1999年発足以来の歴史を、駆け足で振り返ってみました。 激動の5年間…。 なのにあんまり活動してないのね。

curry club前夜
その日はとても暑い日でした。僕と同僚のTくんはいつものように、Tくんの車で帰る途中でした(僕は車を持っていないので、いつもTくんに乗せてもらっていたのです)。
「この前、いいカンジのカレー屋見つけたんだけど、行ってみない?」とTくん。
「いいねぇ!」と僕。
いつもデニーズとか、牛丼ばかりでしたので、Tくんの提案は倦怠期を迎えていた僕たちにとって、この上なく新鮮に聞こえたのです。
そしてついたのが「プルニーマ」でした。そこは小さなビルの2階に位置し、隣は美容室です。一番奥のドアを開けると、そこはすでに日本ではありませんでした。所狭しと並べられた印度の楽器や服、エキゾティックで刺激的な香り…。
「イラサイマセ〜」
額にビンディをつけた女性が出迎えてくれました。この店のムードに飲み込まれ、立ちつくしていた僕はビクッとしながらも、彼女の温かい笑顔に導かれるままテーブルにつきます。(のちに知ったことですが、彼女は日本人でした。「イラサイマセ〜」と聞こえたのも、僕の先入観によるものだったようです)
「すごいじゃん?気に入った!」とはしゃぐ僕を慈愛の目で見つめながら、Tくんも
「でしょ?いいよね?」と意味のない相づちを打ちながら水を飲んでいます。
早速メニューを見ます。そこには何十種類ものカレーが!もう何がなんだかわかりません!しかし、訳のわからぬ興奮にとらわれた僕たちは「スゲェ!」を連発しながらああでもないこうでもないと真剣かつ無駄な議論を重ねた上で、さっきの彼女を呼んでビシッと言ってやりました。
「…この“当店オススメ”ってヤツお願いします…」
すると彼女は
「お客さん、初めてでしょ?」
と言うではありませんか!ここはカレーの店だよな…?などとあらぬ想像をしながらうなずくと、
「これはムリムリ! 初心者はこっちの方がいいよ」と勧められてしまったのです。その言葉が、僕たちに火をつけてしまいました。
「お嬢さん、確かに僕たちは初めてだ。だが!甘く見てもらっちゃ困るな。これまでだって辛いものはことごとく制覇してきたオレたちに、食べれない辛さなどない!デニーズの“ファイア魔王丼”だってヘーキだし、牛丼も表面が真っ赤になるほど唐辛子をかけるオレたちに心配はいらない。いいから持ってきてみなさい」と懇々と諭す僕たちに、男の覚悟のすさまじさを見て取ったのか、その割には笑いをこらえるような表情で、彼女はそれ以上逆らうことなく奥へ入っていきました。
ふふん、勝ったな…的な笑みを浮かべながら水をがぶがぶ飲んでいた僕らの前に、ついにカレーが登場です。
真っ赤な、トマトベースのルーの中に、マトンの固まりが入っています。一番上にはトマトを櫛形に切ったヤツが置いてあります。かなりウマそうです。しかし、このとき僕たちは初心者らしいミスを二つ犯していました。一つ目は、ナンではなくライスを注文してしまったこと、そして二つ目は、カレーがくる前に水を飲み干してしまっていたことです。のちの苦境などこのときの僕らは知りようもありません。早速カレーを一口食べてみました。
「ウ、ウマイッ!」
「けど、辛いっ!」
「けど、ウマイッ!」
なんと言うことでしょう!めちゃくちゃ辛いのに、手が止まらないのです。後頭部からは汗が滝のように流れ落ち、目の下のほお骨の上あたりからも涙のように汗がこぼれます。それでも、なんというのでしょうか?深みのある味、いや、もうすでにそれは味覚などという1感覚のもたらす快感を遙かに超えていました。まさしくあらゆる欲求を満たす刺激がそこにあったのです。あまりの辛さに舌も喉も痛いのですが、その痛みすらウマさに変換してしまうという、神経伝達経路と脳内情報処理系の異常。まさにカルチャー・ショック!
僕たちは話をすることもなく、お互いを意識することもなく、闘うように愛するようにカレーを食べ終えました…。気がつくとテーブルにはおしぼりと箱のままのティッシュがおいてあります。僕らは初めてお互いを見つめ合い、少し照れたようにほほえんでそのおしぼりとティッシュという形の真心を使わせてもらいました。
満腹、そして満足…。食事ってこんなに本能的で闘争的で、そして淫靡なものだったのか…。そんな感慨に浸っているとき、オーナーのババさんがテーブルに来てくれました。
「あなたがた、初めてなのに、よく食べたよ。これ、ワタシからのサービスね」
そういってテーブルに白いお菓子と、生のシシトウを輪切りにしたようなものを4切れ置いて去っていきました。僕たちは食後にチャイを注文していたので、それを煎れに行ったのでしょう。
「なんだろう、コレ?」
「漬け物?かな?印度の」
「ま、食ってみっか」
ってなカンジで、その輪切りを2つずつ一気に食べてみました。でもそれは漬け物ではなく、生のピーマンのように青臭いだけのものでした。
「???」
すっかりそれを飲み込んでしまったころ、ババさんがチャイを持ってきてくれました。そしてテーブルを見るなり、
「あ〜ら〜っ!全部食べたか?だめよ、説明聞いてからじゃなきゃ!その青いの、世界で2番目に辛い青唐辛子よ!」
「え?でも別に辛くなかっ…、ああああああああ〜っ!!!!!」
突然Tくんが叫びながらいすを蹴倒し、フロア中をゴロゴロ転げ回りだしたではありませんか!
「お、おい!だいじょう…ぶううおおおおおおっ!!!!!」
突然、喉の奥が燃えだし、口の中は焼けた鉄の塊を入れられたように熱くなりました。さっきのカレーの比ではありません。体中から汗が噴き出て止まりません。目も涙なのか汗なのか、とにかく曇って何も見えない状態になってしまいました。息をするだけでも口と喉が痛いのです!
Tくんは、なんとかカウンターに手を伸ばし、ピッチャーから直接氷水を飲み始めました。飲んでも飲んでも足りない様子です。氷を口に含んでうめいています。僕はそうすることもできずに、金魚のように口をパクパクさせるだけです。
そのとき、目の前に黄金色の氷を浮かべた液体が差し出されました。僕は訳もわからぬまま、差し出された器を奪い取り、飲み干したのです。するとどうでしょう!あっという間、ホントに一瞬の出来事でした。もう何ともないのです!魔法?そう、魔法です。顔を上げると、Tくんも涙を流した顔で惚けています。
ババさんに聞いたところによると、最初の青唐辛子は、一かけ食べるとその後一週間、頭痛や歯痛がいっさいなくなるそうです。あまりの刺激に、神経がマヒするからと言っていました。事実、僕は偏頭痛持ちなのですが、その後2週間は頭痛に悩まされることがありませんでした。しかし、あんな痛辛い思いをするよりは、頭痛の方がいいじゃん?とお思いの方、そのために魔法のシロップがあるのです。
黄金色の液体は、あるデザートに使うシロップで、とても甘いものです。とてもじゃありませんが、かなりの甘党でないと舐めるのもきついと思われます。しかし、あの青唐辛子を食べた後なら、それは天上の甘露のように舌と喉を癒す、魔法の液体となるのです。
こんな体験をし、すっかり疲れ果てた僕らですが、最後に甘くて熱いチャイをすすっていると、心も体も癒され、明日への活力がわいてくるようです。
「ここ、いいね。」
「でしょ?またこようね」
僕たちは同じ苦難を乗り越えた戦友のような気持ちで、プルニーマを後にしたのでした。
2003年08月31日 15時51分23秒

ただいま工事中!
ここがなきゃ、このHPのみるべきものは何もないのにね。ってか、これができてもそうなんだけど…(^_^;)。
とりあえず簡単に説明しておきますと、冒頭にも書いてありますように、当カリー倶楽部は、ホンットにカレーを食いに集まって、カレーを食ったら帰るという、健全かつ健康的なクラブ活動です。合コンでもなければ商談でもなく、ましてや秘密結社でもありません。
というわけで、出会いや儲けを期待する方にはご遠慮願っております。あしからずご了承ください。
なんというか、「たまには知らない人と一緒にうまいカレーが食いたいなぁ!」という欲求に突如として襲われた人(いねーから!)なんかが絶好です。もしそのような奇特な方がいらっしゃいましたら、メールください。歓迎いたします。
いよいよ次回更新時には、カリー倶楽部発足秘話が明らかに(誰も知りたくねーし)!乞うご期待!
2003年08月23日 23時56分45秒

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