今回の講演会は、ただ事例紹介に終わることなく、なぜ親子のコミュニケーションが大切なのか、大人はどう子どもと向き合えばいいか等、人として生きる本質的な部分を話してくださったように思います。
日程上の都合等により参加できなかった方々とも内容を共有するために、紙面にて内容を紹介したいと思います。
身体に関する科学的知識は命を救い、性虐待から守る
Body Science save lives and prevents sexual abuse
5段階で進む性知識
A 性的に成熟した大人⇒ |
・身体について理解している
・パートナーを尊重する
・法律・規則を守る |
B “知らないこと”を認めたくない(ティーンズ)⇒ |
コミュニケ—ションスキルが必要 |
C なんでも気持ち悪がる(中学年)⇒ |
恥知心からの解放 |
D 段階トイレにまつわる冗談を言う(低学年)⇒ |
身体について科学的に理解する |
E 魔法がかった考え方をする(未就学) ⇒ |
事実を知る必要あり |
|
SEXとは自分の心と向き合うこと
自分を大切にできない人は、相手も大切にできません。今、SEXをするということが自分の価値観と合っているのか自分の心と向き合うことが大切です。いやだな、したくない。そう思ったらしない。誘われても「NO」とはっきり断る。自分の身体は自分のもの。このことを親は聞かれてからではなく、積極的にきちんと伝えなければいけません。
科学的事実を淡々と、しかし積極的に伝えることが大切です
親が恥ずかしがって話すと、子どもに親の恥じらいを押し付けることになります。子どもはひとつの事実として受け止めます。科学的事実を淡々と、しかし積極的に伝える事が大切です。
ちょっと早めに、ちょっと多めに教えてください
あなたは、子どもから質問をされないとうれしい、助かる---そう思いますか。
わからないことを友人やTVから得ているとしたら。周りの情報の中には、正しくないものもあります。
正しい知識を得て欲しい。そう思うなら、親が話すことが大切なのです。親が思う以上の知識を与えることが必要です。
【5段階で進む性知識】
Ⅰ.魔法がかった考えをする子どもたち
(未就学児:3歳〜5歳)
科学的な名称を正しく何度も教えることが必要。科学的名称を知っている子は、性的虐待に合う確率が少ないというデータがあります。なぜなら、加害者は、「知識を持っている子は親子のコミュニケーションがうまくできている子で、被害にあったら親に話すだろう」と思うからです。親に話しそうにないおとなしい子を狙うそうです。だからこそ、科学的なことを話す関係づくりに努めてください。赤ちゃんには生まれた瞬間から伝えることは可能です。
Ⅱ.トイレにまつわる冗談が好きな子どもたち
(小学校低学年:6歳〜9歳)
変な人が近寄ってきたら、どんな方法を使ってもいいから逃げなさいと伝えます。この場合は何をしても許されます。そして、何かされたり見せられたりしたら、大人に伝えるようにと話します。あなたのせいじゃないから怒られないよ。と伝えます。
望んでいること、望んでいないことをはっきりと伝えるトレーニングが必要です。そして、自分と他者の境界線を教えます。トレーニングを受けた女の子は、高校生のとき 半分しかセックスをしないという調査結果があります。
Ⅲ.なんでも気持ち悪がる子どもたち
(小学校高学年:10歳〜12歳)
この段階の子は、男性には開放部が2つだけれど、女性には3つあることを知っていなければいけません。知識は、必要となる前に知っていなければ手遅れになります。コンドームについて、必要となる前に教えることが必要です。
性知識を知ることは大切だけど、おとなになってもしなくてもいい。これは大人のプライベートのことと教えてください。
Ⅳ.“知らないこと”を認めたくないティーンズ
(中学校・高等学校:13歳〜18歳)
正しくない知識を友人やTV、雑誌等から入手し、間違いを起こすのです。親は、大人だって知らないことは多くある事、質問することは恥ずかしいことではないことを伝える必要があります。そして、親に聞けないと言うのであれば、誰に聞けばいいか、たとえばおじさん・従兄弟・医者・先生等に聞いてごらんと伝えることが必要です。
Ⅴ.性的に成熟した大人の段階
① 自分の身体の健康チェックができる
② パートナーを尊重できる
③ 社会的責任が取れる
ex.セクハラをしない。規則を守る
成熟した大人とは、全ての人を尊重し、対話を大切にして対等に付き合う人であることをぜひ子どもたちに伝えてください。セックスなしでも性的に成熟した人もあり得ますし、未熟なままの大人も多くいます。
話すことを嫌がっている子と、話すことは難しい。いつ、どう話せばいいの?
① 二人っきりのときに話す
② 短く2分以内に話す
③ たとえば車の中とか逃げられない軟禁状態のときに話す
感情的な子に対してどうすればいいの?
① 食事の回数を増やす
② 睡眠時間を増やす
③ 定期的な運動をする
《質問》
カナダでは、父親はどのような役割をもつのでしょうか。私も性に関しては母親から聞きました。こちらが黙っていればこのまま子どもたちとは性に関して話すことなく過ぎてしまうように思います。
《アリスさんの答え》
母親のほうが子どもと接する時間が長いため、子どもに話すのは母親という慣習があると思いますが、
母親だから父親だからではなく、子どもにとって
どちらが話しやすいかだと思います。父親も話す機会があれば、積極的に話しかけるべきです。
《質問》
話しかけるのは14〜15歳になってからでもいいんじゃない?
《アリスさんの答え》
大きくなると聞く耳を持たなくなります。3〜12歳に話すことを勧めます。なぜならその間は親を尊敬していますから。また、その間は価値観を確立する時期でもあります。親の価値観も伝えながら話すことができます。
アリスさんはカナダでの性教育第1人者メグ・ヒックリングさんの第1後継者です。
参考図書:「メグさんの性教育読本」
メグ・ヒックリング著 三輪妙子訳
木犀社 1800円
Information
アリス・ベルさんの詳しい講演録が欲しい方は、KISS・サイエンスまでご連絡ください。
参加者の感想 ---交流会より---
・気持ち悪い、信じられない---そんな答えが返ってくるのではと今までは避けていましたが、講演を聴いて親子のコミュニケーションの大切さを感じた。
・ 娘と感情のぶつかり合いが最近よくあります。これからは3つの対処法を実践していきたい。
・ 性はかくすもの、見せてはいけないものと思っていた。お風呂に入るとき等いい機会として見せてもいいんだと気持ちが変わってきました。
・ 性のことは伝えにくいと思っていた。特に男の子のことはわからないし。でも、講演を聞いて、伝えられることっていいことと思えるようになりました。
・ 「性のことは3歳から話していい」これは衝撃的でした。まだ早いと思うのではなく、子どもが親を尊敬し聞く耳を持っているうちに話したほうがいい---このことを周りにも伝えていきたいと思います。
・ 20歳の子には、面と向かって言えないと思うのですが、メールなら読んでくれるのではと期待しています。
・ 性については、自分が教えてもらってこなかったから娘には教えられなかったけれど、講演の内容をこれからの娘との関わり方の参考にしたいと思います。
・ これからは恥ずかしがらず伝えていきたい。性を気持ち悪いと思ってもらえたら性経験を遅くするチャンス。講演を聴いて意識が変わりました。
・聞かれなくてほっとしている部分がありましたが、これからは機会を通じてこちらからコミュニケーションをもっていきたいと思います。
・ ホルモンのアンバランスから感情の起伏が激しくなったら、食事を勧める。これを実践したい。そして、食事の場をコミュニケーションの場として活用したい。
・ 20代でも恥ずかしがるお母さんがいます。それでは子どもに伝えられません。職業柄関わる若いお母さんたちに今日の話を伝えていきたいと思います。
・ 性器の形は顔が違うように人それぞれ違う。互いに認め合う大切さ。人と違っていていいんだよ、あなたはあなたですばらしい。それを伝えることで、自分に自信を持つ人間に育てていきたいと思いました。
・ 一人ひとりを大切にする。命はとても基本的なことであり、とても大切なものであるという意識を、ますます持つようになりました。何をどう伝えていくか、確認できました。
KISS・サイエンス
|