〔絵本編〕 ページ 2

 「ちいさい・おおきい・よわい・つよい」  ジャパンマシニスト社
 ふたたび、雑誌です。(絵本と関係なくて、ごめんなさい)
 「たぬき先生」こと、小児科医の毛利子来さんが主催の育児雑誌です。名前に釣られて、ちょくちょく買い始めたのですが、これがまあ、とんがってること。
 ご自分も医者であらせられるのに、こんなこといっちゃっていいの?というような記事が満載です。
 とはいえ、毛利さんの著作を読まれた方なら、すでにお気づきのとおりでしょう。医師会から猛反発を喰らっているのではないかと思うほど、いわゆる「育児の社会の常識」とは正反対のことを書かれてます。

 例えば、予防接種は、あれもこれも全部やる必要はない、とか、風邪を引いてすぐに熱を冷ましてしまうのは、むしろ危ない、とか。
 もっとも、これを即実行するのは難しい。赤ちゃんページの「予防接種」の項に書いたように、世の“センセイ”方は、予防接種は全部やりなさい、やらなくちゃダメ、やらずに来たって責任もてないわよ、といわんばかりの態度しか示してくれません。(私はそれで、小児科を変えました)
 まるで、「よけいな知恵をつけられてきて」 といわんばかりの、見下げた態度を示す“センセイ”ばかりでした。

 信奉者というわけではありません。
 この雑誌はとても信頼がおけるものだけど、すべてを鵜呑みにするほど愚か
でもありません。
 要は、疑う心を持ちなさい、ということだと思います。問題意識を持ち、異を唱える勇気を、ということだと。
 でないと、“愚かな”一般大衆は、だまされてばかりです。
 たとえば、医者の実験道具にされたり、予防接種の副作用で、自分の子によけいな負担を抱えさせてしまったり、ということがないように、ということですね。
 そうした様々な意(異)見が、実質的に世の中を変えてきたのだろう、と思うわけです。

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 お月さまってどんなあじ? ミヒャエル・グレイニェク 絵と文 いずみちほこ 訳   セーラー出版
 よく考えれば当然のことなのだけれど、絵本は「絵」そのものの魅力で子どもをひきつけます。
 なんという名の紙なのか知らないけれど、ぼこぼことした粗い水彩紙?にやさしく描かれた動物たち。ふんわりと浮かぶお月さま。それがとっても心地よいのです。
 しっかりと塗られた絵も、油絵も好きだけど、子どもの本には、ぼんやりと滲む水彩がいちばんぴったりくる気がします。描くのは大変そうだけど。

 タイトルどおり、お月さまをかじりに行くお話。うちの娘はこのお話が大好きで、小さいころは「私も味見したい!」とのたまっておりました。
 単純なお話なんですが、小さい子には、へりくつ言わず、教訓も与えない、こんな本がいちばんいいんでしょうね。
 さあ、動物さんたちと一緒になって「味見」をしにいきましょう。
 最後のページのオチが、またいいんですよ。たぶん、くすくすっと笑ってしまうんじゃないかな。どう受けとるかは、それぞれですけどね。

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 ネコのエレメノピオ ハリエット・ジーフェルト:文 ドナルド・サーフ:絵 泉山真奈美:訳   朔北社(さくほくしゃ)
 「ぼくのなまえはエレメノピオ。うまくいえないときは 6つのアルファベットをつなげてごらん。L…M…N…O…P…O。——」

 単純なお話だけど、絵本は“絵”で読む(絵を楽しむ)ものでもあるわけで。ちょっと「マイケル」にも似た——その昔(^_^;『ホワッツ・マイケル』ってコミックスが大流行したんだよ——ひょん、とした表情のエレメノピオが可愛い。楽しい。
 ネコ関係のものはついつい手が出てしまう。一種のコレクター。これも。ページを開くたびに、ほんわかとした気分にさせてくれる。カリカリしたときなんかに、ちょうどいいかも?
 とくに私、なにかというとすぐにカッとくる性格だから。キッチンのテーブルの片隅に置いておくのも、イライラを止める“手”(=猫手?)になりそう。
 ところで、関係ないけど、あのぷにぷにの肉球って、たまらないんですぅ〜。

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 おひさまのたまご エルサ・ベスコフ:作 いしい としこ訳 ベネッセ・コーポレーション
 擬人化された木の実の妖精や、小動物たちがかわいいんです。
 これは一応、物語だけれど、考えようによっては「おりこうなアニカ」の延長、妖精たちの日常生活の描写といえるのでは。
 オチから言ってしまうと——未読の方、ゴメンナサイ——「ラッセぼうやがもりで果物をおとしてしまったことから始まった」お話、というのが楽しい。また、そこからお話を作りあげてしまったベスコフさんも、とても想像力の豊かな人なのだなあと、感心しきり。
 もちろん、これはお話のラストでわかることなんですけどね。

 「落とし物」のせいで、森でちょっと一波乱。
 こんなお話を聞いて育った子どもは、きっと森を大切にするだろうなあ。だから欧州の人たちは、樹木を大事にするのかしらん、なんてよけいなことまで考えてしまいます。
 日本は(アジアは)自然が豊かで四季に対する心が敏感だというけれど、本当にそうなのかな。たとえば暦の上で何の日というのがきちんと(?)定まっているから、書かれているから、メディアで取りあげられて、その気になっているだけではないのでしょうか。
 四季の移ろいは感じても、昔からある風習を生活に取りいれようとは思わない、またそうしたくてもできない。

 あー、なんだか愚痴になっちゃったぞ。
 村上春樹ではないけれど、「森」はさまざまな力の象徴、そして人の生きる源泉でもあると思います。
 子どものお話とはいえ、そこでの物語は今、とても貴重だと思いのだけど……どうでしょうか。

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おりこうなアニカ 作、絵:エルサ・ベスコフ いしい としこ訳 福音館書店

  1991年に限定で復刊された本ですが、今はどうなんでしょう。出てるんでしょうか。
 たしか清水真沙子さんの本で激賞されていたので、気をひかれた一冊だったと思います。
 タイトルの「おりこう」という言葉に、最初はすこし引っかかりを感じたものでしたが——世間一般がこの言葉で代表する、いわゆる「いい子」だった私——もともと小さな子ども向けに書かれたもの。幼稚園にあがるくらいの年齢になって、ひとりで自分のことができるよ〜、という意味のようです。

 これも、娘が妙に気に入っていて、何度でも読み返している本。
 読む人によっては、子どもの淡々とした日常が描かれているだけじゃないかといわれそうな、ごく身近な内容なのだけれど、なぜか心を惹かれます。
 たしかに、ちょっと心が疲れたとき、おちこんだときなどに読むと、気持ちが落ち着きそうです。

 ベスコフは1953年に亡くなっているようなので、書かれた年代を考えると、ずいぶん昔のものなのですが、子どもの本って古びないですね。
 もしかしたら川端康成とか志賀直哉あたりと同時代ではないかと思うのですが、この本はじつにモダンです。
 明るいし、ほのぼのとして、夢がある。
 まぁ、いわゆる純文学と比べる方がおかしいのでしょうが、子どもにはまず、こうしたほがらかで気持ちのよい本を与えたいとつくづく思います。

 私の子どものころに、こうした本を読ませてもらっていたら……。ないものねだりをしてもしかたがないんですが、もうちょっと前向きなパーソナリティになったのではないかと思えてなりません。
 そういう意味で、子どもを勇気づける本、夢を持ちつづけられるようにしてくれる本、といってもいいかも。

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