市芦処分公平審裁決出る!

アッ!とおどろく裁決書
理由も示せず、具体的事実を何一つ挙げられず、それでも「処分承認」
「中立、公平、独立」の法も面子もかなぐり捨て、権力行政の下僕に
 裁決書の体もなさぬ空っぽの作文
結局、
  これぞ芦屋市公平委員会にふさわしい裁決書か


 裁決は
  鈴木、森村、滝山、小川、石橋、吉岡、麻田、深澤ら8人に対する 強制配転処分をすべて処分者主張どおり認める。
  河村、深澤の2人に対する懲戒処分については、処分者主張を採用するが、停職1月は重きに失するので3ヶ月減給10分の1に処分内容を修正する。


 なぜそうした結論に至るのか、目をこらして裁決書を読むが、不思議なことに明解な説明は一切書かれていないのである。
 転任処分についてみれば、裁決書に「理由」と項を起こしているが、8人の事案について全文14ページ(1ページは25字×23行)、実質中身らしき箇所は10ページですべてである。400字詰め原稿用紙にして、一人2枚にも足らず、それもほとんど全文、処分者の文章の引き写しである。
目を凝らせば、わずかに公平委員会の独自の文としてあるのは「処分者の主張は信用できるが、申立人の主張は信用できないし、証拠がない」という箇所のみである。処分者の主張は全然証拠がないのに「全弁論の趣旨から」採用し、申立人の主張は事実証拠があっても無視するというのである。
 具体的事実に踏み込むと、まずいので一切ふれずに結論を出している。
この10年におよぶ「審理」の中身がすっぽり抜け落ちて、あたかも「審理」などなかった如く扱われている。


裁 決 書

<主文>
  申立人鈴木、森村、滝山、小川、石橋、吉岡、深沢の各処分を承認する。   麻田の申立は棄却する。

<理由>
1 申立人らの身分及び本件各異動処分(P28)
下記事実については、当事者間で争いがない。
(1)鈴木は昭和40年4月1日本件高校教諭として21年7ヶ月にわたって同
校で勤務してきたところ、同61年10月1日市教委から「指導主事に命ずる、市教委事務局学校教育課勤務を命ずる」旨の異動処分を受けた。
(2)森村
(3)滝山
(4)小川
(5)麻田
(6)石橋
(7)吉岡
(8)深沢

2 (麻田の申立は審理する実益がない。石橋・吉岡の市長事務部局への出向は  審理する実益がない。略)

3 各申立について判断する
(1)申立人らの同意等の必要性について
申立人らは「本件各異動処分は不利益処分であり、かつ、降格処分(鈴木を除く)であるから、申立人らの同意ないし少なくとも申立人らとの協議が必要である。」旨主張する。異動処分は処分者の裁量権に属し、原則として被処分者の同意や被処分者との協議は不必要であるが、いちじるしく不当な不利益ないし違法な不利益を与える処分や降格処分については、事前に被処分者の同意ないし少なくとも被処分者との協議が必要であると解されているところ、下記認定の通り、本件各異動処分は降格処分はでなく、身分の変更を伴わない、いわゆる「水平異動処分」であり、かつ、申立人らに違法、不当な不利益を与えるものではなく、従って、申立人らの同意や申立人らとの協議を必要としない。

(ア)申立人らは本件異動処分後においても従来通り教員の給料表を適用
され、かつ、その級及び号級にはなんらの変更がないことについては申立人らは明らかに争わない。従って、申立人らは給与面においての不利益はない。
(イ)申立人らは本件各異動処分により教職調整額や教員特別手当がなくな
ったことを主張するが、そもそも同手当等は学校現場に勤務する教員に対する特別手当であり、その喪失は転任による職務内容及び勤務場所の変更に伴い通常発生するものである。また、証人小林の証言によれば、反面、申立人らは学校に勤務する教員には支給されない時間外手当及び休日勤務手当が支給されることが認められ、同認定に反する証拠はない。従って、申立人らにつき教職調整額や教員特別手当が支給されなくなったことは違法、不当な不利益とは言えない。
(ウ)(石橋・吉岡の勤務時間変更も違法、不当な不利益といえない。略)
(エ)(指導員の身分と職名について、降格処分でなく著しく違法、不当な
不利益を与えるものとは言えない。略)
(オ)鈴木に対する本件異動処分は年度途中であったが、かかる年度途中の
異動処分も裁量権の範囲内のものであって、年度途中であることにより
直ちにその異動処分が違法、不当となるものではない。
(カ)(吉岡の健康状態について、症状があったとしても、一切転任させる
ことが出来ないものではないし、違法、不当な不利益を与えるものではない。略)

(2)人事権の濫用について
ア 本件各人事異動の理由
証人前田及び同小林の各証言並びに弁論の全趣旨によると、下記事実を認めることができる。申立人らの本人尋問の結果には、この認定事実に反する部分もあるが、この認定を覆すには足りない。
(ア) 本件高校における事情と経緯
 昭和61年度から本件高校において教育改革が実施され、その中で人事管理の適正化として,
 a「行政改革」の趣旨に則り、「定数標準法」に準拠して算定した教職員定数による校長及び教職員の適正な人員配置、
 b人事交流の積極化 
 c勤務時間の厳守、服務規律の徹底、
 d教頭机の適正配置 
が図られたこと、芦屋市においては市立高校は本件高校一校のみという状況から人事が停滞しがちで、県市交流も限界があるため、本件高校教職員に各分野での経験を積んでもらう意味から、他の教育機関、部署との人事交流の必要が痛感されていたこと、前記aの教職員の適正配置については、本件高校では校長を含む教員定数は32名となり、同62年4月1日時点においては本件高校教員41名の内9名の過員が生じたこと、市教委は、条例改正に先立ち、過員解消に向け同61年11月から本件高校教員に対し希望退職を募集したり、同年12月から本件各異動処分迄の間、県立高校への転出希望者2名について、県教委に対し、本件高校教員が県立高校へ転出する場合の県市交流の原則(1対1交流)の例外措置の打診等の努力もした結果本件各異動処分を行ったことが認められる。前記認定を覆すに足りる証拠は無い。
(イ) 鈴木について
高校総体が開催されることになり、芦屋市はヨット競技会場を受け持つことになったが、宿泊施設の確保等その準備のため人員の派遣が必要であった。市教委は、鈴木は本件高校において勤務年数が21年余と一番長く、経験が豊富であり、企画力、折衝力、説得力等オールラウンドの能力が必要な同準備のための役割に最適であること、鈴木は社会科の教師であるところ、社会科の教員の持ち時間数がそんなに多くなく、一人減っても持ち時間数はそう多くならないし、教頭も社会科の教師であることから、場合によってはカバーできると判断して、鈴木を上記任務担当者として選び、本件異動処分を発令した。
(ウ) 森村について
(エ) 滝山について
(オ) 小川について
(カ) 石橋について
(キ) 吉岡について
(ク) 深沢について
イ 前記3(1)エの認定の通り、市教委による鈴木を除く申立人らに対す
る「指導員への転職処分」は降格処分でなく、かつ、本件異動処分は申立人らに対し少なくとも法律上の不利益を与えるものとは認められない。
ウ 従って、本件各異動処分は市教委の裁量権を逸脱するものではなく、申立人らの「人事権の濫用の主張」は理由がない。

(3) 不当労働行為について
 申立人らの主張にかかる申立人らの組合における身分及び組合活動の事実については、申立人らの本人尋問の結果及びこれらにより真正な成立を認め得る甲第276、296、304、313、317及び340号証により認められる。申立人らは「市教委は組合の弱体化を目的とし、申立人らの組合活動を理由として、本件各異動処分を行ったものであり、本件各異動処分は地方公務員法第56条に違反した不利益処分である。」旨主張する。申立人らの本人尋問の結果及び申立人らの陳述書(前記書証)には、同主張に沿う内容の供述及び記載があるが、市教委が本件各異動処分を行った理由は前記3(2)ア認定の各理由によるものと認められ、これに反する同供述及び同記載は措信できず、他に申立人らの上記主張を裏付けるに足りる証拠が無い。従って、申立人らの上記主張は理由がない。

4 結論
 よって、麻田の市教委に対する本件申立、石橋及び吉岡の市教委に対する「市長の事務部局に対する出向させる(併任)」旨の処分取り消しを求める本件各申立並びに同申立人らの市長に対する本件各申立は、いずれも利益がないので棄却し、麻田以外の申立人らの市教委に対するその余の本件各申立は理由がないので、市教委の麻田以外の申立人らに対する本件各異動処分を承認する。

平成9年3月14日
     芦屋市公平委員会 委員長高澤嘉昭、委員石垣鋭彦、委員相坂保夫