが趣味と言う、複雑な人間を演じていましたが、
今回はロンドンのイースト・エンドの悪役と言う役を、
見事に演じています。
この映画、一言で言うと「痛い」映画です。
北野武が良く言いますが、暴力映画がいけないんじゃなくて、
暴力を客観的に見れてしまうのがいけないんだ。
観客は客観的に見れてしまいますから、
暴力が痛いものだということを忘れてしまう。
それで、他に暴力を行うことを悪いことだと
忘れてしまう。
だから北野武は、本当に見てて痛そうな暴力映画を作ると
言ってますが、本当に彼の映画は痛そう。
この映画も、なかなか暴力の本質をついてて
痛そうな映画なんだけど、映像もオーソドックスで
なかなか面白いです。
相手の悪役に、マーティン・ランドウ。
彼は昔はテレビ・シリーズの『スパイ大作戦』
(最近『ミッション・インポッシブル』として
リメークされましたが)に変装の名人
(この役は、その後の『スパイ大作戦』では
『スター・トレック』のミスター・スポックの
役をやっていたレモーネ・ニモイがやっていた)として
出ていましたが、その後はあまり登場することが、
ありませんでした。
ところが、ティム・バートンの『エド・ハリス』で
(得意の変装を生かしてか)吸血鬼役者役で復活、
アカデミー助演男優賞まで取るという偉業です。
そのアカデミー助演男優賞の2人が、なかなか
渋い演技を見せます。
とにかく、久しぶりにドキドキしました。
- 『キス・オブ・ザ・ドラゴン(原題)Kiss of the Dragon』
かつて『少林寺』で一世を風靡したリー・リン・チェン。
『少林寺』は中国の武術大会で優勝したリーをはじめ、
多くの部門別優勝者が出演し、中国の意地をかけて
本物の中国武術を見せようと言う意気込みに溢れた、
実にダイナミックな映画で、私も大好きです。
ところが、『少林寺』であれほど輝いて見せた
リーも、ジェット・リーと名前を変えて
ハリウッドに来てからは、なんかこう、
パッとしないと言うか。
思うにジャッキー・チェンは、なんとなく
野暮ったい顔が、実にハリウッドの映像にマッチする
(ただハリウッドでは、共演者(クリフ・タッカーなど)には
恵まれていませんが)し、
ブルース・リーも、はじめからハリウッドの映像に
合っていた。
ところがリーは、どうにもこうにもハリウッドの
映像に入ってしまうと、なんとなく収まりが悪そうなんです。
何ででしょうねえ。
そんなわけで、もう自分で何とかするしかないと思ったのか、
この映画では、プロデューサにも名を連ね、
原案のリー自身になっています。
でまあ、さすが自分で自分のために作った映画だけあって、
たっぷりとリーの武術の凄さを堪能できるのですが、
その分、はっきりいって、ストーリがばらばらです。
だいたい警察は銃を打ち過ぎだし、逃亡者は目立ち過ぎだし、
人は死に過ぎだし。
まあ、そういうことを無視すれば、けっこう見れる映画です。
- 『ハリー・ポッター
(英語題名)Harry Potter and the Philsopher's Stone』
いちおう話題作なんで、見に行ってきました。
映像はいかにも、それっぽく作ってあり、
見るほうはそれなりに楽しめました。
ただ、ストーリは、こういった大ヒット作品の映画化では
常に付きまとう問題で、あの分厚い本がそのまま
映画に出来るわけはない。
どこで妥協するかなんだけど、こんかいは
多くの人の最大公約数的な選び方なんで、
意外とつまらない。
これが、ティム・バートンの『バットマン』や
キューブリックの『2001年宇宙の旅』や
『シャイニング』のように、
原作は無視して、ただひたすら自分の世界を
追求するのなら、それはそれで大成功か
大失敗で、どちらにしても面白いんだけど、
なんせ監督が『ホーム・アローン』の
クリス・コロンバス。
まあプロデューサも、その辺りを考慮して、
冒険せずに無難な映画を作ってくれる
クリスを監督に選んだんだろうけど、
どうも演出が、いまいちかったるいんだなあ。
この監督、『ホームアローン』の他にも、
『ミセス・ダウト』とか『ステップ・マム』とか、
それなりに面白い映画は作っているんだけど、
どれも2年も経つと、内容を忘れてしまうような作品ばかり。
やっぱ、演出が少しずつ甘いんです。
こんどの『ハリー・ポッター』でも、
演出に切れはなく、
どことなく、無駄な部分が多い。
映像の綺麗さで、なんとなく最後まで見てしまった、
という感じですか。
この内容で2時間20分は長すぎる。
まああと15分は切って、もっとスピーディな
展開にしないと、せっかくの原作がもったいないです。
- 『アザーズ(英語題名)The Others』
ニコール・キッドマン主演のホラー映画なんだけど、
この映画は、本当に面白い映画だったです。
だいたい私は、ホラー映画というのは、
ほとんど怖くないんだけど、この映画は
(これほど特撮全盛の時代にもかかわらず)
ほとんど特撮は使わず、しかも怖いのです。
マジで鳥肌が立ちました。
監督は、スペイン映画『オープン・ユア・アイズ』で
アメリカで大ヒットを飛ばしたアレハンドロ・アメナバール。
この映画はあまり日本では話題になりませんでしたけど、
本当に面白かったですね。
現在、トム・クルーズ主演でハリウッドで
リメークが作られていますが、
イギリスでは現在、予告編をやってますから、もうすぐ
イギリスでは見れると思います。
さて『アザーズ』が素晴らしいのは、
光の使い方なんです。
主人公の子供達は日光アレルギーという特殊な
病気なんで、常に暗いところで話は進みます。
キューブリックの『バリー・リンドン』の時代には、
人口の光を使わずに室内で撮影するために、
ろうそくを400本立てた
(しかし400本も立てたら、それはもう
立派な人口の光だと思うんですが)そうですが、
ソフィー・マルソー主演の『ファイアー・ライト』では、
本当に暖炉や1本のろうそくの光だけで、
撮影が行われています。
それだけ、技術が進んだんでしょう。
この映画も、わずかなランプの光だけで
撮影が行われているんですが、
光と闇と音だけで恐怖感を演出する、
その古典的手法が見事に開花しています。
それで、ほとんど特殊撮影が行われていないのにも
かかわらず、こんなに怖いのです。
それにしてもストーリも見事で、
本当に面白いです。
このストーリは、どこを説明してもネタばらしになるので
あまり詳しくは話せないのですが、
最後の最後でヴィクターの秘密が分かったときには...
にしても、これほど面白い映画が、
日本ではまだ公開が決定してないなんて...
ま、何にしても、ぜったいお勧めです。
- 『アメリ(英語題名)Amelie』
おおーー、ジャン-ピエール・ジュネ監督の
新作映画ではないですか。
とにかくこの人の『デリカテッセン』は
ブラックな笑いで満ちていて、本当に
好きな映画です。
ジュネの映画は、どれも現実ばなれした設定が
多いのですが、今度はパリで暮らす女の子の
映画だと聞いて、どうなることやら、と思ったんですが、
いったん映画が始まれば、そこは摩訶不思議なジュネ・ワールドが
展開され、まったくジュネの映画なのです。
まったく予想のつかないストーリも面白いのですが、
ジュネの細部に渡るこだわり、
たとえばアメリーは石を投げる水きりが趣味なんですが、
どこへ行っても、よさげな石があれば、さりげなく
ポケットに入れるのです。
こういった細かいところが面白い。
カメラのアングルは、意表を突く方法が多いのですが、
意外とオーソドックスな手法だったりする。
そして、写真の謎が解明されたときの驚き、
こういったことでストーリが出来てしまう。
ラストのアメリーが1人でパンをこねるシーンなんて、
彼女の孤独とやさしさ思うと、
本当に感動的で、涙が出てきました。
主演のアンドリュ・トウトウも良かったですが、
ジュネの映画には欠かせないドミニク・ピノとか、
そのほかジュネらしいおかしな顔のオンパレードで、
本当に楽しく泣ける映画でした。
- 『バーバー(原題)The man who was'nt there』
10月はなんか不調だったんですが、11月になったら
おお、コーエン兄弟ではないか。
あとデビッド・リンチ、ジャン-ピエール・ジュネと、
私好みの映画が続きます。
日本ではコーエン兄弟の『オー、ブラザー』をやっているらしいが、
イギリスでは今年のカンヌ映画祭で監督賞を
デビッド・リンチと分かち合った本作品を
やってます。
主演は私の代好きな『スリング・ブレイド』で主演、監督を
つとめ、私生活でもアンジェリーナ・ジョリーと結婚し、
今やのりに乗っているビリー・ボブ・ソートン。
それにしても、彼がこんなにハンサムだったなんて、
どうりで2人も連れ子がいても、アンジェリーナと
結婚できるわけだ。
奥さん役は『ファーゴ』で、妊娠中にもかかわらず
凍った道をよろよろ歩きながら事件を解決していく
女刑事役がよかったフランス・マクドルマン。
それにしてもこの映画、忠実に昔の白黒映画の
様式を真似て、『ミラーズ・クロッシング』のように
実にスタイリッシュな映像になっていてカッコ良いんだ。
それでも完璧にコーエン兄弟の
映画になっているのです。
主人公は床屋なんだ、これが。
そして事件が起きて人生が狂っていく話なんだけど、
それとは別に彼のタバコの本数が尋常ではない。
そこが気になって気になって...
そしてストーリも、事件とはまったく関係のない
エピソードで彩られているんだけど、それがまた
良いんだなあ。
これこそコーエン兄弟の世界。
ちなみに、今までの彼の映画で、ここが気になる
というのを上げてみると、
- 『バートン・フィンク』カンヌ映画祭で、
パルム・ドールを取った記念すべき映画なんだが、
そんなことより、部屋の壁紙のカリカリ感が気になって
気になって...
- 『ファーゴ』前にも書いたけど、事件そのものより、
妊娠している女刑事が、凍った道をよろよろ歩くのが、
気になって気になって。
それと、あいかわらずのジョン・ブシューミの
変な顔も気になって。
(彼は『コーン・エアー』のような役もあるのに。)
- 『ビッグ・リボウスキー』いちおう事件は起きるんだけど、
そんなこととは関係なく、ジェフ・ブリッジスや
ジョン・ブシューミは毎日りちぎにボウリングだけは
やるのです。
それにしても、ジェフ・ブリッジスの汚いこと汚いこと。
とまあ、コーエン兄弟と言えば、映画の本筋とは関係ない
ところで、とっても気になる映画なんです。
それにしても、これ以外にも
『ブラッド・シンプル』とか『ミラーズ・クロッシング』とか
『未来は今』とか、とっても気になる映画ばかり作っているのに、
どれも似ている映画はない、しかもどれもしっかり
コーエン兄弟なのは、さすがです。
10月
- 『バトル・ロワイアル(英語題名)
Battle Royal』
バトル・ロワイアルと言っても、プロレス・ファンでなければ
何の事かわからないと思いますが、要するに
多くのプロレスラーがリングに上がり、
相手かまわず戦う形式の試合です。
相手かまわずと言っても、何人かで
協力することは可能なんで、
そこは色々な駆け引きはありますが、
最後1人になるまで、戦います。
まあ、日本じゃああまりやってませんが、
アメリカのプロレス中継を見ていると、
良くやってます。
でまあ、それを文字って、中学生が
離れ小島で最後の一人になるまで殺し合う話なんですが、
日本で上映していたときは、あんまり興味なかったんで
見てなかったんです。
ま、それが、イギリスで見れると言うことで、
見に行きました。
深作欽二監督は、確かに『仁義なき戦い』の
第1作はなかなかドキュメント・タッチで
良かったと思うんですが、
その後はどんな映画を撮っていたのやら
記憶にありません。
それで、あまり期待していなかったんですが、
なぜ殺し合うか、と言うところ以外は、
意外と話が破綻していなくって、
最後まで見せましたね。
ただ、暴力の映像が、今となってはちょっと古いかなあ。
まるでテレビ・ドラマ見ているみたいだった。
それとやっぱり、アメリカのテロ事件以来、
私の中でも何かが変わったのか、
これほどの暴力を見せられても、
実際、世界で起こっていることの方が
遥かに残酷に進んでいることを思えば、
映画の持つメッセージって何だろうって、
考えてしまいますね。
つまり、暴力映像はそれなりなんだけど、
何にもメッセージを感じないんです。
もっとも黒沢明なんかは、
すぐヨーロッパの人間は映画のメッセージについて
考えるが、それはよくない、と言ってましたが、
ちょっと違うような気もして...
どっちにしても、ラスト・シーンは納得行きませんでしたし、
後味も悪いなあ。
- 『アメリカン・スィートハート(原題)
American Sweethearts』
原題は複数形なんだが、こういうのが日本語の
題名になっちゃうと、ほとんどが単数系に
されちゃうんだよなあ。
(例『パトリオット』しかもアメリカ人のように
発音すれば『ペイトリオッツ』
(アメフトのチームは、このように日本語表記
されています)だろうに。)
こういうのは、一見細かいことのように見えますが、
たぶん日本人が正しい英語が身につかないのは、
こういうことの細かい積み重ねのような気がするのですが。
出演は、キャサリン・ゼータ・ジョーンズに
ジョン・キューザック。
まあこの2人、キャサリンは『エントラップメント』は
なかなかよかったし、ジョンも『コーン・エアー』とか
『真夜中のサバナ』がなかなか良かったんだが、
自分から光を発するような1流の映画俳優とは言えない。
『エントラップメント』はショーン・コネリーの
光で輝けたんだし、『コーン・エアー』は
ニコラス・ケージをはじめ、悪い悪いジョン・マルコビッチ、
変な顔の役(例、私の大好きなコーエン兄弟の『ファーゴ』)
なら天下一品のジョン・ブシューミとか、
ほんとうに役者が揃っていました。
まっ、キャサリンが1.4流で、ジョン1.2流という
ところでしょうか。
ところがこの2人が一見主役のように見えて、
脇役のようなジュリア・ロバートと
ビリー・クリスタルという、実に芸達者な
2人がしっかり話しをリードすると言う、
なかなか手の込んだ構成になっているのです。
でまあ、『ディアー・ハンター』では
ロバート・デ・ニーロ以上の鮮烈な印象を残し、
『トゥルー・ロマンス』ではなかなか
ギャングのボス役がはまっていたクリストファー・ウォーケンも、
なかなか面白い役で、出ているし。
(私は最後のタイトル・ロールまで、
どの役をやっていたのか、わからなかった。)
ところが、映画は面白かったかと言えば、
はっきり言ってつまらなかった。
まあ、英語が良く分からなかったこともあるんでしょうが、
映画館の他の観客も、あまり冗談の所で笑っていなかったんで、
英語のジョークとしてもそう面白くはないんでしょう。
まず、つまらん下ネタが多すぎる。
今回はビリー・クリスタルが、プロデューサと
脚本も担当しているのですが、彼ってこんなに
センスが悪かったかなあ。
だいたいギャグの世界では、下ネタと言うのは、
使わずに済むなら使わない方が良い、
とされていると思います。
もし使うんなら(私の大好きな)『メリーに首ったけ』のように、
もうそれこそ全力を出しきって使わないと駄目だと思うんですが、
この映画はその点が、実に中と半端です。
監督のジョー・ロスって、おお昔に少し映画監督をやっていたらしいけど、
その後はプロデューサ家業に点じて大成功したらしい。
はじめの頃の代表作は、中日ドラゴンズの監督を
高倉健が演じる『メジャー・リーグ』。
まっ、主役が(当時はテレビ俳優だった)
トム・セレックということでも分かるように、
低予算で程よくヒットさせる能力に長けていたわけです。
その後はメジャーな会社に引き抜かれて、『ダイハード2』、
『ホーム・アローン』、『ホーム・アローン2』、
ジュリア・ロバーツ主演の『愛がこわれるとき』、
ロビン・ウィリアムズの女装も楽しい『ミセス・ダウト』。
まあ、どの映画も見た憶えはあり、
どれもそこそこは面白かったんですが、
どれもとりたてて物凄く面白かった記憶はない。
つまり、そういった類のプロデューサなわけだ。
そう言う人を連れてきて監督やらせて、
いかほどの期待が出来ようか、と思って見たんですが、
まあ結果は予想通りでした。
本当はもうちょっとビリー・クリスタル辺りが
頑張るはずだったんだろうけど、彼も歳かなあ。
- 『ドリブン(原題)Driven』
監督レニー・ハーリンで、スタローンが主演の映画。
カートという自動車レースを舞台にしたものらしいですが、
私はちょっと疎くて、良く分からないですが、
F1やインディーとも違って、
なかなか面白かったです。
監督のレニー・ハーリンは、スタローンと組んだ
(私の大好きな)『クリフ・ハンガー』が有名ですが、
その他にも『エルム街の悪夢シリーズ』の中では
たぶん一番面白いだろうと思われる『エルム街の悪夢4
/ザ・ドリームマスター最後の反撃』の監督とか、
(これはイマイチだったような気もするが)『ダイ・ハード2』とか、
『クリフ〜』以後なら(これも小粒ながら、
なかなかシャキシャキしていて、私おすすめの)
『ロング・キス・グッドナイト』とか、
なかなか小気味良くスマッシュ・ヒットを飛ばしている
監督なんで、それなりに期待して見に行きました。
そして期待通りの出来と言うのは、全く素晴らしいです。
とくにコンピュータ・グラフィックを駆使した
レース・シーンは全く秀逸でした。
今の世の中、レースの車載カメラの映像が、
たくさん出ていますから、レーサの目から見た映像と言うのは、
それなりに工夫しないと、どこかで見たような
映像になってしまうんですが、
この映画はその辺りの工夫も、
本当に素晴らしいですね。
出演者は、スタローン以外も、
気になる女に(『マトリックス』のウォッシャウスキー兄弟が
監督した、私おすすめの)『バウンズ』の
ジーナ・ガーショウとか、
不治の病に侵された2人組みのさわやかな暴走を描いた
(私の大好きな)『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』
(ちなみに題名の元ネタは、有名なボブ・ディランの曲の
題名(クラプトンのカバーもあります)なんですが、
さらにその元ネタは、聖書の言葉らしいです)の
ティル・シュワイガーとか、
なつかしいバート・レイノルズとか、
なかなか気になる脇役が、そろっています。
- 『エニグマ(原題)Enigma』
第2次世界大戦中にドイツ軍が使用したエニグマという
暗号をめぐるミステリー。
それ以外にも、ポーランドのカティンの森の虐殺事件
(ドイツとソ連に占領されていたポーランドで、
何千人と言う将校が虐殺された事件で、ドイツ、ソ連双方が
相手を非難し、今でも真相は謎とされている)とか、
いろいろ興味深いエピソードが出てきます。
中でも、数学者達が、暗号解読だけでなく、
オペレーション・リサーチ(当時はそう言わなかったんだけど)
なんかの手法を用いて、戦争の作戦まで
踏み込んで議論しているのは、
数学者としては興味深かったんだけど、
いかんせん英語がよく分からなくって、
いまいちだった。
日本に帰ったら、ちゃんと日本語の字幕付きで見たいです。
ミック・ジャガーがプロデューサをしていると言うので、
イギリスでは結構話題になっているんだけど、
日本ではいつ公開するのかなあ。
映画のストーリは、暗号解読や戦争の話と平行して、
失踪したガールフレンドの謎
(ちなみにエニグマとは、ドイツ軍の暗号の名前で
あるだけでなく、英語にはそのもの「謎」という
意味がある)に迫る話で、
とっても面白そうなんだけど、
これも英語がよく分からなくて、
どうもねえ、でした。
にしても、ケイト・ウィンスレットって、
もちろん『タイタニック』は有名ですけど、
もともとは『いつか晴れた日に』とか
(おそろしく暗い内容で私は嫌いな)
『日陰の二人』とか、
20kgやせてのぞんだ『タイタニック』後に、
リバウンドで20kgもどって、その体形をいかして
作った『グッド・バイ・モロッコ』とか、
本当に芸達者ですね。
『タイタニック』の演技は、良かったですけどね。
ところで、エニグマの暗号について興味有る人は、
http://www.infonet.co.jp/ueyama/ip/history/enigma.html
まで、どうぞ。
エニグマをいじれます。
- 『スコア(原題)The Score』
ロバート・デ・ニーロが腕利きの金庫やぶりの役を
やるんですが、これがなかなか良いです。
そこに、エドワード・ノートンがからんでくるのですが、
彼は、本当に上手いですね。
(私の大好きな)
『ユージュアル・サスペクト』のケビン・スペイシー
(しかし、これ書くと、逆に『ユージュアル・サスペクト』の
ネタばれになってしまいますね。『ユージュアル〜』見ていない人、
ごめんなさい)みたいなもんなんだけど、
間の取り方が良い。
監督のフランク・オズって、今まで『イン&アウト』以外は、
印象に残っている映画がないんですが、
本作は抜群の出来ですね。
どうなっちゃったんでしょうか。
この映画が成功した理由はいくつか考えられるのですが、
あまり話を大きくしすぎなかったことが、
第一だと思います。
大きすぎない中で、濃密な内容を入れてあります。
それともう一つは、抜群の間の取り方。
これは編集テクニックだと思うんですが、
やっぱいくらエドワード・ノートンの上手い演技が
フィルム上に残っていても、それを上手く
編集でつなげなければ、
その間が生きてこないわけで。
かつては、こういったいわゆる映画らしい映画と言うのが
けっこうあった(例をあげれば『第3の男』の
キャロル・リード監督の『オッズ・マン・アウト』
(日本語題名は、たぶん『邪魔者は消せ』)なんかかなあ)
と思うんですが、最近はあまりないなあ。
最後に、この映画の良いところは、あまり人が
死なないところでしょうか。
9月
- 『A.I.』
スティーブン・スティルバーグの映画だし、
予告編は実に秀逸だったので、見に行ったんですが、
最後は裏切られました。
たしかに、ハーレイ・ジョエル・オスメン君の演技は
秀逸で、『シックス・センス』はまぐれでは
なかった、ということを実証したわけだし、
ロボット顔が実に似合っている(左右対象顔の)
ジュード・ロウも(『ガタカ』と同じくらい)
良い演技だったし、スティルバーグも、
実に見せ方が上手い。
それに伏線が良く利いているもの、
スティルバーグならではだし。
実際、途中までは涙涙で、私はうるうるだったんです。
なのに、この最後は何?
あまり詳しく書くと、ネタばれになってしまうので、
詳しくは書けませんが、この最後は、
映画の世界ではタブーとされている「夢おち」と
同じくらい後味が悪いです。
- 『チョコラ
(原題)CHOCOLAT』
何とも不思議な味わいの映画なんですが、
イギリスに来て、こんなに泣いて笑った映画は、
初めてですね。
まあ、今までは、言葉の問題もあって、
なかなか映画に集中できなかったんですが、
これはすっかり映画に魅了されました。
監督は「サイダー・ハウス・ルール」のラッセ・ハルストレム。
だから出てくる人々は、みな一見普通に見えますが、
実はそうじゃあない。
あるフランスの田舎町。
いっけん敬虔な田舎に見えるんですが、
良く見るとどこか変。
教育ママの子供は、暗い絵ばかり描いているし、
市長は偽善家だし、で、一見変にみえる
偏屈物の家主(『恋に落ちたシェークスピア』で
エリザベス1世をやっていたジュディ・リンチ)は、
良い人だったり、
とても人間の構成が、興味深いです。
そこへ、チョコレート屋のジュリエット・ビノーシュが、
子供と共にやってくる。
彼女がチョコレートを作るシーンも興味深いのですが、
彼女のチョコレートの秘密も、面白かったです。
それから、その田舎町では、ちょっとづつ
彼女に触発されていくのですが、
有る日、川から船に乗って、流れ者のジョニー・ディップが
やってきて、どうたらこうたら、どうたらこうたら、
という話なんですが、
すべては御伽噺的に見えて、実はそうじゃない。
ビノーシュが村人を癒す話かとおもうと、
実はそうじゃない。
本当に最後まで期待を良い方に裏切られる映画でした。
- 『ワイルド・スピード(原題)The fast and furious』
ま、とにかく見てちょうだい、って感じの映画です。
有名な俳優や有名なスタッフはいないけど、
とにかくスカッとします。
こう言う映画、大好き。
ようするに、公道で400m競争する、いわゆる
ゼロヨンというものなんだろうけど、
かっこいいです。
あと、この映画の良いところは、これほど
アクション・シーン主体なのに、
あまり人が死なないところかなあ。
それにしても、今までの考えでは、日本車や
ドイツ車は悪役で使われることが多かったのに、
これほど日本車が活躍する映画も、
珍しいかも。
私は車マニアではないので、良くはわかりませんが、
スカイラインのGTやら、三菱やら、トヨタやら、
とにかく日本車のオン・パレードなのです。
が、極めつけはシビックでしょうねえ。
シビックがここまでカッコ良くなって、良いのだろうか、
というくらいカッコ良いんですが、イギリスの
テレビの宣伝を見ていると、イギリスでは
シビックはいけてる車らしいです。
- 『ロック・ユー!
(原題)A Night's Tale』
中世の騎士が、槍で1対1に激突するジュースティングという
競技のお話。
中世の話なんだけど、(まあありふれてはいるけど)
ロックの曲をつけたり、今風のダンスをやってみせたり、
それなりに楽しまそうと、努力の跡は見られます。
話も(まるで「水戸黄門」のように)ご都合主義で上手く進むんだけど、
まあ、それなりに楽しめる。
ただ不満を言えば、見所が騎士と騎士との激突シーンだけなんだなあ、
これが。
これでやや飽きたかなあ。
真中あたりの話のもたつきも、気になるし。
せっかくはじめの方に、剣と剣の激突シーンもあるのだから、
もっといろんな競技もやれば良いのに。
ここまで中世の話をぶっ壊すんだったら、
いっそのこと、鎧を着けたトライアスロン
(重そう)やらしてみたり、
弓とかの複合競技にすれば、
見所が増えたと思います。
ましかし、文学者チョーサー
(しかし彼は役人だったから、こんなことやってる
暇はあったんだろうか、なんて突っ込みは、
つまらんですか)にいっぱい語らせてみたり、
それなりには楽しかった、という評価ですか。
でまあ、ここからは蛇足ですが、
監督のブライアン・ヘルゲランドは、前作の
『ペイ・バック』ではメル・ギブソンを主演にして、
小ぶりな映画ながら、そのシャキシャキとした
演出は、本当に良かったんだけどなあ。
本当にスカッとしました。
その前は脚本家として、『L.A.コンフィデンシャル』とか
『陰謀のセオリー』とか、なかなか面白い映画も
作っているんだが、ケビン・コスナーが見事に
最悪な映画に送られるラズベリー映画大賞を受賞
(私も受賞に値すると思います)してしまった
『ポストマン』
(ケビンはこの映画以降、立ち直れないんじゃないかなあ)とか、
私の大嫌いな『パトリオット』とか、
けっこうはずしてもいる。
つまり、スティルバーグ
(評価の低い『1941』だって、大した映画だと思う)のような、
10割バッターじゃあないわけね。
思うに、この人って、
『L.A.コンフィデンシャル』のカーティス・ハンソン
(『ゆりかごをゆらす手』が、最高でした)との
共同脚本とか、『暗殺者』のウォッシャウスキー兄弟
(『マトリックス』が有名ですけど、
『バウンズ』も大好きな映画)とか、
共同執筆者に助けられていた面が、多い気がする。
つまり、次が勝負ですね。
題名の『ロック・ユー!』ってのは、映画のはじまりや
予告編(日本じゃあ、どうなんですか)に
使われているクィーンの『We will Rock You!』って
曲からの引用なんだけど、
あまりに映画の内容とかけ離れているので、
こういう題名は良くないと思う。
なんで素直に、原題通り『騎士の話』で、いけないんだろう。
それにしても、この曲、ものすごく有名な曲なんだけど、
映像とのシンクロが悪いです。
なんで、もっとノリの良い映像が、作れないんかなあ。
それにしても、最後もクィーンの
「We are the Champions」では、
お約束過ぎるではないか。
そうか、この監督がイマイチなのは、お約束過ぎるのが、
この映画では前面に出過ぎたせいなのね。
前作の『ペイ・バック』が面白すぎたのは、
このお約束過ぎる演出を逆手に取った
バランスの良さだったのね、
と、妙に納得しています。
- 『ムーラン・ルージュ(原題)Moulin Rouge』
おお、監督は、あのデュカプリオ主演の
『ロメオ+ジュリエット』のオーストラリアの監督
バズ・ラフマンではないか。
ありゃー、良い映画でした。
だいたいが、いちいち拳銃
(また拳銃のデザインも最高)撃つだけで、
なんであんなに格好付ける必要があるのか、
あの怪しさが何とも言えません。
まあ、あれは、歌舞伎のミエの世界なんだと
理解していますが。
しかも台詞回しはすべてシェークスピアで、
ブラジルの猥雑な雰囲気でロケを行っている、
このセンスの良さが最高ですね。
今回は、ニコール・キッドマンとユアン・マクレガーを
主演にして、100年前のパリの有名なナイト・クラブ、
ムーラン・ルージュが舞台の話です。
にしても、あいかわらずラフマンは凄いですね。
はじめの1時間は、とにかく音と映像の洪水で、
はじめは荒唐無稽な話だったのに、
みるみる映画に引きこまれていきます。
とにかく凄いエネルギーで、見てて
疲れました。
ちょっとは息をする暇が、ほしかった。
使われている曲は、古今東西の名曲を
ひたすら並べているのですが、
なかなか選曲のセンスの良さが目立ちます。
私のお勧めは、エルトン・ジョンの
「Your Song(君の歌は僕の歌)」なんですが。
にしても、ラフマンにかかれば、
ニコールもユアンも、いろんなことをやらされて、
本当に俳優って、たいへんですね。
ただ難点を言えば、前半飛ばしすぎた割には、
真中の話のもたつきが、気になります。
もっと真中はシンプルな構成にして、
その分、はじめの1時間を、もっとじっくりと
一つ一つの曲を聴かせても、
良かったんじゃあないかと思いますが。
でも、ラストは最高ですね。
8月
8月も何か知らんけど、忙しいです。
映画にあまり行けない。残念!
- 『プッシーキャッツ(原題)Josie and the Pussycats』
女優と言うよりは、ヤング・アイドルのレイチェル・リー・クック
主演の映画。
まあ、彼女はいちおう『シーズ・オール・ザット』の
ような映画には出ていますし、
日本のテレビ・コマーシャルにも出ていますが、
まあ、はっきり言って「彼女だれ?」という感じですね。
でまあ、本作は、彼女を主演にして、架空の
女性ロック・バンド、プシーキャッツの活躍と言うか
ドタバタと言うか、まあそれなりに、楽しめました。
(しかし信じられないことに、日本ではこの映画の
上映を願うホームページがあるんですよお。
それほど、面白くなかったけどなあ。)
しかし、ロック・バンドの映画なんだから、
演奏シーンはそれなりに作ってもらわないと、
しらけますが。
まあ、ドラムの子はまあまあとして、肝心の
レイチェルがギターを弾くのが映るのは、
単純なリズムを刻むところか、はでに、
ビヤー−−ン、と音を出すところだけと言うのは情けない。
が、ベースにいたっては、まるで手が動いていない。
(もっとも、昔、日本のTM某というバンドがテレビに出ていたときには、
リーダーのKTのショルダー・キーボードは、手を動かさずに
音が鳴るという不思議技。(つまり、格好だけ。)
それもクラフト・ワークのように、自動演奏を主体とする
場面でなく、ソロのところなんだから、いやになっちゃうけど。)
そんなわけで、映画にはあまりのめりこめずに、
「おー、ビートルズの曲を編曲している」とか、
「このTシャツは、レッド・ツェッペリンの4枚目のアルバムの
表紙に映っている、壁にかかっている写真ではないか」とか、
変なところで、つっこんで見ていました。
ところで、映画とは関係無いんですが、
私がロック・コンサートに行かなくなった理由を、
ここでちょっと述べてみたいです。
思えば70年代は、ロックの黄金期でした。
イエス、レッド・ツェッペリン、ELP、キング・クリムゾン、
(60年代だけど)クリーム、ディープ・パープル、
Tレックス、デビッド・ボウイ、
それから遅れてクィーン、カンサス、ジェネシス
(デビューは古いが、人気が出るのは後)、
ちょっと思い出しただけでも、本当に個性豊かな
ロックバンドが数多くあって、中学生高校生の私は、
ほんとうに幸せでした。
でも、だんだんロック・コンサートが、みんなそろって
同じ踊りを踊る盆踊り状態
(これが何がいけないんだ、と思う人もいるかと
思いますが、外国のロック・コンサートのビデオを見ても
わかるように、みな好き勝手に、かってにやっていて、
日本のYEのように、そろって同じタオルを同じように
振るのは、やはり変だと思います)になっていき、
私はロック・コンサートに、行かなくなりました。
これの原因はいろいろ諸説あるのですが、この時代に
高校生のディスコへの出入りが厳しくなって、ディスコを
溢れた高校生がロック・コンサートに来て、
踊るようになったというのが、定説らしい。
それで、私が最後に行ったのは、大学4年生のとき、
キング・クリムゾンのコンサート。
時代もロックにとっては最悪の80年代に入り、
あっちこっちのコンサ−トで、そろって踊る光景が
見られるようになりました。
キング・クリムゾンのリーダー、ロバート・フィリップは
職人肌のギタリストで、もちろん演奏中観客が
踊るなんて許せない人で、
そのコンサートは手拍子禁止、足踏み禁止、立ち上るの禁止という、
異常な雰囲気の中、行われました。
いまの若い人にこんなことを言っても、
信じてもらえないかもしれないのですが、
本当にこういうじっくり演奏を聴くだけの
ロック・コンサートもあったのです。
でまあ、良く考えてみれば、上手い演奏を聴きたいのであれば、
ジャズやクラシックへ行く方が良い演奏にありつける
確率も高そうで、
私のロックへの興味も、いっぺんに消えてしまったわけです。
いま家で聴くCDも、70年代のブリテッシュ・ロックのみ。
時々教え子が、最近のロックの曲を持ってくるのですが、
どれも昔の曲の焼き直しに聞こえる
(というか、本当にどれも、焼き直しなんだが)ので、
つまらないです。
逆にそいつらに、昔のELPのカリフォルニア・ジャムの
ビデオ(グランド・ピアノが、空中で演奏中に
縦に大回転するんですけど、実際見ないと、
意味がわからないだろうなあ。
これも後にボン・ジョビがパクッてました)なんかを見せると、
昔のロックのファンになってくれたりします。
- 『ハートブレイカー(原題)Heartbreakers』
シガニー・ウィバーとジェニファー・ラブ・ヒューイットが
結婚詐欺師の親娘の役で出ているのだが、
それにレイ・リオッタやらジーン・ハックマンやら、
なにやらわけ有りの役者がそろってます。
みな、そうとう達者な役者で、内容も
そうとうなブラックなラブ・コメディーなんだけど、
私の趣味では、もっとブラックでも良いです。
- 『Planet of the Apes/猿の惑星
(原題)Planet of the Apes』
これは完全なティム・バートンの映画である。
まあ原作があの有名な30年前の「猿の惑星」
(以後『オリジナル猿の惑星』と書く)なんだけど、
もう、何から何までティム・バートン的な
世界に彩られています。
ちなみに、私は『オリジナル猿の惑星』は、
あまり評価していないのです。
あの当時は、『オリジナル猿の惑星』の方が、
同じ頃に発表された『2001年宇宙の旅』より
はるかに人気が有って、その後、続編も
たくさん作られたのですが、
30年たって見て、どちらが優れた映画かは、
明らかでしょう。
さて、本作の主役は『ブギー・ナイト』で、
巨大な???を持つ
ポルノ俳優の役が印象的だった
マーク・ウォールバーグ
(ちなみに、この映画のキャッチフレーズは、
「誰にでも一つは取り柄が有る」でした)。
かれは、今まで、顔が地味だったために、
『ビッグ・ヒット』とか、どうも役に恵まれて
いなかったんですが、この映画で大きく
ブレイクできるかどうか、というところでしょう。
ティム・ロスは、いかにも猿顔でがんばっています。
かれは、どれも同じような演技に見えて、
どれも同じ演技は無い、なかなかの芸達者なんですが、
今回は『孤独の絆』の演技をもっと拡大したような演技で、
なかなか良かったです。
それにしても、皆さん顔の筋肉が良く動きますね。
ヘレナ・ボナム・カーターは、もともとは
(私の大好きな)『眺めの良い部屋』とか
『ハワーズ・エンド』などの文芸物に出ていて、
このままなら単なる美人女優で終わるところだったんですが、
その後、『バージン・フライト』では、
超ひねくれ身体障害者の役が良かったです。
その「ひねくれ」ぶりたるや、多いにケネス・
ブラナーを苦しめました。
また、『セブン』のデビッド・フィンチャー監督の
悪趣味がぷんぷん漂う『ファイト・クラブ』でも、
ヘレナはなかなかいかれた役をやっていて、
良かったです。
その彼女が、猿の役をやるのですから、
なかなか興味があります。
でまあ、映画の出来はどうだったか。
私はティム・バートンは大好きなんですが、
全体として、ちょっと中と半端な気がしました。
この監督は、まったくの荒唐無稽な話を
映画化することが多いですから、破滅型の監督と
思いきや、意外とどの映画も、映画全体としては
どれもまとまっていて、破綻することが無かったのに、
これはちょっと、ティム・バートンの
計算が、どこか狂っている気がします。
全体として、バランスが良くありません。
とくに、最後の10分は、全部削除するか、
もっと30分くらいかけてじっくり描くか、
どっちかにするべきだったでしょう。
ティム・バートンの映画のベスト3に入れるのは、
ちょっと難しいと思います。
(ベスト5には、ぎりぎりかな。)
そんなわけで、ティム・バートンの
過去の映画を振り返ってみます。
- 『シザース・ハンド』
私はこの映画、大好きです。
当時、無名だったジョニー・デップとウィノア・ライダーという
実力派俳優を起用したのもさすがです。
手がはさみと言う、全く荒唐無稽な話を、
妙なリアリティーで描いていて、これこそが
映画の醍醐味だと、私は思っています。
たとえば、映画の中に出てくる町並みは、
マッチ箱がならんだみたいで、いかにも
スタジオで撮影したように見えますが、
本当にそういう町を探してきて、
そこでロケで撮影しているのです。
このこだわりが好きです。
まだヒットする前のウィノアの妙な髪形も、
今となっては貴重です。
- 『バット・マン』
あまりに有名な映画なんで、何も書きませんが、
いかにもこの監督のダークな映像が、
バットマンの新しい世界を作りました。
- 『ジャイアント・ピーチ』
ちょっと、私は勘弁して欲しかった。
話は好きなんだが。
でも、こういう映画も撮っているのですね。
- 『ビンセント』
ティム・バートンが、自分の過去を描いた
短編アニメ映画。
この暗さが好きです。
- 『マーズ・アタック』
大好き。
これは本当にティム・バートン的映画ですね。
- 『スリーピ・ホロウ』
主役のジョニー・デップのやっていることって、
良く考えたら変なんだけど、100年前の世界で
自分が一番進歩的と信じてやっている
このギャップが好きです。
この映画も、私はそうとう好きです。
- 『キャッツ&ドッグス(原題)Cats and Dods』
うーん、これは予想以上に面白かったです。
コンピュータ・グラフィックを用いて、実際の
犬や猫が人間のように演技するのですが、
ここまで出来るのなら、将来この技術を用いて
演技力不足の俳優を修正できるかなあ...
- 『ファイナル・ファンタジー
(原題)Final Fantasy: The Spitits within』
どうもこれも『トゥーム・レイダー』と同じく
テレビ・ゲームの映画化らしいのですが、
私はテレビ・ゲームは良く知らないのでわからないです。
この映画の売りは、すべての映像をコンピュータ・グラフィックで
やったことらしい。
とにかく、あまりに精巧に出来すぎていて、
はじめの試作品では実写に見えてしまうので、
わざと精度を落として、コンピュータ・グラフィックに
見えるようにしたらしいです。
実際、そんなことを知らない私の妻は、
「今日の映画の俳優って、やけに表情に変化が
なかったわねえ?」「え!あれってコンピュータ・グラフィック
なんですねど」というわけで、映画が終わるまで、
そのことに気が付かなかったほどなんです。
まあ、それは極端な例なんですが、それほどきめの細かい映像は、
映画館で見る価値ありです。
ただしコンピュータ・グラフィックの俳優達の演技力は、
確かに良く出来ているし、
表情の的確さは、大した物で、
グィネス・パルトロウぐらいの演技力
(まあこれは、誉め言葉ではありませんが)は有るのですが、
まだまだですか。
なんで、グィネスは普通の映画で主役を張れるかと言うと、
それはやはり、脇をいろんな性格俳優が固めているからで、
彼らの極端な演技の調和で、映画というのは成り立っているのです。
そのあたりが、この映画はちょっと弱いかなあ。
それに
(小津安二郎の演出を除いて)人間の演技って、突発性の偶然が、
大きな要素を占めています。
だから、将来、すべての映画がコンピュータ・グラフィックで
作られるようになるとは、まったく思っていません。
ただまあ、出来の悪いSF映画や、質の悪いプリントを
見せられると、こんなのは全部コンピュータ・グラフィックで
やったほうがまし、という気にはなります。
ま、とにかく、今の技術でこれくらいは出来ると言う
見本みたいな映画ですね。
- 『ジュラシック・パーク3(原題)Jurassic Park Ⅲ』
どんなごちそうも、3回も同じ物を食べさせられたら、
飽きるよなあ。
たしかに、コンピュータ・グラフィックを用いて
どのように恐竜を見せるか、という技術は前作2つで
完成しているので、あとはそれをどのように、
人を怖がらせるか、ということなんだろうけど、
それにしても飽きた。
- 『(原題)Rush Hour 2
(予想日本語題名)ラッシュ・アワー2』
前作の『ラッシュ・アワー』は、ジャッキー・チェンが
ハリウッドに進出してどうかな、という映画だったんですが、
ジャッキーのファンの僕としては、きわめて遺憾な映画だったです。
とにかくジャッキーの良さがことごとく削げ落とされ、
クリス・タッカーの灰汁(あく)の強さだけが目立つ、
醜悪な映画になっていまして、ジャッキーの映画の中でも、
下から数えたほうが良いような映画でした。
ジャッキーと言えば、やはり「本当に痛そう」なアクションでしょう。
このコンピュータ・グラフィック全盛時代に、
本当にヘリコプターから氷の湖に飛び込んでしまう。
ハリウッドでこういったアクション映画は、
(私の大好きな)『クリフ・ハンガー』以降、作られていませんから、
ジャッキーを受け入れるハリウッド側としても、
どうしたら良いのかわからなかったのが前作だと
思うのですが、
それにしてもある意味で正統派アクション俳優のジャッキーが、
際物クリフと組まされるのですから、
もうすぐ大物俳優になろうというジャッキーに、ハリウッドも
ずいぶんなあつかいだなあ、というのが
前作の私の感想です。
だから、まさかこの映画に『2』は無いだろうと思っていたのですが、
いちおうジャッキーの偉大な力で、それなりにヒットしたので、
『2』が出来てしまったようです。
そんなわけで、まったく期待しないで見に行ったのですが、
期待しないで見に行くと、それなりに面白い映画ですね。
前作で、お互いの文化をお互いが演じ合うおかしさを、
監督は演出したかった
(ジャッキーが黒人音楽にリズムをあわせ、クリスがカンフーをする)
んだと思いますが、監督の力量不足でそれが中と半端に未消化で、
かえってお互いの良さを打ち消し合うようなことになった
場面がだいぶあったので、今回はあまり異文化交流に
力を入れずに、お互いの良さを出すだけにしているのが
良いと思います。
それと、脇を久しぶりのジョン・ローンと、
チャン・イーモウ監督の(私の大好きな)『初恋の来た道』や
アン・リー監督の『グリーン・デスティニー』でハリウッドにも
認知された今が旬のチャン・ツィイーも、
かわいかったです。
7月
7月は何か知らんけど、とにかく忙しくて、
映画にあまり行けない。残念!
- 『(原題)The Terrorist
(予想日本語題名)テロリスト』
インド映画。
独立運動盛んなスリランカで、テロのために
人間爆弾を志願した少女の話ですが、
はっきりいってこの映画、レベルが大変高いです。
実に映画らしい映画で、本当に優れた映画です。
映像に出来不出来のむらは有るものの、自然の
描き方はたいそう美しいし、音楽もなかなか良い
(が機材が悪すぎて、あまりにひどい音なのは
もったいないが。)
近年、インド映画と言えば『ムトゥー、踊るマハラジャ』
のような娯楽映画が大脚光をあびていますが、
なにせ年間ハリウッドの2倍以上(700本以上)
の数を撮っている映画大国ですから、当然そのなかには
すぐれた映画も有るわけです。
私が思うに、すぐれた芸術映画(この言い方は好きでは
ないのですが)は、数多くの娯楽映画が作れる土壌があって、
はじめて可能だと思うわけですが、どうも昔の
日本映画の関係者は、勘違いしていたようです。
日本映画が本当に優れた芸術映画を作っていた
昭和20〜30年代と言うのは、数多くの娯楽映画が
作られ、その中で腕を磨いた監督達やスタッフが、
ともに日本映画の黄金期の名作映画を
作っていったわけです。
ところが、日本映画は斜陽になって映画の総数は
減ったのに、(黒澤や小津以外の)
大御所監督達は芸術映画を作りたがった。
しかし、そう言ったものの中に、優れた映画が
少なかったために、観客の映画館離れに加速をつけることとなり、
日本映画は衰退していったわけです。
(私の考えでは、娯楽映画10本に対し、芸術映画1本で
たくさんです。)
ところで世間の評価はともかくとして、今の日本映画は
(北野武以外にも)
大変優れた映画をたくさん作っているように私は思うわけです。
それで興味深いのは、中原俊監督などのように
AV出身の優れた映像作家や、
「SF-サムライ・フィクション」の監督や
「鮫肌男と桃尻女」の監督や
「ワンダフル・ライフ」の監督のように、
コマーシャル出身の映像作家が大活躍していることです。
つまり日本では、大衆文化としての映画は一度崩壊したのですが、
AVやコマーシャルの世界が、本来なら映画に行く人材を育成し、
今の日本の映画を支えているわけです。
一般的に、世の中、優れた芸術が生まれる背景には、
多くの一般大衆文化があると思うわけです。
フェルメールの優れた絵画が生まれる背景には、
当時オランダで、多くの豪商が家に絵画を飾る習慣があり、
多くの画家が食っていける状況があったわけです。
日本の漫画がすごいのも、ものすごい出版点数があり、
その中に、とてつもなく変な漫画も生き残れる
背景があるからです。
とかく批判をあびるハリウッド映画ですが、
あれだけ資本と人的エネルギーが集まれば、
その中で、芸術性の高い映画も生まれる余地が
生まれます。
多くのインド娯楽映画が多くの人材を育て、
その中から、このように優れた映画も生まれるわけです。
- 『(原題)Lara Croft-Tomb Raider
(予想日本語題名)トゥーム・レイダー』
たぶんテレビ・ゲームのトゥーム・レイダーの
映画版なんだろうけど、良く知らない。
『17歳のカルテ』でアカデミー助演女優賞をとり、
『60ミニッツ』ではのりのりだった今が旬の
アンジェリーナ・ジョリーが、今度は
だいたんなアクションに挑戦です。
父の残した謎のメッセージをもとに、
冒険に旅立つ話ですが、唇の分厚さを除けば、
こんどのジョリーはかっこ良い。本当に。
ま『ハンナプトラ2』よりは、だいぶ良い映画です。
- 『(原題)All the Pretty Horses
(予想日本語題名)すべてのかわいい馬』
あの『スリング・ブレード』のビリー・ボブ・ソーントンが
監督をしているカウボーイの映画ですが、とても
面白かった。
『スリング・ブレイド』はそうとう面白い映画で、
とてもお勧めな映画です。
長年、あの独特な風貌で、性格俳優としての地位を
築いてきたビリーが、自分で主演、脚本、監督をこなし、
自分のために作った映画です。
そんな彼が、今度はカウボーイの映画の監督をやる。
カウボーイと言っても、ジョン・ウェインの西部劇ではなく、
本当のカウボーイの生活が、丹念に描かれていて、
それだけでも興味深いです。
主演のマット・ディモンとかも良かったですが、
『サルサ』いらい『キャプテン・コネーリのマンドリン』とか
『ブロウ』とか、本当に今が旬のペネロープ・クルーズも
良かったです。
ところで原題、おお〜〜〜、「the + 複数形」では
ないですか。
文法の本では見たこと有りますが、なかなか
実物にお目にかかることは、無かったです。
6月
- 『(原題)the Tailor of Panama
(予想日本語題名)パナマの仕立て屋』
ピアース・ブロスナム主演のスパイ映画。
ピアースといえば、なんと言ってもジェームス・ボンド役
(というより、それ以前の彼が、どんな映画に出ていたのか
良く知らないのですが)
なんですが、こんどはなんと、007と同じ MI6 の
スパイです。
しかも適当に女にもてて、軽く仕事もこなすという、
同じようなキャラクターなんですが、
どこか微妙に違う、それが面白かったです。
映画自体は、画面から推察するにとっても面白いと
思えるのですが、いかんせん、まったく英語がわからなくって、
話の筋が良くわからなかったです。
一般に、アメリカ英語のほうが俗語が多くてわかりにくいと
言われていますが、
私が映画を見ている限り、アメリカよりイギリスのほうが、
映画で英語がわからないことが多いです。
まあ昔(18〜19世紀)、イギリス人はさんざんアメリカ人を、
「英語がなっていない」と馬鹿にしたわけです。
そんなわけで、アメリカ人は今でもイギリス・コンプレックスが
(無意識下で)強く残っていて、アメリカ英語には古い時代の
イギリス英語が強調されて残っているそうです。
だから意外と俗語が多いと言われるアメリカ英語の方が、
正しくって、わかりやすかったりするわけです。
ところがイギリス人にはそんなコンプレックスが無いから、
イギリス英語の方が進化も分化も方言も激しいわけです。
じっさい、北イングランドに住んでみたら、その方言は
凄まじいのですが、イギリス人自体は、これが
正しい英語だと思っているから、たちが悪いです。
ところで、題名の『パナマの仕立て屋』は何かの
暗示かと思ったら、本当に題名どおりの映画だったです。
- 『アモーレス・ぺロス(スペイン語原題)Amores Perros
(英語訳)Love's a Bitch』
英語訳をそのまま日本語に訳すると『愛は雌犬』とでも
なるのでしょうか。
メキシコ映画なので、スペイン語に英語の字幕が
付いていました。
犬が絡む3話からなる映画なんですが、
それらは密接に関係している話です。
まあ『パルプ・フィクション』のような映画です。
話自体は『パルプ〜』の方が面白いと思うんですが、
とにかくこの映画、興奮度がけた違い。
もうほんとうに、ドキドキしました。
凄く面白かった。
- 『(原題)One Night at MacCool's
(予想日本語題名)ある夜、マクールで』
とにかくハチャメチャな映画。
このブラックを、私は買いますね。
いままで、この人どこが良いの、って感じのリブ・タイラーが
とにかくハチャメチャにやってくれてまして、それがもう、
とても良いんです。
リブ・タイラーといえば、まあベルトリッチの『魅せられて』は
こんなもんだろうけど、『アルマゲドン』はなあ、
どうも好きになれません。
まあ『アルマゲドン』の場合は、彼女の父親の
スティーブン・タイラーがリーダのロック・バンド、
エアロ・スミスの曲が映画で使われているので出ていました、
って感じだもんナア。
表情って言ったって、例の上目使いのセクシー・ショットしか
ないし。
しかし、この映画のリブは違います。
はっきり言って、凄いです。
なんってったって、ただ洗車するだけで、ここまでやるなんて凄い。
もっと言えば、リブは偉い。
映画のストーリはとにかくブラックなんですが、予想を裏切りつづける
展開は、なかなか見事です。
最後も見事に、裏切られました。
とにかく、この映画で、リブ・タイラーが大きく成長するかも。
(無理か?)
- 『(原題)Tigerland
(予想日本語題名)タイガー・ランド 』
アメリカ海兵隊の訓練基地、タイガー・ランドの
初年兵の訓練をリアルに描いた映画。
監督のジョエル・シューマーカー(綴りはF1ドライバーの
シューマッハと同じ綴りなんですが、どう読むのでしょうか?)は、
前作スナッフ・ムービーを扱った映画『8mm』が
『セブン』の脚本家が書いた映画の割にはイマイチだったので、
本作はどうかと思ったのですが、
この監督もマンネリを脱却しつつあるような印象です。
なかなかドキュメンタリー・タッチの映像は、
見るものを引き付けるのですが、主役のコリン・ファーレンが
少し弱い感じもします。
まあでも、ドキュメンタリー・タッチだから、
これくらいの演技のほうが、良いのかなあ...
海兵隊の訓練基地と言うとキューブリックの
『フル・メタル・ジャケット』を思い出します。
あれはカルト宗教のように、完全に初年兵達が
洗脳されていく狂気を描いた映画です。
軍隊の訓練と言えば、どこでも厳しいものですが、
その中でも、なぜ海兵隊が厳しいかと言えば、
彼らは上陸作戦のために作られた軍隊だからです。
たいていどこの国の軍隊でも、陸海空から構成されますが、
上陸作戦のための軍隊が独立しているのは、
たぶんアメリカぐらいなものでしょう。
映画の『プライベート・ライアン』(イギリスでは、
ノルマンジー上陸作戦記念日に、さかんに上映されていた)を
見てもわかるように、もともと上陸作戦とは、
実に割に合わない作戦なのです。
上陸作戦は、守るほうは鉄壁の守りに対して、
責めるほうは上陸するまでは、良いように狙い撃ちされます。
本当にたまったものじゃあ、ありません。
これが成功するためには、圧倒的な戦力差と、
兵隊の異常なまでの精神力の強さが要求されるわけですが、
そんなもの、簡単に身につくものじゃあ有りません。
そんなわけで、はじめからカルト教団のように
新兵を洗脳するような軍隊が必要だったわけで、
それで海兵隊が作られたわけです。
だから『フル・メタル・ジャケット』で
描かれているのは、まあ予想通りだったわけです。
それに比べると、この映画は、まあややその辺りが、
物足りないといえば物足りない。
でもなかなか、最後の所は見せましたね。
それにかれらは、これからベトナムに送りこまれ、
海兵隊なもんで、実に割に合わない危険な作戦に
従事するわけで、
確率的にもたいてい死ぬわけだから、
なにかやるせないですね。
- 『(日本語題名)パール・ハーバー
(原題)Pearl Harbor 』
製作ジェリー・ブラッカイマー、監督マイケル・ベイの
黄金コンビの製作なんだが、それよりもこの二人、
娯楽映画の王道を行くはずなざのに、なぜに今
『パール・ハーバー』なの?という疑問から、
見に行きました。
ブラッカーマイヤーは、古くは『フラッシュ・ダンス』や
『トップ・ガン』をヒットさせたことが有る製作者で、
本当に人を夢中にさせることにかけては超一流の人です。
そして新人監督を発掘する能力もすごく、最近でも
『60ミニッツ』の
ドミニク・セナなんかは、彼に発掘されたわけです。
本映画の監督マイケル・ベイも、ブラッカイマーに発掘され
『バッド・ボーイズ』(本当に面白かった)で見事に
デビューしたわけです。
そして次の『ザ・ロック』では、ニコラス・ケージを
アナログ・レコード・マニア
(このこだわりが好きです)の刑事役でショーン・
コネリーと組ませ、見事に成功しました。
ところが次の『アルマゲドン』は、確かに面白かったんですが、
「ちょっと違うんじゃない」という違和感が
残りました。
私としては、こんな大風呂敷を広げた映画ではなく、
もっと娯楽映画に徹するのがマイケル・ベイじゃあないか、
と思っていたのです。
そして本映画。
ブラッカイマーもマイケル・ベイも、政治的論争に
巻き込まれるのを恐れ、早くから「これは戦争映画ではなく、
大ロマンス映画なんだ」と宣伝してきたのですが、
これこそが私の最大の疑問点。
ロマンスだ−−−?
マイケル・ベイにロマンス映画が撮れるの?
そして映画を見たわけです。
確かに戦闘シーンは見事でした。
これこそがマイケル・ベイの特徴でして、
実に美しいシーンに仕上がっています。
これほど空を飛ぶことを美しく描いた映画は、
それほど無いと思います。
この美しいシーンを見るだけでも、
この映画に行く価値は有ります。
ところが、肝心のロマンスが、さっぱりなのです。
そもそもが、まず脚本自体に無理が有る様に思います。
黒沢明も言っている様に、良い脚本からしか
良い映画は生まれません。
だからハリウッドでは、脚本家は俳優に次いで
高給取りなんです。
脚本が悪いから映画の話もまとまりが無い。
とくに最後のまとまりの悪さは、ひどいものです。
この内容で3時間は、長すぎます。
娯楽映画の王道を行く二人なら、
つまらんシーンは思いっきり削って、
せいぜい2時間20分くらいにすべきだったです。
それとロマンスが盛り上がらないのは、
やはり俳優に力が無いからだと思います。
ベン・アフレックスは、今のところはやはり、
脇役でこそ力が発揮される俳優です。
ケート・ベッキンセールは確かにオーラは出掛かっていますが、
『タイタニック』のケイト・ウィンスレットのような
わけには行きません。
ましてジョシュ・ハートネットは、まだまだ未開の
俳優です。
ようするに皆、中途半端なのです。
それでまあ、本当は政治的な話はしたくなく、
純粋に映画の話だけで終わらしたかったのですが、
どうも避けて通れそうに無いので、
やりましょうか。
確かに最近のハリウッド映画は
日本のことを良く調べてあるので、昔の映画のような
基本的間違いは減りました。
しかし映画の中でどうしても気になる点が2つあります。
まず一つ目は、日本人に名前が無いことです。
ただの1つも出てきません。
本当は彼らは山本君だったり南雲君だったり
するわけですが、出てこないのです。
逆にこれがアメリカ人だと、どんな小さな役にも
ベティ−とかジャックとか、必ず名前があるのです。
これじゃあ、日本人はどれも同じ顔をして無個性で
笑わない奴らという昔ながらのステレオタイプを
拡大しただけです。
次に気になった点は、アメリカが爆撃するのが、
軍事工場だけになっている点です。
これが日本映画だと、爆撃によって逃げ惑う
女子供というシーンが必ず出てきますが。
日本人だったら誰でも知っていることですが、
アメリカ軍は軍関係だけでなく、
東京、名古屋、神戸その他の一般市民の住む
市街地を爆撃したわけです。
広島、長崎の原爆は言うまでも有りませんが、
一般市街地の爆撃は、国際法上違法となる
可能性があります。
実際、日本が重慶を爆撃したとき、
アメリカは日本をひどく非難しました。
まあアメリカは、世界で正しいのは自分だけと
信じている変な国なので、本当はこういった
おかしな国とは付き合わないほうが良いんでしょうけど、
そういうわけにもいかないし...
あと映画とは関係有りませんが、
日本の宣戦布告が遅れたのは、日本大使館の
基本的なミスです。
信じられない話ですが、真珠湾の有った日が日曜日で、
その前日の土曜日に宴会をやっていて、
日曜日に日本から極秘電文が届いたのに気が付くのに
遅れたという、ていたらく。
これで海軍が練りに練った作戦も、半分は価値を
失ったわけです。
しかもひどいのは、日本の官僚は昔からお互いのミスを
かばいあう(日本人的な美しい)伝統があって、
誰一人として処罰を受ける人はいませんでした。
(はんたいに、多くのユダヤ人を救った
杉原ちうねさんなんかは、あっさりと命令違反で
戦後に首になっていて、イスラエルの働きかけで、
やっと最近、名誉復活したしだいです。)
外国では戦争の勝敗の半分は外交で決まる、というのが
常識ですが、日本では昔から、しっかり外務省が足を
引っ張ってくれてるわけです。
さいきんいかに外交官がひどいか、という本が
たくさん出ていますが、それは戦前からの伝統だったわけです。
もっともルーズベルトも、日本の暗号は
解いていましたから、奇襲攻撃のことは
知っていました。
当時のアメリカの国民世論は戦争反対なので、
ルーズベルトは日本の真珠湾攻撃を、
国民世論を覆すために使おうと、
旧式の戦艦ばかり真珠湾に並べておいた、
と私は聞いています。
ところが、実際始まってみると、予想以上に日本軍は優秀で、
大変な戦火になってしまったわけです。
(しかし、純粋に戦略上は、南雲中将が
第3波攻撃をやらなかったのは大失敗で、
ほんとうはもっとやるべきだった、という説があります。)
まあしかし、日本の外交官の失敗で、
宣戦布告無き戦争となってしまったので、
ルーズベルトは日本は卑怯者だと宣伝して、
世論は戦争賛成になってしまうのです。
(しかし国際法上、これが違反かどうかは意見の分かれる
ところで、連合国側も、宣戦布告無き戦争をはじめた
例は、あるそうです。)
それにしても、この映画大丈夫、とおもうのは、
過去にアメリカが負ける映画は、大失敗しているのです。
(例『トラ・トラ・トラ』『遠すぎた橋』。
アメリカ人って、徹底的に負けるのが嫌いなんですね。)
まあ、そのジンクスを跳ね返すだけの力がこの映画にあるか、
私は疑問ですが。
5月
- 『(日本語題名)ガールファイト
(原題)Girlfight』
カリン・クサマという名前の監督デビュー作品なので、
ひょっとしたら日系で草間花梨などという名前では
ないかと、勝手に推測しているのですが、
どうなんでしょうねえ。
サンダンス映画祭という、新人の発掘には定評の有る
映画祭で話題になった映画なので行きたかったのですが、
イギリスではやっているところがなかなか見つからなくて、
やっと見に行けました。
まあそれにしても、戦う女はかっこいいナア。
10代の女の子がボクシングを通じて成長する
姿を描いた映画ですが、はじめは本当にブスな
女の子が、みるみるカッコ良くなっていくのです。
なかなか見ごたえがある映画でした。
- 『(日本語題名)トラフィック
(原題)Traffic』
スティーブン・ソダーバーグ監督で、今年アカデミー賞を
3つ取った映画なんで、どうしても見たかったのですが、
イギリスじゃあ、こういった麻薬を扱った映画は、
夜中の11時くらいしか映画館
(小さな映画館は1つのスクリーンで、いろんな映画を、時間を変えて、
上映しているのです)でやっていないので、
なかなか見に行けなかったのですが、
やっと映画の博物館で昼の2時からやっていたので、
見に行ったのです。
まあソダーバーグという人は、『セックスと嘘とビデオテープ』以後、
ずーーーーーと寝てたんじゃあないか、と言う人
(実力はある人なんで、小さな仕事はやっていたらしい)なんですが、
いきなり『エリン・ブロコビッチ』で復活してしまったわけです。
ただ『エリン〜』はなんと言ってもジュリア・ロバーツの実力が
良かったわけですが、本作はいかにも彼らしいシリアスな映像で、
素晴らしかったです。
この映画の元ネタは、イギリスの6話からなるテレビ・ドラマ
らしいです。
アメリカとメキシコで繰り広げられる麻薬にまつわる
さまざまなドラマを、ソダーバーグらしいスリリングな映像で、
実にシャープに処理しています。
そのあたりが、ほんとうに上手いです。
いちおう、マイケル・ダグラス、キャサリン・ゼータ・
ジョ−ンズあたりのビッグ・ネームが主人公と
言うことに成るのでしょうけれども、
色々な話が並列しているので、すべての人間が
脇役に徹しているのが良いです。
その中でも、『スナッチ』で4本指の男が
印象的なベニチオ・デル・トロが、
アカデミー助演賞を取ったのですが、
彼の演技はそれにふさわしいと思います。
こういった色々な話が並列していると、話が混乱するものですが、
ソダーバーグは映像や俳優の選び方で、実に上手く処理していまして、
なかなか鮮やかに物語をフィルムに語らせます。
この辺りも実にうまい。
なかなか見ごたえのある映画でした。
- 『(原題)The Mummy Return
(予想日本語題名)ハムナプトラ2』
『ハムナプトラ、失われた砂漠の都』の第2段なんですが、
やっぱり題名が、問題ですよねえ。
前作は『インディー・ジョーンズ』のような映画かと
思いきや、なんとミイラがウジャウジャの映画。
それで原題が『The Mummy』つまりミイラそのものの
ことだったわけです。
今回なんか、とくにハムナプトラはあまり出てこないので、
やっぱり前の題名は良くないんじゃあないかなあ。
今回、圧倒的なのは、特殊撮影を用いて
大人数のスペクタクル・シーンを再現したことでしょう。
昔は人件費が安かったので、スペクタクル映画は
比較的簡単に出来ましたが、その後は人件費の
高沸で、ここ何十年も本格的なスペクタクルは
ありませんでした。
ところが特殊撮影の進歩で、比較的簡単に出来るようになって、
『グラディエータ』のような映画も可能となったわけです。
その延長線上にこの映画もあり、なかなか特殊撮影は
見ごたえあったのですが...
やっぱり『インディー...』と比べると、弱いンですよねえ。
俳優のブレンダ・フレイザーは『ジャングル・ジョー』の
イメージからは脱却できていないし、ハリソン・フォードほどの
良い男でもないし、レイチェル・ワイズも、
ちょっとイメージ違うし、
映画の演出もスティルバーグに勝てるわけ無いし。
そんなわけで『インディー...』ほど期待せずに見に行けば、
そこそこ面白いかも。
最後に、イギリスで最近、サッチャー元首相が
この英語の題名の駄洒落で
「マミー・(イズ)・リターン」と講演で述べて大爆笑を
得てるシーンが良くテレビで流れる
(しかも「マミー」には、ミイラの意味と
母親の意味とかけてある親父ギャグ)のですが、
日本の政治家も、これくらいユーモアが欲しい感じも
しますが...
- 『ブロウ(原題)Blow』
(私の大好きな監督の)ロマン・ポランスキーの
『ナインス・ゲート』や
『スリーピー・ホロウ』の演技も印象深かったジョニー・デップが、
麻薬の運び屋の半生を演じた映画。
『サルサ』や>『(原題)Captain Corelli's Mandolin、
(予想日本語題名)キャプテン・コレーリのマンドリン』の
演技も印象深いペネロープ・クルーズが、
今度は感情剥き出しの演技で、がんばっています。
なかなか見ごたえはありました。
それにしても、ジョニー・デップと兄弟を演じても
おかしくないようなレイ・リオッタが、
まさか父親役とは...
- 『2001年:宇宙の旅、
(原題)2001:A Space Odyssey』
この映画がキューブリックの故郷であり、この映画が作られた
イギリスで見れるなんて、感慨深いものがありますね。
言わずと知れた、スタンリー・キューブリック監督、
アーサー・C・クラーク原作のSF映画の原点であり、
私の映画人生の原点でもあります。
そもそも私が映画が好きになったのは、小さい頃から
親に映画に連れて行かれて見に行っていたわけですが、
私の親は子供向けの映画には連れて行かず、
『ベンハー』『サウンド・オブ・ミュージック』
『マイ・フェア・レディー』なんていう
本格的な映画ばかり連れて行きました。
ディズニー映画でも『ファンタジア』のような、
本格的な映画にしか連れて行かなかったです。
ですから小学校のとき、普通の小学生が行くような
怪獣映画には、ほとんど行ったことがありません。
また小学生の私が、父といっしょにお風呂に入ると、
よくチャップリンの映画を話してくれたです。
私の父は僧侶と言う職業がらチャップリンの
ヒューマンな映画(『キッド』や『街の花』や
『モダンタイムズ』や『ライムライト』)
の話しかと思いきや、
『黄金狂時代』や『殺人狂時代』などの、思いっきり
ブラックな映画を小学生の私に良くしてくれました。
特に、革靴を食べるところや、殺すところのチャップリンの
表情なんかを、実に楽しげに話してくれたものです。
まあ今思えばちょっと変な親ですが、
その親のおかげで、現在の私があるわけです。
それで小学校5年生の時に母親に連れて行かれた映画が、
この映画なのです。
ヘラルド会館(ヘラルドという配給会社は、名古屋生まれで、
そのヘラルドが名古屋にヘラルド会館と言う
映画館のビルを持っている)の今は無き一番
大きな巨大スクリーンで見て、
大感動したのを覚えています。
その後、何回もリバイバルで来ますが、
あれほど大きなスクリーンで見る機会は無く、
残念に思っていたのですが、
このたびイギリスの Bradford にある映画の博物館で
上映しているので、見に行ってきました。
やっぱりニュー・プリントのフィルムに立派な音響設備、
席も良いし、上映に隅々まで気が使ってあって
気分が良いです。
上映まで場内は赤い照明でして、映画の中でかかる抽象的な音楽
が流れていて、気分が盛り上がったところで、一気に予告編無しに
上映が始まる演出はさすがです。
原作はキューブリックに依頼されてクラークが書き下ろした
ものですが、なにしろクラークの小説は説明が長すぎるので、
とてもすべては映画化できません。
そこでキューブリックは、話しの骨格だけを残して
削りに削った(他のキューブリックの映画『シャイニング』等も
そうですが)のですが、それがクラークには気に食わなくて、
二人は不仲なんだそうで。
原作では謎の黒い板は1:4:9という比率なんですが、
映画の中ではとてもその比率には見えなかったとか、
クラークの原作とキューブリックの解釈の間には、そもそも根本的な
ポリシーの違いと言うものがあるようにも思うのですが、
まあそう言った事を全く無視して映画を作るのは
(『シャイニング』や『フル・メタル・ジャケット』でも
そうですが)この監督の常でして、
全く原作を省みないでひたすらキューブリックの世界に
観衆を連れて行くのがキューブリックの良さでもあります。
まあでも、そういったことを考えると、当時、
漫画家の手塚治大先生のところにSFのデザインが依頼されたそうですが、
手塚治大先生は多忙を理由に断ったそうで、
それは正解だったかもしれません。
どうせキューブリックが、そのイメージを
ずたずたにするでしょうから。
それにしても、今更ながら、懐かしいシーンのオンパレードですね。
今は無きパン・アメリカンが宇宙を飛んでいるし、
BBCニュースって、昔はこんなんだったんですね。
今では特殊撮影の神様としてあがめられるダグラス・トランブルは
ですが、
この頃はカナダで教材用のビデオを作っていたのを
キューブリックに見出されて、この映画の製作に参加しました。
でもこの時は、まだキューブリックの下で、こき使われていたのですね。
そもそも、この時代にこの特殊撮影が、なぜ成功したかと言えば、
この時代は映像の合成が難しく、どうしても
ズレが生じたのですが、完全主義者のキューブリックは
とにかく完璧に重なるまで、繰り返し繰り返し撮影し、
そのため膨大な予算がかかったのでしてた。
今でなら、膨大な予算がかかったことを売り物に映画を
宣伝するでしょうけど(例『タイタニック』)、
キューブリックはそんな下卑た真似はしませんでした。
ちなみに、映像を重ねるときにずれなくする技術は、
あと10年くらい後の
『スター・ウォーズ』でコンピュータを用いるまで、
待たないといけないわけですから、いかに
この映画の映像が素晴らしいか、
推し量られます。
特殊技術の出来の良さは、この時代のほかのSF映画と比べても
抜群です。
(たぶん同じ年に発表された)『猿の惑星』
(もうすぐ『スリーピー・ホロウ』のティム・バートンが
『ブギー・ナイト』で巨大な???を持つ
ポルノ俳優の役をやったマーク・ウォールバーグを
主演に置いてリメークしますが)
は、その文化の解釈や、ものすごく(当時は)時間が
かかったメーキャップなどが話題となりましたが、
特殊撮影の技量では、かくだんの差があります。
またソ連映画の『惑星ソラリス』も、評価は高いですが、
いかんせん当時のソ連では予算が無さ過ぎで、
東京の首都高速を撮影したものを未来都市と言われても、
日本人にはチョッとねえ...
でまあ、ちょっと話は変わりますが、
この間、NEWS23 のつきし哲也さんの講演を聴きに行ったとき、
哲也さんも古い映画を現在見ると、がっかりすることがあるので、
あまり古い映画のことは言わないようにしている、
というようなことを言ってまして、
私もこれには同意権なんですが、
この『2001年:宇宙の旅』に関しては、
いま大きなスクリーンで間近に見ても、
その映像には一部の隙も無く、さすがキューブリックと、
感心させられます。
ところで、この映画がはじめて上映された頃には、
この映画は難解と、良く言われたと思いますが、
小学生の私が見て、何も難解では無かったです。
私をこの映画に連れていった母も、ちっともわからん、
と言っていました。
(しょっちゅう善悪が反転するゴジラ・シリーズの
方がはるかに難解、というより醜悪なストーリ
(もっとも初代ゴジラや『モスラ対ゴジラ』は
名作だと思いますが、しぇ−−−、するゴジラは
嫌いです)で、
その悪しき伝統が今の大森ゴジラに継承されているのは、
大変残念です。
まだストーリのすっきりとしたガメラ・シリーズの方が、
よっぽど好きです。)
たぶんこの映画が難解と言われた最大の原因は、
ストーリらしいストーリが無い、と言うことなんでしょうけれども、
それは映画とは、フィルムつなげてストーリーを語るもの、
という思い込みがあるからいけないのです。
はじめ映画がルミエール兄弟によって作られた頃は、
これで何を見せたら良いのか良くわからず、
迫り来る機関車や、特撮(と言っても、大した事ない
特撮ですが)で人の首が切られるシーンを
見せていました。
つまり見世物です。
そののち、映画に話を語らせるようになるのですが、
原点は見世物なのです。
だからこの映画も、話を見に行くと思わずに、
未知の領域を経験しに行く見世物と思えば、
何も難しいことは無いと思います。
私はどちらかと言うと、フェリーニ的な見世物の世界が大好きで、
音楽もクラシックのコンサートよりは、
去年ウィーンで話題の、大掛かりなセットを使った国立歌劇場の
モーツアルトの『魔笛』(ただこれは、あまりに大掛かり過ぎて、
それに見とれて音楽を鑑賞するのを忘れるきらいがありますが)
とかが好きなんです。
なぜ映画は映画館で見なければいけないかというと、
それは不便なところですが、暗く大きなスクリーンで
大音響で、家でビデオでは決して体験でいないことを
体験しに行くわけです。
特に映画館の中は暗いですから、
それだけ映画に集中できるわけです。
そんなわけで、この映画はちっとも難解ではないと
思いますよ。
あと、いろいろ書きたいこともありますが、ちょっと
きりがないので、とりあえずこれくらいにしておきます。
- 『(原題)The Dish、
(予想日本語題名)ザ・ディッシュ』
アポロ11号打ち上げに関する秘話を扱った
オーストラリア映画。
『ピアノ・レッスン』のサム・ニールが主演していますが、
いつものいらついた演技ではなく、なかなか良い味を
出しています。
ただ英語が良くわからなかったので、ちょっと退屈だった。
まあNASAも、宇宙船との連絡方法くらい、
もうちょっと色々な手段を用意すれば良いのに。
- 『スパイダー(原題)Along Came a Spider』
モーガン・フリーマン主演の刑事物。
プロデュースも彼自身がしているので、
彼が自分のために企画した映画ともいえる。
だから、脇をかためるモニカ・ポッターとか、
そんなに有名人が出ているわけじゃあないけれど、
実力者はそろえました。
なんと言っても監督がリー・タマホリ。
彼はニュージーランド出身で、デビュー作の
『ワンス・ウォーリア−ズ』はニュージーランドの
原住民(アボリニージ)の差別問題を扱った、
なかなかバイオレンスにあふれる映像の秀作で、
大好きな映画です。
それでハリウッドに招かれて『狼たちの街』を
撮るのですが、なかなかスタイリッシュな映像で
好きです。
次の『ヒマラヤ杉に降る雪』は工藤由紀ちゃんの
名演技(彼女はちゃんとオーディションを受けて
映画に出たわけで、どこかの有名人が顔でハリウッドの
怪獣映画にちょい役で出たのとは、わけが違います)も
良かったけれど、実に美しい雪のシーンで、
それも良かったです。
ただ、ハリウッドの人間(というかアメリカ人)と言うのは、
基本的にアジアのことに興味がなくって、この映画は
徹底的に無視されたのが残念です。
(逆にアメリカ人は、ものすごくイギリス・コンプレックスが
あって、イギリス映画はアカデミー賞に凄く有利と
言われている。)
そんなわけで、なかなか期待していた映画なんです。
ストーリは面白いし、モーガンの演技もそれなりに
がんばっています。
だけど、リー・タマホリは過去の映画ほど
スタイリッシュな映像じゃあないのが残念です。
- 『ブリジッド・ジョーンズの日記、
(原題)Bridget Jones Dairly』
私、レニー・ゼウェルガーという女優は、
どこか中途半端でいまいち大成しないなあ、と思っていたのですが、
この映画は彼女の魅力が爆発していますねえ。
いいですよお、とても良い。
競演のヒュー・グラントの魅力がぶっとぶほど、
彼女の魅力は良いです。
まあ内容は、ロンドンでくらす女の子ブリジッド・ジョーンズの
身近に起きた出来事を、レニーが等身大で演じているだけなんですが、
とにかく英語の台詞は良くわからないけど、笑えた。
しかし悔しいのは、イギリス人と同じ所で笑えないこと。
なんでそこがおもしろいの、ということがしばしば起こって、
とても悔しいですが、台詞で笑わす以外にも、
そうとう笑えます。
- 『コレリ大尉のマンドリン
(原題)Captain Corelli's Mandolin』
ニコラス・ケージ主演で、監督が
『恋に落ちたシェークスピア』のジョン・マデンの
映画ですが、ヒロインに『サルサ』でラテン顔が
なかなか良かったペネロープ・クルーズが
出ています。
第2次世界大戦中、ギリシャののどかな田舎は、
キャプテン・コネーリ(ケージ)率いるイタリア軍に占領され、
そこの村の娘とコネーリが恋におちいる、といった
話しなんですが、とにかく撮影がすばらしかったです。
なにしろ、字幕なしで映画を見ている(というか見るしかない)ため、
映像に集中できるので、日本で映画見ているよりも
前の方の席で見れるし、これはこれで、なかなか良い。
(『マレーナ』はイタリア語の映画を英語字幕で見たので、
字幕を見るのがいそがしくて、映像に集中できなかった。)
内容はのどかな田舎風景で、そこで展開されるのどかな
恋愛風景。
しかし一転、悲劇は訪れるのだが...
ニコラス・ケージの演技は、いかにもオペラが好きで
音楽が好きな陽気なイタリア人、ってところで、
今までの Hi な演技とは異なったなかなか良い男を
演じています。
ちなみに Captain というのは、海軍ではもともと船長の
ことで、そうとうえらい。
旧日本軍で佐官のことで、海軍大学を卒業すると
いきなり少佐で、小さいけれども船長になれるという、
そうとうなエリートなんです。
陸軍だと大尉、もう上は将しかいませんから、
やっぱりそうとう偉い。
だからコネーリはそうとう偉いんだけど、
そこはイタリア人、どこか軍人らしくない。
まあ私思うに、やっぱりイタリア人って、軍隊に
向いていないんじゃあないかなあ。
昔ビットリア・デ・シーカの『ひまわり』なんて映画が
あったけど、あれなんか、戦争に行くのがいやで、
マルチェロ・マストロヤンニが精神病のふりをするのだが、
奥さんとセックスをしているところがばれて、
前線送り。
ところが前線で行方不明。
奥さんのソフィア・ローレンが探しに行くと、
別の女と暮らしていた、という、徹底的に駄目な男を
マストロヤンニは演じていまして、
いまだにあの映画は、どこが名作なのかわからないのですが、
この映画でわかったことは、とにかくイタリア人は
戦争に向かないな、これは。
4月
- 『メキシカン、(原題)Mecican』
うーーん、ブラッド・ピットとジュリア・ロバーツですか。
ピットはもう、『ファイト・クラブ』や『スナッチ』で
ノリノリだし、ジュリアは長年のマンネリから『エリン
・ブロコビッチ』で見事に脱したし、
今が旬の2人が、恋人なんだが(別々に)メキシコに
行く話です。
それにしてもこの話、古い銃にまつわるロマンチック・コメディー、
と言うよりは、メキシコに行ってみたら、とんでもない
所だった、という話です。
『中国の鳥人』も、なかなか中国の描き方が凄かった
(しかも、中国に行ったことある人には、どこか
思い当たる節がある)けれども、
この『メキシカン』も凄いですねえ。
これ見てメキシコに行きたくなる人は、そうとうの
強人ですね。
まあ、『ファイト・クラブ』や『スナッチ』では
ぶっ飛んだ役だったブラッド・ピットも、
メキシコ人にはかないません。
- 『マレーナ、(原題)Marena』
あの『ニュー・シネマ・パラダイス』や
『海の上のピアニスト』のジョゼッペ・トレナトーレ監督の
新作です。
イギリスでは外国映画は英語に吹きかえられることが多いと
聞いていたのですが、私が見たのはイタリア語に英語の字幕が
つくものでした。
しかしトレナトーレ監督、上記2つは映画史上に残る名作だと
思いますが、(小津安二郎の『東京物語』のパクリじゃあ
ないかと思えるが、本人は否定している)『みんな元気』とか、
『明日を夢見て』とか、まあ良い映画なんだけど、
なにか1つ足りないような映画もあるので、本作も
あまり期待はしていなかったのですが、
すばらしい出来でした。
見事な演出です。
前半は主人公マレーナの無機質なまでの美しさが
強調されます。
よく昔は、この女優トイレも行かないんじゃあないか、
というような感じの美の持ち主がいましたが、
そういった類の美しさです。
ところが一転、後半は、人間の生々しい内面剥き出しの
演出に、前半のマレーナの無機質な美が、いっそう引き立ち、
運命の過酷さがより強調されます。
このあたりの演出が、ほんとうに上手い。
もちろんそれだけでなく、『ニュー・シネマ・パラダイス』に
見られるような、ユーモアを交えた過去の映画へのオマージュも、
なかなか見ごたえがあって、それだけでも
楽しい映画になっています。
この映画は、お勧めですね。
- 『(原題)Spy kids、(日本語名予想)スパイ・キッド』
う〜〜ん、子供向け映画だからなあ。
と、思っていたら、えーー、監督がロバート・ロドリゲスだって。
まさかあの、とっても肝い『デスペラート』のロバート・
ロドリゲスだなんて、何かの間違いじゃあないか、と思ったら、
主演はあの、アントニオ・バンデラスじゃあないか。
こりゃ〜〜、『デスペラート』の黄金コンビの復活じゃあ。
内容は題名どおり、子供のスパイの話なんだけど、
そこはロドリゲスが監督ですから、あくまでもラテンの
血が流れている。
とは言っても、『デスペラート』の調子でやったら、
それこそ15歳以下は見れない映画になってしまって、
子供映画なのに子供が来てくれないので、
そこはこれ、だいぶ棘は抜いてありますが、
それでもさすがロバート・ロドリゲスだけのことは
ありますね。
いやー、けっこう大人にもお勧めです。
- 『102』
実は私、あのダルメシアン模様が好きなんです。
いえいえ、別に犬を飼いたいわけではなく、
あの模様が単に好きなだけでして、
かつては自家用車をあの模様に塗り替えようか
(妻に猛反対され断念)と思ったほどなんです。
というような話はさておき、
まさかイギリスに来て2番目に見る映画がこれとは。
それにしても、イギリスの子供の映画館でのマナーの
悪いことと来たら、凄いですよお。
映画が終わったら、本当に映画館が、恐ろしく
汚くなっていた。
日本にいたとき、英語の勉強には「セサミ・ストリート」が
良いといわれて、見てみたが、英語って子供向けだから
わかると言うものでも無いんですねえ。
今週はイースター・ホリディーで、日本の春休みみたいな
ものだから、毎朝テレビで『ポケモン』と『Xメン』を
見ていましたが、さっぱり英語がわからない。
まだ、クイズやニュース番組のほうが、少しはわかることも
あります。
しかしイギリスに来て、相手がどんな英語をしゃべっているかは
サッパリわからないのですが、相手が何を言いたいかは、
だいたいは不思議とわかるので、いまのところ
英語で困ったことは、実はほとんど無いのです。
そんなわけで、映画もストーリは何とかわかるので、
今のところ何とか見れています。
それで本作である。
実は私は、もとの『101匹わんちゃん大行進』
(以下『アニメ版101』と書く)の大ファンなんです。
私が小学生の時見たディズニーの映画で、
好きな3つの映画に入ります。
(あとの2つは『(オリジナル)ファンタジア』と
『白雪姫』)
『アニメ版101』は、他のディズニー映画と異なり、
本当におしゃれな出来に成っていまして、
ロンドンの渋い魅力が、いかんなく描かれていると思います。
だいたい主人公が作曲家で、ダルメシアンを飼っていて、
いかにも“ロンドン”というような家に住んでいる
その雰囲気が、良く描かれていると思います。
それに比べると、前作の『実写版101』は
主人公の夫は今風にコンピュータ・プログラマーだし、
映像はちっともおしゃれでなく、イギリスの
雰囲気がまったく出ていなく、単なる子供向け映画に。
それに奥さんの役をやっていたのは、俳優の名前が
出てこないのですが、前作は『チャタレー婦人の恋』で
チャタレー婦人をやっていた肉感的な人で、じつにやぼったい
顔です。
これもちっとも、おしゃれでない。
しかし、『実写版101』で唯一特筆すべきは、
グレン・クローズ演じるクルエラ・デ・ビル婦人で、
これはロビン・ウィリアムズ演じる『実写版ポパイ』
(本当にこういう映画があったのです。ちなみに
監督があのロバート・アルトマンで、オリーブ役が
キューブリックの『シャイニング』で、やせ細った
奥さんをやっていた人で、私の大好きな映画です)と
比せられる快演技でした。
そんなわけで、今回は前作以上にグレン・クローズに
活躍してもらう、という企画は買います。
しかも、その脇を固めるのは、フランスが生んだ名優
ジェラール・ド・バルジューなんですよ。
凄いですねえ。
しかしながらいかんせん、102匹目のオットちゃんには
ダルメシアン模様が無い。
うーーん、やっぱりあの模様だよなあ。
そんなわけで、これはオットちゃんのせいではないのですが、
前作よりはイマイチだと思います。
ラストのシーンも、私は前作のほうが好きだし。
- 『スターリングラード、(原題)Enemy at the Gates』
まさかイギリスに来て初めて見る映画が、
これになるとは。
詳しいことはここ
を見てもらうことにして、
車で30分くらい行った、すぐ隣の Bradford という市に、
とっても立派な映画の博物館
(The National Museum of Photography, Film & Television)
があって、そこでやっていたので、見に行ってきました。
それにしても、フランス人監督のジャン・ジャック・アノーが、
アメリカ映画で、イギリス人俳優を使い、
ドイツとソビエトの戦いを描くとは、
(またそれをイギリスで英語で見てるなんて)、
なんてインターナショナルな映画なんでしょうか。
ジャン・ジャック・アノーは大好きな監督です。
それまで007のイメージが強くて時代劇では使いづらかった
ショーン・コネリーと、まったくの新人だった
クリスチャン・スレーター
(スレーターは『ベリー・バッド・ウェディング』の
ような映画では無く時代劇のほうが、ぜったい似合ってる)を起用して、
難解過ぎるので映画化は無理と言われたウンベルト・エーコ原作の
『薔薇の名前』を映画化して大ヒットさせた名監督ですが、
本作でも、その重厚な映像は、見逃せません。
話は第2時世界大戦のドイツとソビエトの史上名高い
スターリングラードの戦い。
出だしから『プライベート・ライアン』をほうふつさせるような
激しい戦い。
その映像が実に見事です。
しかし話は戦争スペクタクルが中心ではなく
(と言っても、ときどき入るスペクタクル・シーンは、
見事ですが)、
ジュード・ロウ扮するロシア人狙撃兵と、
エド・ハリス扮するドイツのエリート狙撃兵の
手に汗握る一騎打ちの戦いなのです。
この駆け引きが本当に見事です。
もうはらはらドキドキ。
最後まで息する暇が本当に無いほどです。
もうゴルゴ13も真っ青です。
今まででも『プライベート・ライアン』とか、
『西部戦線異常無し』の一番美しいシーンとかで、
狙撃兵のエピソードが出てくることは有りましたが、
これほど狙撃兵が中心に描かれた映画は無かったと思います。
ところで映画とはあまり関係有りませんが、
スターリングラードの戦いについて、少し説明しておきましょう。
第1次世界大戦で負けたドイツは、ベルサイユ条約で
がんじがらめにされて、大きな兵力を
持つことが出来なかったのですが、ヒットラーは
ソビエトのスターリンと密約を結び、
ひそかにソビエトで軍拡を秘密裏に行い、
スターリンもドイツの力を借りて、ソビエトの軍隊を
近代化したわけです。
ヒットラーとスターリンは、ポーランドを勝手に分割するとか、
いろいろ密約を結んでいたので、ドイツは
第2時世界大戦のはじめは、西部戦線にだけ
力を注げば良かったのです。
ところがある日、ヒットラーは気が変わり、
いきなりソビエトに進行をはじめます。
ソビエトとドイツでは、軍事力にあまりに違いが有りすぎます。
当時、戦車と装甲車だけの機械化軍団なんて、
それこそSF小説の中だけの話だったのですが、
ドイツはいちはやく実現しています。
しかもドイツのティ−ゲル(タイガー)戦車は、
北アフリカの戦線でアメリカ軍とさんざん実践経験があり、
それに基づき改良していたので、世界最強でした。
それにくらべ、映画でも出てきますが、ソビエトの
兵力は劣悪な上、スターリンは多くの優秀な軍人を、
ドイツびいき(ソビエトの軍人は密約中はドイツの協力で
訓練していたので、みなドイツ語が出来た)と言うことで、
粛清されるかシベリア送りになっていて、優秀な士官がいなかった。
これでは勝負にならないので、ドイツはあっというまに
スターリングラード(のちのレニングラードで、今はペテルスブルグ)まで
来てしまうのです。
これじゃあたまらないので、急遽シベリア送りになっていた
優秀な軍人をスターリンは呼び戻し、
(映画にも有りましたが)戦線に復帰させるのです。
これで何とか持ちこたえたソビエト軍は、
ドイツ軍とズルズルと膠着状態になります。
そのうち冬将軍が来て、ドイツの戦車はオイルが凍り動かなく、
ドイツは負けるわけです。
まあロシアは、モンゴルが責めてきた昔から、
自力で戦争に勝つことのあまり無い国で、
だいたいはナポレオン戦争でもスターリングラードでも、
冬将軍で助かるパターンですね。
それに比べるとドイツは、ナポレオン戦争に負けた教訓から、
いちはやくプロシャのビスマルクが、
戦争を科学的に分析し軍隊を近代化するわけで、
もう100年以上も戦争のプロとなっているので、
そりゃあ強いわけです。
(そのわりには、20世紀になってから、戦争に勝っていませんが。)
映画でもその辺りが良く出ていて、
日露戦争の203高地のように、しゃにむに突っ込むロシア兵と、
たとえ狙撃兵でも情報収集し、分析し、戦略を立てるドイツ兵。
はっきり差が出るように、描かれています。
まあ、とにかくお勧めの映画です。