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映画発掘、第四回・2001年宇宙の旅とスターゲイトの意外な関係
柳下 徒是有(どぜう)

開演の挨拶
ふぅわははははははは(広告によると、ジョージ・ルーカス大絶賛、今世紀最大最後 の傑作SFであるところの『バトルフィールド・アース』でトラボルタが演じた、異様 に長い鼻毛を三つ編みにして、高さ一メートルの厚底ブーツを履いた宇宙人の声で。 言葉では説明しにくいですけどこの通りの姿です。)
ふはははははははははははは、ふはははははははははははは。
映画発掘、第四回の始まりです。

いよいよ2001年、二十一世紀という事で、スタンリー・キューブリック監督の手によ る名作『2001年宇宙の旅』の意外な正体について考えてみたい。
難解だといわれている『2001年宇宙の旅』。
SF映画のみならず、映画全般の中でも古典の域を超え、神話化しているといっても過 言ではない。

かの『遊星からの物体X』のカーペンター監督にして、SF映画をレベルアップさせた作 品と言わしめ、また、人工知能の話題には必ずといっていい程、暴走し宇宙船乗組員 を虐殺した『HAL(ハル)』の話が持ち出されるまでになっている。
(余談だが、名前の由来はIBMらしい、一文字づつアルファベットをずらすと・・・。 ついでに最近本屋で見かけた小説の帯に『HALを越えた人工知能LINGO登場!』とあっ たがこれはアップルから来ているのだろうか。)

だが、この神話には、宗教上の神話と異なり作者自ら関わった攻略本がある。
小説版『2001年宇宙の旅』であり、小説版の作者が監督との協議の結果削除する事に なった内容をおさめた『失われた2001年宇宙の旅』である。

ノベライズや、映画関連小説というものは映画が終わったり、ブームが去ったりする と書店から一掃されるのが世の常だが、公開から二十年以上経た今でも容易く目にす る事ができる。これだけでも『2001年宇宙の旅』の底力を知ることができる。

また、ノベライズの多くは映画の裏設定等をならべて読者を満足させようとするもの で、そのため映画が廃れてしまえば関連知識は不要となり、需要が急速に収縮する。
しかし、この小説版は設定が示されている事で、需要を保っているのである。
『2001年〜』は映像だけでは監督の真意を掴みにくい事は否めないのである。

より正確には、観客自身が積極的に謎を追っていかないと理解ができないように、意 図的に映画版の情報を制限していたらしい。
謎ばっかりで見てもわからないのに、そのために熱狂的ファンがついた手法というの は、某エヴァンゲリオンを思い出しますね。精神分析とか、神秘学で謎ときをして議 論があさっての方向に流れてしまったりするファンが出る所もよくにてますね。

この二冊の解説書の意見を徹底的に要約すると、
1、神の正体は高度に文明を発達させた宇宙人である。
2、地球人を進化させてきたのは『神』となった宇宙人である。
3、宇宙人は肉体を人工物に取り替えていき寿命を延ばしていった。その後記憶や性 格をコンピューター(?)に記録し死後も人格を残す事に成功した。ついに宇宙その ものを記録媒体として保存し、肉体を超越した永遠の命を得て、神となった。同じよ うに人間も神になれるはずである。

こういうことらしいです。小説版のさらに解説を読んで得た知識なのですが。
このような書き方をすると半端じゃなく安っぽい映画に見えるんですね。多分主題だ けなら世界中のSF・ホラーファン、おそらく一千万人以上、が思い付いているはずだ 。ちゃちくなってしまうのでほとんどが作品にしないだけで。もしオタクに書かせる と『アカシックレコード』とかの濃ゆいオカルト知識が出てきそうですね。
どれだけ違う作品ができるか、ひとつ例示しましょう。

その映画とは、『スターゲイト』。
『2001年宇宙の旅』に登場する、異星人が使用していた技術にワープ装置があるが、 どうやら『スターゲイト』と呼ばれているらしい。
タイトルからわかるように、この映画にも、異星人の技術としてワープ装置『スター ゲイト』が登場する。
それだけでなく、実はこの映画は前記の特徴、神とは宇宙人である、を色濃く受け継 いでいる。
主人公が辿り着いた惑星では、高度な技術をもった宇宙人が神として君臨している。 逆になる点は、この宇宙人は、人類に文明を与えない、という所。構造が単純で修理 が簡単な生物である人間を便利な労働力と見なしている。この死体蘇生技術が、エジ プトの太陽神のモデルとなったという設定。

あきらかな共通点でしょう。

さあ、この前記の宇宙人イコール神、という基本事項に、『ローランド・エメリッヒ 三大法則』を加えます。

1、『コンピューター』で『入力』すれば何でも解決。
たとえ超古代遺跡でも、宇宙船でも、現代のコンピューターで対応可能。いつの間に OSを組み立てていたのか。だいたい、データを入力したら動く、という理屈はすご いものがある。
2、アメリカ軍賛美。愛国的。
『スターゲイト』のラストで原住民(と呼ぶべきかどうか?)の敬礼、『インディペ ンデンス・デイ』で地球を守るのも、『ゴジラ』にとどめをさしたのも、アメリカ軍 。
アメリカの観客の心を鷲掴み。あこぎである。
3、最後は核攻撃。
最も顕著なのは、大統領が『宇宙からの侵略者を核攻撃で皆殺しにしろ!』と演説を ぶつ場面ですな。(インディペンデンス・デイ)これ、朝日の天声人語で叩かれてま した。

基本事項は同じなのに、全く違う映画になりましたね。
『2001〜』は、歴史に残る名作とされているのに、『スターゲイト』は、全くそんな ことを言われない。むしろ愚作とまで呼ぶ人もいる。

前提が同じで、特撮技術なら上で、豪華なCGで梱包した大作映画なのに、『2001年 宇宙の旅』より格段に格下に見られてしまっています。ほかにも『ミッション・トゥ ・マーズ』とかも。

やっぱり、『2001年宇宙の旅』はすげぇや、ということで。



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