連続層準位とドット準位間の緩和は、下向き緩和だけでなく、従来しばしば無視されてきた上向きの緩和も重要であることが、この解析を通じてわかりました。

 これはドット準位での、定常状態でのキャリアの出入りのバランスを表す、レート方程式です。下向き緩和で連続層から落ちてくるキャリアは、一部は自然放出と誘導放出で失われ、残りは上向き緩和により連続層に戻ります。

 熱浴についての詳細平衡から、上向き緩和の係数γuは、γdとこのような関係にあり、例えば、準位深さΔEを240meVとすると、室温では6桁ほど小さくなります。その一方で、連続層とドット準位の占有確率の比も、近似的には同じ程度になります。下向きおよび上向きのキャリアフローは、これらのクロスプロダクトに比例するので、同程度の大きさを持ちます。従って、上向き緩和を無視することは妥当ではありません。

 これらの、緩和によるキャリアフローが、誘導および自然放出に比べて十分大きければ、二つの準位の占有確率は平衡値をとり、ホールバーニングは無視できます。しかし、準位深さΔEが大きくなると、あるいは温度Tが小さくなると、緩和によるキャリアフローは減少するため、誘導放出の寄与が無視できなくなり、ホールバーニングが顕著になります。

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