山道を走る一台の車。 乗っているのは、堺、浅間、山城の三人。運転してるのは山城。 この日彼らは珍しくドライブでもしようと、手形山に来ていた(説明的)。 車の中では取り留めのない会話(アドリブでよし)。 堺 「成田連れてこなかったの失敗だったな」 浅間「なんでだよ。いらんだろ?あいつ」 山城「いらんいらん。おもしろくねーもんあいつ。いつのまにか俺らの仲間気取りだもんな。パシリのくせによー」 浅間「がたいでけえくせによ、俺らにへこへこくっついて、なに考えてっかわかんねえし、なんか気持ちわりいぜ」 堺 「だからパシリに使おうと思ってよ」 浅間「だからなんでよ」 堺 「ジュース買ってくんの忘れた」 山城「ばっ!ドライブっつったらジュース必須だろ?しんじらんねえ!」 浅間「自販機…なんてねえよな。こんな山ん中」 山城「成田呼べ!成田!」(ここまでは必須ね。) 堺、携帯で成田の携帯に電話をする。 山の中らしい場所。地面に落ちた携帯のアップ。携帯なる。誰も取らずなり続ける携帯。血らしきものがこびりついている携帯 タイトル「とわいらいと2」 車の中。 堺 「出ねえ」 山城「ンだとー?ちょっとかせ」 山城かける。しかし成田出ない。 山城「生意気な!成田のくせに!出かけてんのか?いつも引き篭ってる奴がなんで今日に限って出かけてんだよ!」 堺、浅間二人呆れたように肩をすくめる。 山城「ジュースー!ジュースー!」 堺 「しょうがねえだろ。忘れちまったもんはよ」 山城「もどっか?今日はもう気分のらね。最悪。かえっか?」 浅間「おいおい折角ここまできてんだぜ?もうちょっとで頂上だろ?」 山城「じゃお前おりろ。歩いて頂上めざせ」 浅間「いやだよ疲れるもん」 (註:手形山はぜんぜん大したことのない山である。山というより丘に近い。でも歩いて登りたくはないなぁ。大学の裏にあります。) 山城「じゃぁ黙ってろ!」 再び肩をすくめる堺と浅間。ぎろっとその様子を振り返って見る山城。 びくっとする二人。 その時、堺が前をみて叫ぶ。 堺 「おい!前前!ああーっ!」 山城がその声で前を見る。 その瞬間「どむっ」という音とともに鈍い衝撃が車に伝わる。 顔面蒼白の堺。何が起こったのかわからない山城。何も考えていない浅間。 とりあえず車を止める山城。 山城「なんだ?なんか当たったんか?」 堺ぶるぶると震えて前方を見るだけである。 山城と浅間車の外へ出る。堺は外へ出ようともせず震えるだけである。 浅間「ああああああ!」 浅間が叫ぶ。 山城「っだよ!なんでこんなとこ歩いてんだよ!」 堺はおそるおそる車からその二人を見る。 その二人の足元には一人の少女が横たわっている。 再び視線を前に戻す堺。 浅間が少女の肩を揺する。 浅間「お、おい!おい?大丈夫か?」 少女が目を開ける。薄目で辺りを見回す。 少女「……か、怪物……とても大きな……」 少女事切れる。 浅間「おい!おーい!……死んだ」 山城呆然としている。 浅間「……山ちゃん……どうすんだよ!おい!」 山城「お、俺のせいじゃねえ。俺じゃねえ。こんな山道ふらふら歩いてるこいつがわりいんだ。俺のせいじゃねえ……」 浅間「んなこと言ったってよ、車でひいたの事実だし……運転してたの山ちゃんだし……」 山城急に携帯を取りだし電話する。 山城「ちくしょう!全部あいつがわりいんだ。成田のやろう!成田が家にいねえからわりいんだ!」 いらついたように、そこらを蹴飛ばしながらうろうろする山城。 山城「……なんで出ねえんだよ!ちくしょ!」 携帯を地面に叩きつける山城。 浅間「……」 無言で山城の肩を抱く浅間。涙ぐむ山城。 山城「……埋めようぜ。この死体」 山城をだく浅間の手が強ばる。 浅間「おい!本気で言ってんのか?」 山城、浅間の手を振りほどく。 山城「ああ!まじだぜ大マジだ!こんなことで人生終わってたまっかよ。手伝えよお前」 浅間「おいおい、手伝ったら俺も捕まっちまうじゃねえかよ。冗談じゃねえよ」 山城「頼むよ友達だろ?助けてくれよ」 浅間「……友達でもできることとできないことがある」 山城舌打ちをすると死体の足をもち引きずる。 浅間「お、おい!山ちゃんってば。動かすなって。しょうがねえだろ?やっちまったもんはさ。正直に言えば軽い罪で済むって。それ以上やったら重くなるって!」 黙々と死体を車の方へ引きずる山城。 山城「黙れ!お前なんか友達でもなんでもねえ。帰れ!」 浅間「山ちゃん!……あれ?」 浅間死体の脇腹の辺りに妙な傷があるのに気づく。なにかでえぐられたような、噛みちぎられたような傷である。 浅間「変だな」 山城「なにが!」 浅間「この傷だよ。こんな傷つくはずないんだけどなぁ。なんかに噛みつかれたような。大きな動物にガブっと……」 山城「そういえば!」 山城&浅間「怪物!」 浅間「そういやこの子大きな怪物がどうのって」 山城の表情が明るくなる。 山城「そうだよ!こいつ怪物にやられて死んだんだよ!俺がひいたからじゃねえんだよ!その証拠にこの傷!これはなんかに噛みちぎられた跡だよ!ははは!俺じゃねえじゃん!なんだよー」 浅間「……でも、死体はここにあるんだぜ。しかも動かしちゃってるし。車に傷も付いてるし……どう説明するんだ?怪物がやったなんて。見てもいねえのに」 山城「簡単だよ」 浅間「はぁ?どう簡単なんだよ」 山城「その怪物をみつけて捕まえる!」 浅間「……」 山城「そうすれば俺の無実も証明されるって訳だ」 小声で浅間。 浅間「どこが無実なんだよ……」 山城「なに?」 浅間「なんでもないなんでも。しかしさ、そんなことできんのか?怪物いると決まったわけじゃなし」 山城「何言ってんだよ。いるに決まってるじゃん。この傷がそれを証明している。この子も最後に怪物って言ってたし」 浅間「そうだけどさ。どうやって探すんだよ」 山城「とりあえず、この死体をどうすっかが先だな。このままここに置いとくのも可愛そうだし……」 「バンッ」トランクが閉まる。 山城「ちょっといい気持ちはしねえけど、ま、しょうがねえやな」 浅間「……」 山城は運転席のドアへ、浅間は助手席のドアに向かう。 山城が車に乗り込もうとドアに手をかける。 山城「あれ?」 ドアには鍵がかかっている。運転席には堺が。 山城「おい!なにやってんだよ」 堺 「あ、あああ?うああああ!」 堺叫び声をあげアクセルを踏む。急発進する車。 山城「なんだよ!おい!堺!このやろ!」 浅間「……あいつ免許持ってたのか。知らなかった」 山城「いや、持ってねえはず」 浅間「あ?」 「ガジャァン、ブーーーー」 山道の立木に突っ込んで止まっている車。 山城「ああああ!俺の車ァー!」 浅間「……ばかやろうが」 車に駆け寄る二人。 中をのぞき込むと堺がハンドルにつっぷしている。 山城「おい!堺!おい!冗談じゃねえぞ!おい!」 浅間「……死んでるのか?」 山城「そうなんか?どうだろわかんね。でもうるせえな。おい!うるせえぞ堺!クラクション止めろ!このやろ!」 バンバンと窓を叩く山城。 山城頭を抱え座り込む。 山城「っだよまったく!今日は楽しくドライブのはずだったのに。なんでこんなことになるんだよ。ローンだってまだ20回残ってんのに。今日帰ったら昨日買ったゲームやろうと思ってたのに。明日は授業さぼって映画みに行こうと……ほら、クローネンバーグの新作イグ…なんとかってやってるだろ?あれ見に行こうと思ってたのに。なんでだよなんでこうなる。なんでだよ」 山城はっと何かに気づいたように立ち上がる。 山城「そうだよ、そうだ!こういうのはどうだ?この堺が俺の車を勝手に持ち出してここまで来たんだよ。それであの子をひき殺しちゃって、勢いあまって自殺。そうだそうだこれでいこう」 浅間呆れる。 浅間「怪物はどうなったんだよ。怪物は」 山城「怪物?なんだ怪物って……あ、怪物ね怪物」 呆然とする山城。ため息をつく浅間。 浅間「駄目だなこりゃ」 浅間その場を立ち去ろうと山城に背を向ける。 山城「浅間ぁ、どこいくんだよ。怪物は山ん中だろ?」 浅間「そんなもんいねえだろ?俺はもうつき合ってらんねえんだよ。帰る。どうせ俺は関係ねえし。死体も触ってねえしひき殺してもいねえもん。全部お前がやったことだろ」 山城泣きそうな声で言う。 山城「なんだよー友達じゃねえかよう。一緒に探してくれよう」 浅間「やだね。一人で探せば?俺はおりる。早くかえんねえと日がくれちまう。ほらもう夕方だ」 浅間一人で歩き出す。山城、地面の少し大き目な石を拾いあげる。 体当たりするようにそれを浅間の後頭部に打ちつける。夕日の逆光。 山城「なんだようかえんなようもっと遊ぼうよう」 倒れた浅間の頭に石を何度も何度もうちつける。 山城、山道の脇の茂みに人影を見る。 山城「?」 もう一度目をこらして見る。たしかに人影の様なものがすーっと移動している。 山城「あ!なんだよう成田じゃないかぁあそぼうよう」 成田は山城の方を見つめながらすーっと移動している。 山城は成田の方へむかってふらふらと茂みに入っていく。 山城「ちょっとまってようここあるきづらい」 ぴたりと成田は立ち止まる。 山城はその機を逃すものかと、成田に飛びつく。 山城「つかまえたぞー」 どんっと成田に体当たりする山城。成田はなんの抵抗もなく倒れる。 「バシャ」なにか液体が山城の顔にかかる。 山城、不思議そうにその液体を手でぬぐう。 山城「血?血が出てるよ成田」 山城倒れた成田を見る。成田は上半身だけである。下半身がない。上半身からは血に塗れた臓物が顔を覗かせている。 山城「……????」 その時辺りを動物なのかなんなのかわからない叫び声、吠える声が包み込む。 山城後ろの気配に振り向く。 その顔に恐怖とも歓喜とも言えない表情が浮かぶ。 「ブシュウウ」 山城の腹、胸等から血飛沫があがる。 山城「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」 笑い声をあげる山城。 アパートの一室。いかにも男の部屋である。そこに女が一人。 女 「ひまー。なにやってんだろ」 ごろんと横になって、部屋にあるマンガ雑誌を手に取る。ふと留守番電話をみる。 留守録があることを示すランプが点滅していることにきづく。 気になるのか、視線をマンガ雑誌電話機と交互に移す。 とうとう起き上がり留守録再生ボタンを押す女。 留守録『イッケンデス』 女 「イッケンデス」 まねをする女。 留守録『ぐわはははは!俺だよ俺。成田さまだぁ』 女 「なーんだ」 再びごろんと横になる女。 留守録『俺様に内緒で手形山にいくとはゆるさん。というわけでいまー手形山に来ています。先回りだ。堺はきっとジュースを忘れるだろう。これは予言だうわははは。かわりに俺様がジュースをたんまり買って持ってきている。安心しろ。と言ってもこれを聞くのは山ちゃんが帰ってきてからになるだろう。これも予言だ。わっはっは……あれ?なんだ……あ!なんだあぁ?大きな……あああ!ブツッ……ツーッツーッツーッ。午後一時二十二分デス。ピー!』 女 「つまんないなぁ」 目をつむる女。その息が次第に寝息へと変わっていく。 「とわいらいと2」おしまいDeath。 |