透明な羽が舞い降りる。
そんな不思議な夢を見ていた。後で考えてみると、透明なのにどうして見えるのだろうかとか、その場所が見たこともない場所だとか、おかしなことが多かった。でも、僕にとってそれはどうでもよく、ただその羽に触れていたかった。そして、その羽の中に埋もれていたかった。本当にそれしか考えられなかった。
夢を見た日は、とりわけ何かがあったわけではない。僕にとって重要な日でもない。どちらかというと平凡な一日だった。朝起きて、生きていくために必要なことをし、そして一日無事終えた自分へのご褒美に、好きな本を読みながら大好きなコーヒーを飲み、そして、死へと一歩近づいたことを確認しつつ、一つの煙を飲み込む。そんな一日だった。なんてことはない一日。嫌なことがあったわけではない。とりわけ疲れたわけでもない。でも、僕はきっとこの夢から抜け出せない。その透明な羽の感触に、色彩に、温度に魅せられてしまった僕は、ずっとこの夢を覚えているのだろう。
そういう思いを、透明な羽に馳せながら、僕は羽に埋もれていく。これからもずっと。永遠に目覚めることもなく。夢の中で。永遠に。ただひたすら、透明な羽に僕の中の足りない何かを埋めてもらうために。
|