Another Face 表に出せない心の叫び
管理人が狂喜した映画・ビデオを本能の赴くままに紹介する場です。
少々お見苦しい文章ですが御一読下さい。
FILE2 デカメロン
はじめに警告
「デカメロン」はパゾリーニ映画です
少●隊の楽曲ではありません




世界史の授業をチンタラ受けた経験をお持ちの方ならば一度は耳にした事がおありだろう。ボッカチオ作「デカメロン」。逞しく生きる大衆の暮らしを活き活きと描いたこの本を、一体何人の現代人が手にしただろうか。恐らく数えるほどしかいないであろう。世界史の授業に出てきた御本なぞ、積極的に読む奴などそうそうおるまい。

しかしその腐れ昔話本をパゾリーニ自らの手で映像化するとなれば、話は違ってくる。思えば約一ヶ月前、驚異の変態映画「ソドムの市」(←性的嗜好により好き嫌いが大きく分かれる作品ですので、気持ちの準備をなさってから御覧下さい。)を観賞して以来、筆者の心を鷲掴んで放さないあの御方。天性の才能とも呼べる非凡な映像センスを全て変態描写に昇華させてしまうあの男。ピエル・パオロ・パゾリーニ。彼が、あの彼が、何故にお堅い世界史本「デカメロン」を題材にチョイスしたのか?!渦巻く謎に胸の内を掻き乱されながら観賞した「デカメロン」は、その謎に的確に答えて余りある程の素敵映画であった・・・

さて、その素敵な見どころを一挙公開!・・・と行きたいところですが、あまり露骨にネタバレさせるのも切ないですから、筆者なりの視点から見た注目ポイントを踏まえてやんわりと内容を御紹介するといたしましょう。本作「デカメロン」の最大注目ポイントは・・・

「無邪気モザイク」。

この一言に尽きます。

青空の下、木陰でスヤスヤと眠る青年にかかるモザイク
女を前にしてウキウキ笑顔でパンツを下ろす男にかかるモザイク
朝焼けのベランダで手を繋ぎ微笑むカップルにかかるモザイク

これ程イノセンスに満ち溢れたモザイクを、これまでの我が人生で目撃したことがあっただろうか。いや、ない。「ソドムの市」では画面狭しと漂っていたあの冥い淫靡さは何処へか、本作では活気に溢れたフィレンツェの空の下、みんなみんな無邪気にレッツ・モザイク!別名「アウトドア・モザイク」とでも呼べる程、本作のモザイクは実にあっけらかんとした無邪気な生の悦びに満ち溢れているのでありました。

成る程、さすがはパゾリーニが目を付けた世界史授業本「デカメロン」。「大衆の生活を活き活きと描く」とはこういう事であったのか。本作は「大衆=無邪気な性生活=無邪気モザイク」という黄金の方程式を、かくも的確に表しております。これを観れば、己がいかに余分な手枷足枷に囚われ人生を謳歌していなかったかを痛感させられること請け合いです。

これら大衆の無邪気かつ逞しい(性)生活ぶりが、全8話の細かいエピソードに分割されているのも嬉しい心配りと言えましょう。「さあ、映画を観るぞ」と気負うことなく、それぞれのエピソードを軽くつまみ食い出来ます。且つ「ソドムの市」同様、人生をより楽しむ為の教則本として使用可の兆候有り。何て素敵なのでしょう。

モザイク以外にも「町の風景に出てくる子供が全て少年ばかり」「パゾリーニ自身が画家の役で出演」などなど多くの見どころに溢れる「デカメロン」。御自分の性的嗜好をよくよく自覚した上で御覧下さい。


BACK to TOP BACK to TALK