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『残酷人喰大陸』NUOVA GUINEA, L'ISOLA DEL CANNIBALI/GUINEA AMA

  ■1974年:イタリア=日本作品■製作:ロマノ・フィケーラ
  ■監督:井出昭■脚本:金沢信二郎■撮影:ジャンカルロ・グラツァーノ■音楽:リズ・オルトラーニ




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■この映画は20世紀の現代においてもなお、石器時代さながらの生活を営んでいるパプアニューギニアの人々の姿を記録
したモノである。時代が変わり文明の波が押し寄せようとも、彼らはかたくなにそれを拒み、先祖代々受け継がれてきた習
慣や風習を守り続けているのだ。ニューギニアには数年前まで「人喰い」の習慣があった。現在は政府によってそれも禁止
されているが、人里離れたジャングルの奥地に暮らす未開部族の間では、今でも食人行為に及ぶ者が後をたたないという。
本作には、文明社会に生きる現代人の常識や価値観でさえ揺るがすような、原住民たちの驚くべき生態の数々が記録されて
いる。そしてカメラは、信じ難い光景を遂に捉えたのだ‥‥‥‥現代に生きる食人族の実態を!!

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■日本において、精力的に残酷ドキュメンタリー作品を撮り続けて来た人物が井出昭だ。その活躍ぶりから「日本のヤコペ
ッティ」と評され、数々の衝撃作品を発表して来た井出が、残酷の本場イタリアのモンド映画製作チームと共同で製作した
一本がコレだ!舞台となるのは秘境パプアニューギニア。「滅び行く地球最後の原始人」をテーマに、 原住民の知られざる
さまざまな生態の数々が綴られて行くが、その内容の充実度には目を見張るモノがある。「まるっきり原始人そのまんま」
とでも言えそうな原住民の生活形態がこと細かに紹介されており、実に興味深い。しかし、本作が真に追求しているモノ、
それは言うまでもなく「知られざる野蛮人どもの実態」を暴くことであり、ニューギニアに暮らす人々を「食人族だ!」と
決めつけている姿勢を一貫させているあたりは、「素敵っ!」としか言いようがない。もはやここではニューギニアという
国そのものが、「野蛮大国」として描かれている−−決してそんなコトはないのかも知れないが、問答無用の雰囲気が濃厚
なので、観客もいつしか「ニューギニア=食人族の国」と思わざるえなくなるのだ!いきなり登場するなんとも衝撃的なシ
ーン‥‥それは「クククク族」が行う死者への弔いだ。夫に先立たれた妻は、死後一か月も経過して腐敗し始めた夫の死体
と一緒に、せまい小屋のなかに立て篭る。強烈な死臭が漂うなか‥‥伴侶の死を嘆き悲しむ妻は、死体に湧いた無数のウジ
虫を一匹一匹つまんでは、それを延々と食べ続けるのだ‥‥!死者の肉体の一部を自らに取り入れ、愛する者と一体になり
たいというあらわれらしい。「死者を思うやさしさなのだ。」と、ナレーションは語るが、そのおぞましい光景には息を飲
むばかりだ。また、べつの部族の風葬の現場では、腐敗ガスが体内に充満して数倍にも膨れあがった男の遺体のそばで、遺
族たちが群がるハエを追い払うのに忙しい。死んだ男の妻と思われる女は、死体から絶えずにじみ出す腐った体液を自分の
身体に塗りつけている!!さらに、死者を燻して弔う「燻葬」を行う地域もある。現在のニューギニアでは風葬も燻葬も、
衛生上の理由から法律で禁止されているが、それでも隠れて、受け継がれてきた伝統を守り続けようとしている人々がいる
というのも現状である。煙で燻されている死体の口や鼻孔、肛門からは、腐ってドロドロに溶けた内臓や血液が不気味に糸
を引いて流れ落ちている‥‥‥‥死臭漂う薄気味悪いシーンが連続するだけでなく、本作では実にバカげた原住民たちの風
俗についてもフォローしている。男たちの関心ごとは、ペニスケースのお洒落について!金持ちは現地のお金と同じ価値が
ある貝殻を細工したペニスケースを調達するが、それを買うことが出来ない貧乏人たちは、コウモリを捕まえる。捕えたコ
ウモリは即座に解体して皮を剥がし、形をきれいに整えてから天火に干す。残されたコウモリの肉は焚火でこんがりあぶら
れて、おなかが空いた男たちの胃袋を満たす。さて、男たちが満腹になるその頃には‥‥‥‥コウモリ皮100パーセント
の特製ペニスケースが完成しているというワケだ!!これぞまさに一石二鳥♪おなかも満足、股間も満足!ニューギニアの
男たちは実に心得ているのである!また、ニューギニアにはホモが多い。その理由はさておき、とにかくホモが異様に多い
らしい!!ニューギニアの「ホモの恋人たち」が集う乱交パーティの会場では、大勢の男たちが陽気に歌いながら抱き合っ
たりペッティングをしたり‥‥‥‥感極まったところで男たちは、‘恋人’のイチモツを引っぱり出して口に含み、愛情い
っぱいのフェラチオを‥‥‥‥大量のザーメンを顔じゅうに浴びた彼らは恍惚とした表情を浮かべながら、なんともかぐわ
しくとても濃厚な‘男のエキス’を、大切そうに自分の肌にすり込むのだ!どうやらニューギニアの各地域には、古くから
「ザーメン信仰」があるらしく、男が放出するザーメンを全知全能の神より授かりし、なんともありがたい聖水として崇め
たてまつりソーロー‥‥とのことで、なんともばかばかしい限りではある。そのほかにも女たちの刺青ファッションや鼻に
穴を開ける成人式、ニューギニアの夫婦生活に密着(余計なお世話)等々のバカネタが連続するが、ライ病患者たちが辿る
哀れな末路は、観る者を青ざめさせるくらいのインパクトがある。目や鼻や唇が崩れ落ち、手足が醜く変型した病人たちは
「不吉で忌まわしい者」として部族を追放され、一人寂しく山奥の小屋で暮らさねばならない。もっと悲惨な例になると、
白い布にくるまれて生きたまま川に捨てられてしまう場合さえある!だが、本作においてもっとも衝撃的なのは、世界で初
めてカメラが捉えたという、「本物の食人族」の姿だ!!敵対する部族に付け狙われた一人の男が、殺されて腕をもがれ、
焚火で焼かれてしまうのだ!!その後、数人の男が死体をよってたかって貪る、おそるべき食人の現場をついに‥‥とのこ
となんだが、このシーンは果てしなくインチキくさい。また、これとはべつに、近年食人行為をしたという男の逮捕現場に
も「運良く」居合わせることができ、その一部始終をカメラに収めることに「成功」したそうだが、これまた先ほどの食人
現場同様「やらせ」な雰囲気が濃厚なのだ。徹底的に偏見の目で伝えられる事実の合間に、でっち上げた模造をさり気なく
織り込むあたりはモンドの基本であり、その手法は悪辣としか言いようがないが、本編はバカネタからグロネタまで実に多
彩さな残酷メニューが続々登場するので、モンド映画の入門編としても楽しめるかも知れない。日本語ナレーション版のビ
デオでは、今は亡き芥川隆行氏の味わい深いナレーションが存分に堪能できる。


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