一週間ぶりに会った和谷は、赤黒かった。
「わーっ、気持ちわりーっ、暑苦しーっ」
 思わずそう距離を置くと、嫌がらせで抱きつかれた。
「こないだ○○区でやったイベントだよ。客のじーさんたちは日陰なのにさ、こっちはずーっと炎天下で大盤解説! 途中くらくら来たぜ。パラソル差しかけてくれるレースクイーンの幻覚を見た」
 和谷は、下から迷彩柄が覗く、重ね着風の白いトップスを着ていたのだけど、五部袖から伸びた腕がまだらに赤黒いのだ。
「ひえー、こりゃひでぇな」
「だろ!? 皮膚細胞か何かがぷちぷち壊れていく音を聞いたぜ。日焼け対策なんて普段そうしないしさ。風呂は染みるし、服擦れただけで痛いし」
 ぶつぶつ文句を言い続ける和谷に、それまで黙って話を聞くだけだった伊角さんが、つ…っと近づいた。
 そして何の脈絡もなく、和矢のトップスの裾を捲り上げた。
「ぎゃああっ、何すんの伊角さん!」
 ナマ白い腹に、ヘソが見えた。
「あ、ごめん。どのくらい赤くなってるのかなって」
「だからって何で腹!」
「楽平がよくやってたから」
 ぼけぼけと返答する伊角さんも、結構肌の色は白い。それで思わず自分の腕を見て、頭の中のそれよりも、全然黒くないことにびっくりした。小学生の頃とかは、一年中お日様の下にいたんだなぁと実感した。
 このまま囲碁を打ち続けて打ち続けて、いつか透明になっちゃえばいいなと思った。
 逆に、次の日曜にでも、みんなで空を見ながら打ちたいな、とも、思った。