「マトリックス」や「オープン・ユア・アイズ」など、今が旬の“記憶モノ”映画。ゲームやインターネットが普及して仮想現実世界が確立されつつある今の時代だからこそ、大いに楽しめるジャンルですな。まだまだバーチャルとリアルを巧くコントロールする術を知らない我々未発達モンキー族にとっては、切実に危機感を持って観られるネタでしょう。自分の記憶は果たして現実なのか仮想なのか？本物なのか偽物なのか？空想と現実の間で翻弄され揺れ動いている我々現代人のみが共感出来る、特権ジャンルです。

さて、そこへ本作「メメント」登場。普通の人間でさえアヤフヤになりがちな記憶に、更に１０分しか持たないというハンデ設定を加えたこの作品、なかなか工夫が利いています。前向性健忘で１０分前の記憶が消えてしまう男が、妻を殺した犯人を捜すミステリー。このバックグラウンドだけでゴハン３杯はいけそうです。余程下手な演出をしない限り、そこそこ面白い作品になっていること請け合い。

何と言っても白眉なのが、１０分しか続かない記憶の保存方法。数分しか記憶が続かない人が自分の行動や思ったことを全てメモしているのはテレビで見たことがあるけれど、そこはフィクションの映画ですからそんなありきたりな事はしてられません。「メメント」の主人公レナードはなんと！己の肉体に彫り込んじゃいます。つまり刺青。タトゥー。なにもそこまでしなくてもね。普通にメモしときゃいいのに。そこら辺の無理矢理加減も面白さを倍化してくれます。

監督はイギリスの大型新人クリストファー・ノーラン。時間軸を前後させて再構築した物語はかなりのもんだとか。インディペンデントながら全米８位を記録した本作、実力は信用するに足るでしょう。