JACK LOVES GOOD VIDEOS FILE4 GLOOMY SUNDAY

哀しく甘いその旋律は命さえ奪う。
自殺の聖歌と呼ばれた魔の楽曲。
貴方も聴いてみませんか。

暗い日曜日
ORIGINAL TITLE : Gloomy Sunday
STORY
ナチス支配の影が迫る1930年代末、ブダペスト。レストランで働く無名の青年ピアニスト・アラディは、雇い主の恋人イロナに心を奪われ、彼女に自作の曲を贈る。「暗い日曜日」と題されたその曲はレコード化され、大ヒットするが・・・。
1999年製作・ドイツ・110分

STAFF
監督:ロルフ・シューベル

CAST
エリカ・マロジャーン
ステファノ・ディオニジ
VIDEO&DVD INFO.
レンタルDVDリリース11.01.2002
レンタルVHSリリース11.01.2002
字幕版・吹替版
COMMENTS

映画に感動して「多感な10代の頃に観ておけば良かった」と口惜しくなるというのはよくある話だが、「10代のうちに観てしまわなくて良かった」と胸を撫で下ろしてしまうというケースはかなり珍しいのではなかろうか。悶々と悩むことが仕事のような青春真っ盛りの年頃にとって、本作『暗い日曜日』はかなりデンジャラスな作品です。

1930年代にハンガリーのピアノ弾きが作曲し、その後ヨーロッパで大ヒットしながらも、自殺の聖歌として発禁処分になったという実在の楽曲『暗い日曜日』。発売当時、レコードをかけながら、あるいは楽譜を胸に抱きながら、命を絶ってしまう人が続出したそうな。そのいわくつきの歌の舞台裏を、事実とフィクションの入り混じった珠玉のストーリーで魅せるというのが本作のポイント。確かに、ナチスのユダヤ人迫害が始まった暗い時代を背景に、自殺の聖歌誕生にかかわった人々が懸命に生きていく人間ドラマは見応え充分でありましょう。ヒロインも官能ムンムンの美女、相手役も芸術家風情丸出しの繊細美男子。ビジュアル的にも満足度マックスです。

しかし。いくら歴史ヒューマンドラマの体裁をとっても、核を成すのは魔の自殺ソング。物語は激動の時代を生き抜く主人公のパワーに満ち溢れているにもかかわらず、甘ったるく哀しい曲が、全編を通してあらゆるヴァージョンで流れまくるのだからたまりません。豊かな色彩の画面作りの中にもどこかくすんだ影が感じられ、登場人物達が必死に頑張る姿のバックには自殺誘発曲『暗い日曜日』がつきまとう。そして、このメロディが変な充実感を伴って胸に迫って来るのが怖い!自殺などという暗黒系まっしぐらの曲なのに、この妙な満ち足りた感じは何なのか。さすが発禁処分の名曲、怖過ぎます。鬱な時なんかに、何の気無しに観てしまったら、ものの弾みで死んでしまうかも・・・と思うほど。悩み多き若者時分に観るのは、かなりの危険行為でありましょう。

生へ向かう物語と、死へ向かうメロディ。それぞれのパワーが拮抗する上質の映画です。安全確保のため、思春期をやり過ごしてから御観賞下さい。


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