JACK LOVES GOOD VIDEOS FILE1 SUMMER OF SAM

猛暑に狂うのは、殺人鬼だけじゃない。
「サムの息子」事件、もう一つの物語。

サマー・オブ・サム
ORIGINAL TITLE : Summer of Sam

ROADSHOW 2000年5月号より
STORY
1977年、猛暑のニューヨーク。連続殺人鬼「サムの息子」による猟奇事件が相次ぐ中、街一番のプレイボーイ・ヴィニーの生活は少しずつ狂い始める・・・
1999年製作・アメリカ・142分

STAFF
監督:スパイク・リー

CAST
ジョン・レグイザモ
エイドリアン・ブロディ
ミラ・ソルヴィーノ
VIDEO&DVD INFO.
レンタルVHSリリース10.18.2000
字幕版・吹替版
レンタルDVDリリース12.20.2000
COMMENTS

猟奇殺人モノと言えば、イカレた犯人と、対する正義の人物を描くのがセオリー。ちょっと倒錯的に犯人像を魅力的にしたり、犯人を追う人物にいかにもなトラウマを設定したり、多少の工夫はあるものの、基本的にはどれもこれもさほど変わらないお子様ランチのようなもの。

ところがここへ来て、猟奇殺人モノもようやく新境地が拓けてきた感じがします。理由は本作「サマー・オブ・サム」。主人公は、悪を追う正義の人でもなく、サイコな犯人でもなく、ただの一般人。そこらにいるチャラい兄ちゃんです。その等身大のチャラ男くんの目を通して、連続殺人事件と猛暑にみまわれた1977年のニューヨークが描かれる。そう、本作は殺人事件そのものを直に描くのではなく、事件の影響を受け少しずつ歯車が狂っていく街の人々の人間関係を描いているのです。さすがスパイク・リー。目の付け所が良いです。

ところで、人種差別問題となると鼻息が荒くなるスパイク・リー監督ですが、本作ではさほど政治色が強くないのも良い点です。「差別はんたーい!コノヤロー!」と興奮全開で叫ぶのではなく、あくまで客観的に冷静に、人の心の中に多かれ少なかれ存在する差別意識というものを、過不足無く描いております。私が言うのもなんですが、大人になりましたな、スパイク・リーは。

そのバランス制御の良さが功を奏してか、本作は映像良し、音楽良し(ザ・フー、アバなど70年代ヒット曲がてんこ盛り)の秀作。差別問題なんて重いネタはちょっと・・・という人にも全然平気な娯楽作となっております。ま、そのバランスの良さ故に少々パワー不足・失速気味の感もありますが、見て損は無い手堅い一作と言えるでしょう。


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