Kiss Kiss Kiss !
身長が自分を追い越して以来。
横に並ぶと、進藤ヒカルはすぐに腕をこちらの肩に回そうとしてくる。
お気に入りの姿勢らしい。
………非常に、腹立たしい。
今日も、だから、回された腕を強くつねって、相手が怯んだ隙に距離を開ける。
「キミね。少しばかり大きくなったからといって、不必要に近づくのは止めてくれないか?」
「不必要って…」
「不要」
「そんなに照れなくてもいいじゃん」
「そんなに開き直らなくてもいいだろ!?」
「……じゃあ、これは?」
すぐに追いつかれ、何かと思うと、するりと腕を腰に回された。
……今度こそ手加減なしにその手の甲をつねり上げた。
「いたた、いたたた!! おい、右手だぞ!?」
「指が無事なら石は持てるよ! じゃなくてだからキミは、少しくらい背が高くなったからって、一々それを誇示しなくていいんだよ!」
「…………………じゃあ、これ」
言って、進藤は腕を軽く示す。
「何?」
「腕組むの」
………。
「おーい、待てって」
「…何を考えてるんだキミは」
「駄目なら、じゃあ、これ」
今度は即座に手の平にぬくもりが。
手を繋がれているのだと判断して、思わず振り払った。
「進藤!!」
「これも駄目? ワガママ」
「どっちがっ! 歩くときくらい普通に歩け! くっつくな! 離れろ!」
「………」
しばらく大人しく、隣を歩いているかと思っていたら、また肩に重みが。
「………進藤」
「必要な姿勢、これは」
「何が、」
不意に重みが増して、回された腕で首が固定された。
向こう側の手が伸びてきて、顎を捉えると、あっという間に顔が近づく。
「………………」
軽い音と共に唇は離れて、肩に腕を乗せたまま、進藤はにっこり笑った。
「キスがしやすい」