ミッドナイト・コール

「…こんな時間に着信かかるなんて思わなかったよ…」
「あ、寝てたぁ? わりぃわりぃ」
「……何時だと思ってるんだ? 普通、遠慮するだろ、こんな…」
「だから悪かったって言ってんだろ? しっつこいなぁ」
「それが人に謝る態度か? だいたいキミは前から、」


「…ごめん。電波、急に悪くなって…。…お、怒ってる…か?」
「………別に。…それよりも、もしかしてまだ外なのか?」
「さっき家についたとこだよ」
「こんな時間まで、どこで夜遊びしてたんだ」
「気になる?」
「………別に!」
「大分、目ぇ覚めてきたみたいだな。…明日、予定は? もう切った方がいいか?」
「…そもそも、一体何の用だったんだ」
「……それ、聞くか…?」
「…分かった、聞かない。……時間は大丈夫だ」
「そっか」
「……」
「……」
「……」
「……えーと…何してた?」
「…寝てた」
「あ、だよな…。えーと……今は?」
「寝てる」
「…ベッドの中?」
「寒いからね。ベッドじゃなくて布団」
「ああ、お前の部屋畳だっけ? 面倒くさくねぇ?」
「さぁ…もう慣れたから」
「あっそ。まぁ畳もいいよな。なんかくつろげるよな。オレはいつもフローリングだから」
「……また、機会があったら来るといいよ」
「ええ!? いいよ! あ、いや、そうだな…」
「来たくないなら、いい」
「じゃなくて! その…塔矢先生のいるときは、行き辛い、かな、と」
「ああ…芦原さんも同じようなこと言ってたな」
「……」
「進藤?」
「………どうせなら今行きたい…」
「……はぁ?」
「冗談!」
「……」
「……」
「……冗談、だけどさ…」
「……やっぱり、電話なんか取るんじゃなかった」
「悪かったなぁ、安眠の邪魔して…」
「まったくだよ。このままじゃ眠れない。どうしてくれる?」
「…塔矢、今のため息反則。誘うなっての。電話で」
「っ、何がっ! 誰がっ!!」
「ぐっすり眠れるようにしてやろうか?」
「…電話で?」
「指、冷たい?」
「……」
「そうだな、左の…人差し指…それを、」
「進藤!! あ、いや、いい、もう充分だ!」
「…ちぇ、惜しいっ!」
「何がだ!!」
「じゃあ今度、お前んち、誰もいないときに、なっ」
「ぼ、ボクは単に、畳の部屋に招いただけであって、別にそんな、」
「誘ったわけじゃない?」
「……それ以上言ったら、切るよ」
「このままじゃ眠れないんだろ?」
「……だから、責任もって、ボクが眠るまで喋ってろ。……キミの声は、嫌いじゃない…」