-interviews-


MOVIESTAR (MAR.2001/VOl.73 P.61)
舞台は'84年、イギリス北部の炭坑の町。11歳のビリー・エリオット(ジェイミー・ベル)の父親もストライキ中の炭坑夫で、家族は冴えない日々を送っている。しかし、ある日ボクシング教室で練習中、となりのバレエ教室を目にしことにより、ビリーの人生はガラッと変わってしまうことに。その後間もなく、彼はその非凡なダンスの才能を、手厳しいダンス・インストラクター(ジュリー・ウォルターズ)に見出されるのだ。

6歳の時からダンスを始めたジェイミーは。今作品『リトル・ダンサー』のオーディションで2000人以上の候補者から抜擢され、主人公ビリー役でプロ・デビューを飾った。現在13歳の彼は、すでに今後の成長が期待される大型新人と呼ばれているが、それも彼のホームタウン、ビリンガムの外だけの話のようだ。それというのも、ジェイミーも主人公ビリー同様、学校の同級生には自分のダンスの才能をひた隠してきたから。

ビバリーヒルズにあるフォーシーズンズ・ホテルのスイートに入ってきたジェイミーは。ビデオ・カメラを持参している「ビデオ日記を作っているところなんだ。気にならないといいんだけど、撮ってもいいかな?」と訊くので、気持ちよく承諾してあげた。

—さて『リトル・ダンサー』が映画の演技初挑戦になったわけだけど、楽しかったかい?
ジェイミー・ベル
:ワオッ!!って感じだった。オーディションが7回もあって、しかも最後のは2週間も続いたんだ。何回も踊って、何回もセリフを読まされて、何回もコンペがあって、最後にスティーヴン(・ダルドリー監督)が電話をくれて、僕がいいって言ってくれたんだけどさ、最初の2〜3回のオーディションじゃ、朝の10時ぐらいに呼ばれて3時か5時ぐらいまで踊ってなくちゃいけなくて凄く疲れちゃったよ。みんな、自分達が何をやってるのかあんまり分かってなかったんじゃない?だから何回も呼ばれたんだ。凄く大変だったけど、何とか頑張れたよ。
—主役に決まったと連絡があった時はどんな気分だった?
ジェイミー
:僕、丁度サッカーを観てたんだよね。だからスティーヴンが言ってることより試合に夢中で(笑)。だから次の日の朝起きて初めて僕が映画に出られるっていう実感を噛みしめることが出来たんだ。ホント、スティーヴンに言われたときは何も感じなかったんだよね。
—ロスは今日が初めてなんだっけ?
ジェイミー
:そう。
—どう?
ジェイミー
:でっかい。トロントからサンフランシスコまでって、ロンドンからニューヨークまで飛ぶのと同じぐらいの距離だよね?ここは何でもかんでもでっかいけど、特に何も違いはないと思う。お菓子は違う。でもそれくらいかな?イギリスよりアメリカの方が何でも大きいや。タクシーは別。イギリスじゃもっと大きなタクシーが走ってるから。建物も公園もボトルもカートンもバーガーもピザも、とにかく何でもイギリスより凄〜くでっかいよ。
—君の出身地は?
ジェイミー
:ビリンガムっていう所。映画が撮影された場所から20分しか離れてない所なんだ。ニューキャッスルの南にあるんだよ。
—じゃ、サッカーはニューキャッスルのファンなんだね?
ジェイミー
:違う。アナーセルが好きさ。
—ビリー・エリオットには、どんな風にして感情移入していったんだい?君もダンサーだから、きっとビリーとは接点が沢山あったんじゃないかな。
ジェイミー
:僕が感情移入しただけじゃなくて、元々の脚本がそうだったんだ。いつもその質問をされるんだけど、ビリーは僕と同じってわけじゃないよ。っていうか、僕とは全然違う。バックグラウンドも年も違うし、僕とは違う責任を色々と背負ってるし、ダンスと巡り会ったのも僕の時とは違うしね。ひとつだけ一緒だなと思ったのは。ビリーが初めてダンス教室に入った時、女の子ばっかりだったってこと。それは僕の時も同じだから。でも僕達に共通点があるとしたらそれくらいで、その他は違うと思うな。それに自分を演技してるって思ってなかったしさ。ビリーは僕とは別人と思って演技してたよ。
—君はどういう経緯でダンスと巡り会ったの?
ジェイミー
:お姉ちゃんの影響。一緒にいろんなコンペとかダンス学校に連れ回されて、僕はいつも女の子のダンスをドアの外で真似してたんだ。ずっとやりたいと思ってたんだけど、ダンス教室に入ったりタップシューズをはく勇気がなかなかなくって。でもやっぱり始まりはお姉ちゃんの影響だったよ。だってホントにいつもいつもコンペからコンペ、ダンス・リハーサルに連れ回されてたんだからさ。どうしても僕もやりたくなって、「やるぞ!」って決心を固めたんだよ。そしたら、ママがタップシューズを買ってくれて、僕はすぐに夢中になったんだ。
—友達には何て言われてた?
ジェイミー
:8歳までは知られなかったんだけど、バレた時は凄くからかわれた。「オイ!オカマ・バレリーナ・ボーイ!」って。でもしばらくしてあいつら僕をイジメるのに飽きて、他の奴に移ったんだ。僕に飽きちゃったんだよ。
—君自身はバレエよりタップダンスの方が好きなんだっけ?
ジェイミー
:うん。タップの方が得意だから、得意な物を続けた方がいいよね。
—映画ではバレエも踊ってるけど、その為にバレエも学ばなくちゃいけなかったのかい?
ジェイミー
:ううん。バレエは経験があるんだ。僕がバレエも始めることを学校の連中に知られた時は、やんない方がいいのかなって悩んだけど、結局あいつらのことは無視して続けることにしたんだよ。でもバレエって凄く難しいよね。ある程度のスタンダードに到達するまでは練習もとっても厳しいし、バレエの歴史やステップについても勉強しなくちゃいけないんだ。試験の時に「これはどうしてこうなのか?」、「これはどこから来たものか?」とかそんな質問をされるから。ダンスを覚えるだけじゃなくて、歴史も覚えなくちゃいけなくて、とにかくとっても時間の掛かるプロセスなんだよ。
—演技にはどんな風にアプローチしたの?
ジェイミー
:5年間ナショナル・ユース・ミュージックシアターで舞台をやったことがあって、イギリス中を廻ってたから、演技の経験は結構あったんだ。でも舞台から映画用の演技に切り替えるのが僕にとっての一番のチャレンジだったかな。だって舞台じゃオーディエンスに伝わるように大袈裟な演技をするけど、映画ではそれを抑えなくちゃいけないから。
—で、映画に出るって君にとってどんな感じだったの?
ジェイミー
:とっても良かった。みんなにも良くしてもらったしさ。ねえ、クレジットで「この映画の製作にあたり、動物への危害は一切加えられていません」って出てくるでしょ?あれ、僕以外は、ってことだよ(笑)!いい人達と働いてたから、僕にとっては凄く良かったけどね。特に僕は初めてだったじゃない?みんなに良くしてもらったお陰で、これからも続けたくなったよ。
—どんな映画に出ていきたい?
ジェイミー
:同じような題材の映画かな。ドラマがいいや。『ダイ・ハード』とか『マトリックス』みたいな映画は、僕の体には無理だからやらないと思う。だから(『リトル・ダンサー』と)同じようなもの、ドラマ/コメディみたいのに出たいな。
—フレッド・アステアのファン?それともジンジャー・ロジャースのファン?
ジェイミー
:ふたり共好きだよ。でも大好きってわけじゃない。デイン・ペリーの方が好きだね、彼が一番いいな。『タップ・ドッグス』(4月上旬日本公開予定)っていう新しい映画に出てるんだよ。
—スティーヴン・ダルドリー監督は、君が有名なることに関して心配してたようだけど、イギリスじゃもう雑誌の表紙を飾ったりしているほどの人気者だろう?どんな気持ち?
ジェイミー
荒れは現実じゃないって思ってる。みんなは僕じゃなくて、誰か他の人のことを記事にしてるんだ、ってね。だから、もし誰かが僕が何してるか興味あるっていうなら質問に答えたりはするし、僕の顔が表紙になってたりしても全然気にならない。だってただの写真だもん。これが僕の見方だよ。「ここは単なるホテル。ただ、僕の周りはリッチな人達、裕福な人達で溢れてるだけ」っていう感じ。僕にとってはリアルじゃないんあから、有名になろうと関係ないよ。
—お姉さんがいるって言ってたよね?
ジェイミー
:うん。19歳。
—イギリスではこの作品の指定は何だったの?
ジェイミー
:15。15っていうのはね、たとえ親が同伴してても15歳未満の子は観れないってことなんだ。
—もしどこか変えられるなら変えたいと思うシーンはある?
ジェイミー
:うん。…僕!それは冗談。いい映画だよ。僕のアイディアもいくつか入れてもらえたから、とっても嬉しい。
—例えばどんなアイディアが?
ジェイミー
:ビリーがピアノを弾いてるシーンだよ。あれは僕のアイディアだったんだ。とにかくこの映画には凄く感動したし、嬉しいんだ。みんなもそう思うってくれると思うな。
—セットでみんなと仕事するのはどんな感じだったの?
ジェイミー
:ロケは良かったけど、セットはあんまりって感じだった。だって照明が熱くて仕方なかったし、借りてた場所だったからいつも時間がなかって。プロデューサーが何かにつけて「今日中にこのシーンを終わらせなきゃいけないぞ。今日出来ないとまた撮り直しになって、金も倍掛かる。そうなったらお前達みんなのせいだからな」って騒いでるんだもん。そういう意味で大変だったね。映画に出てた人達はリハーサルっていうのが何なのかあまり知らないし、どうしてそんなに大切なのかよく分かってなったけど、スティーヴンは入念なリハーサルをしたがる人で、時間を余分に取るのに一生懸命になってくれて、実際充分時間はとれたよ。それもね、楽しかったからよかったけど。ホンットに楽しかった。セットではね、ケチャップとかそこら辺に置いてあるもので遊んでたよ。
—暇な時に何して過ごすのが好き?
ジェイミー
:プレイステーション。サッカー、読書、テレビも観る…ダンス、ジョギング、そういうこと。最近はアウトドア系のことが好きだよ。ショッピングも好きだし、サッカーもね。
—好きな映画は何?
ジェイミー
:ディズニーの『アラジン』。まだ(年齢制限のせいで)観れないのもあるけど、ビデオでは『プランケット&マクレーン』とか『グラディエーター』、『パーフェクト ストーム』、『シンドラーのリスト』、『プレイベーと・ライアン』みたいなのは観たよ。そういうハリウッドの大作ものが好きなんだ。
—演技やダンスは将来続けていきたいと思っているのかい?それとも他にやりたいことはあるの?
ジェイミー
:そうだなぁ。もし俳優がダメだったらジャーナリストになろうかと思ってたけど(笑)今はそのアイディアも消えたからなぁ。だから分かんない。今は特にないや。昔からサッカー選手になりたかったんだ。でもそれほど上手くないって気付いたから、そのゆめも忘れちゃってたな。代わりにダンスに夢中になって、それから演技もするようになったんだ。
—ダンスや演技の仕事は、学校の勉強に支障をきたしたりしないのかい?
ジェイミー
:僕ね、別にステージ・スクールみたいな特別な学校に通ってるわけじゃないんだよ。演技のレッスンだった受けてないしさ。ダンスは放課後の課外授業。家に帰って着替えをしてから紅茶を飲んで、それからダンス教室に行って、夜8時ぐらいに帰って、また紅茶を飲んで寝てる。だから学校とは問題ないね。宿題に支障が出ることはあるけど。そのせいでダンスを休んで宿題をしなくちゃいけないこともあるんだ。でも今は先生も分かってくれてる。
—じゃあ、普通の公立学校に通ってるんだね。
ジェイミー
:そうだよ。
—学校でからわれてた時って、酷かったのかい?で、どうした?
ジェイミー
:ただ無視してた。でもあいつらのせいで益々やる気が出たよ。だってダンスは女の子だけじゃなくて、男だって踊ってもいいんだってことを証明してやりたかったから。ヤツラのことは極力忘れるようにして、僕をけなしたり、やりたいって頑張ってることを邪魔するようなヤツなんか僕の友達じゃないって思ってた。実際友達なんかじゃなかったしさ。僕のことも知らないし、僕がやりたかったことを分かってもいなかったんじゃない?僕がみんなと違うものが気に入らなかったのかもね、僕もみんなと同じようにしてればいいのにって思われてたのかもしれない。サッカーをやったり周りと同じことをしてればいいって。でもみんながやるようなつまんないこと、僕はやりたくなかった。違った存在でいたかったんだよ。
—映画の中ように、君の出身地も労働階級の町なの?
ジェイミー
:ううん。映画の町の方が寂れてる感じがする。でも労働者階級の町っていうのは当たってる。工場がいっぱいあるから。
—じゃあ、映画の中に出て来る人達は、君の実生活でも見かけるようなキャラクターなのかい?
ジェイミー
:(笑)元炭坑夫は何人かいるかもしれないけど、町の人がみんながみんな炭坑夫ってわけじゃないよ。
—いや、職業という意味じゃなくて、人生観や物事の見方って意味だよ。
ジェイミー
:それはそうだね。うん、そう思う。
—御家族は、君の演技やダンスに協力的かい?
ジェイミー
:もちろん。ママが僕にとって初めてのタップシューズを買ってくれたからダンスに夢中になったんだもん。だからずっと応援してくれるし、後押ししてくれてる。ここ何年かずっとナショナル・ユース・ミュージック・シアターで活動してたじゃない?舞台をやる為にはスポンサーをいっぱい集めなきゃいけなんだけど、家族がその為にいろんなところでお金を工面してくれたから、僕は凄く甘やかされている。本当に優しい家族なんだ。
—この作品は、やりたいことに向かって頑張っている少年を描いた素晴らしいお手本のような物語なのに、君と同じ年齢の子供達が(15指定のせいで)観られないということについては、どう思う?
ジェイミー
:きっと悪い言葉が使われているから15指定が付いちゃったんだろうな。でももしあーいう言葉が使われてなかったとしたら、映画は同じように出来上がらなかったと思うな。だから僕の年齢の子達が観ちゃいけないことになってるなんて残念だよ。達成したいゆめやゴールがあるのに、と中で諦めたり、誰かに夢を挫かれたりした経験のある子達が一杯いるかもしれないでしょ?そういう子達が観られるようになればいいのに…。ちょっと上手く説明出来ないけど、とにかく子供達が観れないなんて残念だな。
—夢を持っているのに、それを両親に反対されてる子達に君が言えることは?
ジェイミー
:君の人生なんだから、周りの人達に何でも決めさせちゃダメだよ。君を止めようとしてる友達がいたら、しれは本当の友達なんかじゃない。彼らが本当の友達だったら、夢を挫くようなことは言わないはずだし、逆に応援してくれるはずだもん。頑張れよ!って言ってくれるはずじゃない?それに周囲の人の言うことなんか大概間違っているから、聞く耳持たないほうがいい…僕はそうしてきたから。
—次に決まっている作品はあるのかな?
ジェイミー
:夕べ僕に話しかけてきたキャスティング・ディレクターがいたけど、多分あの人酔ってたと思うな。そうだなぁ、その人は夕べ「素晴らしい映画だった。ちなみに私は『グリース』を監督した者だ」って言ってたよ。もうひとり「『悪魔のいけにえ』を監督した」っていう人にも話し掛けられたけど、あの映画は良くないと思ったから「まだ子供だから観たことがありません」って返事をしたんだ。ホントは見たくないだけなんだけどさ。
—家を離れている時、一番恋しく思うものは何だい?
ジェイミー
:プレイステーション。
—でもここでだって遊べるじゃないか。
ジェイミー
:ううん。ここでは持ってないもん。シカゴにはあったけど、僕が欲しかったゲームが揃ってなくて。お気に入りのゲームが家にあるから、帰ったらすぐにプレイするんだ。まだ全部は制覇してないから、早くプレイしたいな。いっつもプレイするのに慣れてるんだよ。1時間ぐらいやって、それから外出するんだ。

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