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『残酷大陸クワヘリ』KWAHERI

  ■1964年:アメリカ作品■製作:ソール・ブルックス デヴィッド・チャドナウ
  ■監督/撮影:ミキ・カーター■音楽:デヴィッド・チャドナウ




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■カメラマンであり探検家でもあるミキ・カーター率いるドキュメンタリー撮影隊が、伝説の「まじない医師」を求めて、
知られざる魔界アフリカへと旅立つ。文明社会から隔絶された未開地アフリカのジャングルの奥地で現在もなお、原始的で
非常に野蛮な脳外科手術を続けているという「まじない医師」とは果たして一体、どんな人物なのであろうか‥‥‥‥!?
行く手を阻む大自然の脅威!弱肉強食、野生動物たちの厳しい生存競争!あまりにもショッキングなアフリカの素顔に翻弄
されながらも、道なき道を突き進むドキュメンタリー撮影隊!そしてついに‥‥撮影隊は「まじない医師」に出会い、身の
毛もよだつ世にもおぞましい脳外科手術の現場に立ち合うことになるのであるが、それ以上におそろしい光景を‥‥まさに
「野蛮と残酷の大国アフリカ」の現実を、撮影隊は目の当たりにするのであった‥‥‥‥!!

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■4年7ヵ月もの歳月を費やして完成させたという、野蛮大国アフリカの素顔を追った衝撃のドキュメントが本作『残酷大
陸クワヘリ』だ!くわへり‥‥くわへりっ!?「クワヘリ」とはどうやら、「さようなら」という意味らしい。どこよりも
美しく‥‥そしてどこよりも残虐な大地アフリカ。そんな「古きアフリカ」も押し寄せる近代文明の波によって、「新しい
アフリカ」に産まれ変わろうとしている。牛フンを固めた家に暮らしていた全裸族の人々はパンツをはいてコンクリート製
の家に住み、食人族の人々は肉食をやめてベジタリアンになって行く。時代は変わる‥‥古きアフリカよ‥‥残酷大陸アフ
リカよ‥‥いざ、さらば!!というワケで本作は、失われつつあるアフリカの古き風習や部族たちの生活の様子を記録した
モノであるという体裁を装ってはいるが、実際には、未開地に暮らす土人たちの「信じられないくらいに野蛮な醜態」の数
々を興味本位で捉えたにすぎない、黒人偏見白人優位主義的商業見世物映画の一本であることには変わりない。とわ言え、
ヤコペッティの諸作品などイタリア産の極悪モンド映画群に比べれば、その作風は「生真面目」そのもの。豊かな大自然の
なかで気ままに遊ぶ珍しい動物たちの生態をはじめ、動物の密猟・密輸などの、アフリカが抱える問題についてもフォロー
している。しかし、本作のメインとなるのはやはり、観客たちのド胆を抜かせるために用意された、血なまぐさい衝撃シー
ンの数々なのだ!風土病によって肉体が変型してしまった人々!小動物を締め殺して丸飲みにする凶暴な大蛇!キリンや象
の死体を手際良くバラバラに解体するハンターたち!牛の生き血をうまそうに飲み干す土人!小鳥さえも捕獲してエサにす
るジャイアント・スパイダー!洞窟のなかで何時間も延々と踊り狂うピグミー族!‥‥等々、「アフリカなんかに生まれな
くて良かった!!」と、つくづく思ってしまうようなシーンが目白押しだ。とくに本作の「売り」である「まじない医師」
が行うインスタントな脳外科手術の模様は、なんとも気味が悪いとしか言いようがない。手術を受けるのは、とある族のオ
ババだ。「まじない医師」はオババの頭のてっぺんを、おもむろにナイフで切り開き始めるのだが、驚くべきことに、麻酔
らしきモノは一切使用しないのだ!当然のことながら、消毒なんてありゃしない!しかしそんなこと、「まじない医師」は
もとより、手術を受けているオババ本人でさえも、まったく気にもかけていない様子‥‥果たして痛みは感じないのであろ
うか?−−無数の金バエがブンブン飛び交うおそろしく不衛生な状況のなかで、手術はどんどん進められて行く−−「まじ
ない医師」は切り開いたオババの頭皮を、まるでオレンジの皮を剥くかのような手際の良さで両側にずるりと引っぱり頭蓋
骨を露出させ、へらのような金具を使い穴が開くまでガリガリと削り続ける!やがて頭蓋骨には穴が開き、そのなかに収ま
る脳味噌がムキ出しに‥‥‥‥!!「まじない医師」は露出させたオババの脳味噌に向けてなにやら怪しげな‘お祈り’を
ひとしきり唱えただけで、治療らしい治療は何も行わないまま切開部を縫合してしまい、仕上げにバナナの葉っぱを頭に被
せただけで、手術を終了させてしまうのであった‥‥‥‥!!「まじない医師」によれば、この手術の成功率は90%以上
で、手術の失敗によって死亡する者は滅多にいないという。「まじない医師」は部族の者すべてから尊敬されており、彼の
もとで手術を受け、病気が「完治」した患者たちは皆、彼に深く感謝しているというのであるが‥‥本当に大丈夫なのであ
ろうか!?−−その後、かつての患者たちが続々と登場し、手術の跡を嬉しそうに披露するのであるが‥‥彼ら全員の頭部
は見事にぼっこり陥没しており、頭蓋骨ムキ出しの状態のままになっているのであった−−やはり全然大丈夫じゃないっ!
実に衝撃的な脳外科手術の後に用意されているのは、本作のメインディッシュとでも言えそうな、ある部族による「子孫繁
栄の儀式」の模様だ。村の中央にある広場に部族の者全員、数十名ほどの土人どもが大集合している。 連中はひとり残らず
麻薬でラリっており、激しいタムタムのリズムに合わせて、まるでケダモノのように咆哮しながら、ただひたすら踊り狂っ
ている!!ヨダレを垂れ流し、全身をケイレンさせながら、狂喜乱舞する野蛮な土人、土人、土人の大群!!踊る土人ども
の興奮度がピークに達したところで、子孫繁栄の神様に捧げる処女が登場する!生け贄の処女はバナナの葉にくるまれて広
場の中央にある高台へと運ばれるのであるが‥‥やがてそこに火が放たれて、処女は生きたまま焼かれてしまうのだった!
果たして‘処女の蒸し焼き’がうまいのかマズイのか定かではないが、土人どもにとっては「子孫繁栄の儀式」の日こそ、
‘おいしいご馳走’にありつけるとても幸運な日であることには、どうやら違いなさそうだ!「決して口外してはならぬ現
場」を‘偶然に’目撃してしまったドキュメンタリー撮影隊‥‥映画の最後は、なんとも気が利いたナレーションでしめく
くられている‥‥「我々はついに見た。アフリカのおぞましい現実を!!」‥‥一見真面目なフリをして、実は全然真面目
でなかった『残酷大陸クワヘリ』は、数多くの残酷ドキュメンタリー作品同様、未開地に暮らす人々を最後まで人間扱いし
て描かれることはない。撮影隊がピグミー族の部落を訪れる場面では、部落の人々をさんざんコキ使って、重い撮影機材各
種やボートなどを担がせて、まるで奴隷のように働かせている。そのくせ、自分たちはまったく何もしていないのだ‥‥!


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