解禁になったからって、和谷は羽目を外しすぎだ。一応こっちはまだ未成年なのだけど、付き合いよく明け方まで店にいたところ、二人揃って追い出されてしまった。和谷はべろんべろんに酔っ払っているので、仕方なく肩を貸して歩く。脱力した人間はとかく重いし、大体和谷のが背が高いし。
「だー、もっ! ちゃんと歩けって!」
 いい加減そのあたりに蹴り飛ばして、ほったらかしにして帰ろうかと、出来もしないことを妄想して憂さを晴らす。午前五時半。朝の光に照らされた繁華街は、道に落ちるゴミまで清々しくわざとらしい。
 少し大きめの道に出たところ、そこにはいくつかのラブホテルが並んでいる。もちろん入ったことはない。でも興味もないこともない。酒臭い男を汗かいて歩かせながら、通り過ぎるときちらっと看板とか、料金表を見たりとかして。
 そんなとき、少し前のホテルから、丁度カップルが、出てきた。
 好奇心で視線を投げた。長身の男と、丁度目が合った。
「………。」
 男の腕に、連れの女性が自分の腕を絡ませたので、勢い目を逸らした。なぜか思わず、ラジオ体操の歌を歌いたくなった。どきどきした。

 和谷をアパートまで送り届けた。最後の関門は玄関だった。すっかり眠りこけている和谷に、しつこく鍵のありかを聞いて、着衣のポケットを探った。
 部屋に上ると、入ってすぐのところに和谷を捨てて、まずは一杯水を貰った。スズメが爽やかに鳴いている。
 一人でタオルケットを借りて寝転んだ。こちらも勝手に借りた枕を、二三度意味なくぼすぼす殴って、某CMを真似てみた。
「大人って、大人って、」
 それから枕に赤い顔を埋めて、あれは明け方の夢なんだと自分に言い聞かせながら寝た。