A Hard Day's Night

Written by Mitsunori Ishimasa

第1話 (6/16)

僕は今、千歳空港行きの飛行機の中にいる。まだ6月のため暑いということはないのだが、日はとても長く、午後6時だというのに、夕日ともいえないような太陽が地上を照らしている。機内アナウンスで「もうすぐ千歳空港に到着ですので席にお戻りください」と言っている。乗客は急ぐというわけではないが、席に向かって歩いている。そんな時に僕はふと、20年前のことが頭をよぎった。まだ、大学生の頃の話である。あの頃も、日はとても長かった。きっと6月だったのだろう。ちょうど国分寺の駅の前のストリートミュージシャンが、the Beatlesの"a hard day's night"を歌っていた日のことだった。

 

第2話(6/17)

20年前は1999年である。6月だったと思う。大学生の僕は、周りの友達と、馬鹿なことを言っては笑い、宇多田ヒカルの曲を聴き、麻雀に誘われれば断れない普通の大学生をしていた。当時僕は国分寺に部屋を借り生活していた。親の仕送りとバイトが収入源で、裕福ということはなかったが、貧乏学生でもなかった。当時の僕は人付き合いがうまい方ではなく、少ない友達と割と深く付き合っていた。しかし、その仲間には悪いが、そいつらを本当の親友と思ったことは1度もない。本当の親友と呼べたのは生まれてからこの時までは1人だけだった。

 

第3話(6/18)

その親友は高校のときの仲間だった。キズキという。彼はクラスの中では、リーダー的な存在であり、誰からも好かれていた。女の子、男の子を問わずだ。話もとてもうまく、ささいなことでもおもしろくしてみんなの笑いをとっていた。タレントで言うと、「明石家さんま」だろうか。しゃべりはうまく、歯は多少出ていたが、まぁ2枚目である。当然彼につきあってくれという女の子も多かったが、彼にはナオコという彼女がいたために、そんな女の子に応えることはできなかった。ナオコは女子校に通っていて、僕らの共学の学校からは電車で2駅のところにある。ナオコはおとなしい子であり、自分からしゃべってくることはないような感じで、小さく、かわいい子だった。なぜそんなキズキが、運動もいまいち、勉強も人並みのクラスでは地味で目立たない僕みたいな奴と仲良くしてくれるかは今でもわからないが、お互いに相手を1番の親友としていたことだけは確かである。

 

第4話 (6/18)

僕は、1度だけそんなキズキと彼女のナオコといっしょに遊んだことがある。3人でビリヤードをしたのだ。彼は彼女のナオコと僕をあまり会わせようとしなかった。きっと、彼女の前の自分(キスギ)が普段と違うのを僕に見られたくなかたからだと思う。その時にナオコと少しだけ話しはしたが、なにを話したかは覚えていない。ビリヤードは僕の偶然ショットが決まり、3−1で僕が勝った。ナオコは基本的には後ろで見ていて、キズキだけでなく、僕も応援してくれた。キズキはジュースを賭けようと言っていたのだが、負けると思った僕は断った。それなのに彼は、「おまえが勝ったから」と言いジュースをおごってくれた。当然僕は「いいよ。」と断ったのだが、彼は「今日はお前におごりたいんだ、気にしないでくれ」と言い、お金を受け取ってくれなかった。そして午後の8時には2人にさよならを言い、それそれお互いの家に帰った。その夜である。今でも思い出したくないことが起こったのは。

 

第5話(6/20)

その夜僕は家に帰り、自分の部屋でくつろいでいた。ベッドで横になりながらOASISの"Morning Grory"のアルバムを聴き、村上龍の「愛と幻想のファシズム」を読んでいた。エンドレスに設定してあったCDプレーヤーは2回目の"Morning Grory"の最後の曲"Champagne Supernova"の時だった。帰って1時間30分ぐらいだろうか?時計は10時を指していた時に電話が鳴ったのだ。僕はゆっくり立ち上がり、電話を取った。電話の主はキズキの母さんだった。キズキが自殺したのだ。

今思えば、今日のキズキはいつもと違っていた。なかなか会わせなかった彼女と僕を会わせたし、いつもはあんな風にはジュースをおごってくれたかった。彼は言った事には人一倍守るのだ。ただ、僕にはなぜ彼が自殺しなければいけなかったのかはわからなかった。遺書はなかったそうだ。一番の親友、両親もわからなかった。 彼の葬儀にはたくさんの彼の友達が出席した。彼の人望の厚さが改めてわかった。そしてみんなが悲しんでいた。しかし、彼の自殺の原因を知りそうなナオコの姿は最後までそこにはなかった・・・・・。

そんなことがあり、親友と言える奴は今はいないキズキだけである。別に死んだ人間に悪いからとか言う理由ではない。キズキのように心を許せる仲間にまだ巡り合っていなかっただけである。

 

第6話 (6/21)

 

そんな高校時代を過ごし、大学生の5月だっただろうか? 国分寺駅でナオコらしき人を見た。彼女とはビリヤードとした時以来だから、丸3年は会っていないので、自信はないのだが、その姿はナオコのように見えた。彼女はむこうに向かって歩いている。僕は慌てて追いかけようとしたが、彼女と話したのも少しだけだったし、むこうも僕を覚えているかは自信がなかった。だいいちなんて声をかければいいのだろう。なにを話せばいいのだろう。そんな考えが頭をよぎったが、足は彼女のほうを追いかけていた。彼女は急いでいたようでもなく、僕はすぐに追いつくことができた。僕は彼女を追い越し、彼女の前に立ち彼女の顔を見た。間違いない、ナオコである。

 

第7話 (6/22)

 

いざ目の前に立ち、僕は何を言おうかもたついていると、

「ワタナベ君?」

とナオコが言った。

「そうワタナベだよ、ナオコだよね。」

最初の会話はそんな感じだった。そこでお互いが今何をしてるかを少しだけ話した。彼女はこの近くの大学に通っていた。それで国分寺駅に来るのだと言う。僕の下宿先もその近くなので一緒に話しながら歩いた。結構、話しははずんだ。大学までの歩く時間があっという間だった。しかし、最後までキズキのことについては、お互いに触れなかった。僕の中でも、たぶんそれ以上に彼女の中で「キズキ」の存在と言うのが大きかったであろうから。そして、それを話すと、僕は絶対に触れたくない、そして彼女も触れたくない「自殺」という話題になることが目に浮かんだからだ。帰り際に彼女は「私口下手だからあまり友達がいないの。だから、これからもたまには私の話し相手になってくれない?」と言った。僕は「もちろん。」と言って別れた。

 

第8話 (6/23)

それから、何度かナオコと会い、話をした。たわいもない話である。明石家さんまがTVで言ったことについてとか柳沢信吾の踊る大走査線のコントとか、宇多田ヒカルがTVにでたとかである。何度か話の流れでキズキのことは出てきたし、彼についての話もした。しかし、「自殺のこと」についてまでは言えなかったし、聞かなかった。

こうして会っているうちに、次第に僕はナオコに引かれている自分がいることに気づいた。しかし、彼女の中にはまだ「キズキ」がいることがなんとなくではあるがわかった。もちろん気のせいなのも知れない。ただ、そんなこと
関係ないのはわかっているが、キヅキの彼女だったナオコと見てしまう自分がいた。しかし、会って彼女と一緒にいる時間が増えれば増えるほど、彼女への気持ちは大きくなるばかりだった。そしてとうとう僕は決心した。この思いを彼女に伝えなければと決めたのである。この頃の僕にとっては、世界のすべてを敵に回しても、ナオコが好きになっていた。それほど自分にとって彼女がすばらしい女性になっていた。

第9話 最終話(6/24)

そしてある6月の夕方、学校帰りの彼女と一緒に国分寺駅まで歩いた。そしてその別れ際に彼女に僕の思いを打ち明けたのだ。

彼女は最初は何も言わずに僕の顔を見ていた。僕にとってはかなり長い時間だったが、きっと3秒も経っていなかっただろう。そして彼女が僕の顔を見ながら悲しそうな顔でこう言ったのだ。

「私、歯が出ていない人を好きにはなれないの・・・・。」

その一言を言い残し、彼女は走って去っていった。僕はただ呆然と立っていた。わけがわからなかった・・・・。10分も放心状態だっただろうか?確かにキズキも2枚目だったが歯は出ていた。彼女の話でも、明石家さんまの話題は多かった・・・・・。「そんなあほな」と思っている僕の後ろでストリートミュージシャンが The Beatlesの"A hard Day's Night"を歌っていた。

「It's been a hard day's night〜〜〜〜〜」

「イッツ ビーン ア ハード デイズナイト〜〜〜〜〜」

「イッツ ビーン ア ハーデテナイト〜〜〜〜〜」

「イッツ ビーン ア 歯ー出てないと〜〜〜〜〜」

The Beatlesの名曲がこんな風に僕を責め立てたのだった。今日はつらい夜になりそうである。そう "a hard day's night"である・・・・・・。

(完)

 

 

作者の言葉

本作品を最後まで楽しんでいただきありがとうございます。(そんな奴いないよ、馬鹿。苦情が恐い。)みなさまの温かい応援があったからこそこの作品が完成できたと思います。(同情だよ、同情。)本作品は村上春樹さんの「ノルウェイの森」を大変参考にさせていただきました。(パクリじゃないか?まぁ本物はもっと人を引き付けるいい話だけど・・・。)村上さんは僕の尊敬する作家であります。けっして馬鹿にはしていません。また、TheBeatlesも大変好きなバンドなので、彼らを馬鹿にはしていません。(本人がこんな使われかた知ったら怒るよ。みなさん内緒でお願いします。)この作品を通して少しでも、彼らを愛する人が増えればと願っています。(増えないよ。でももしかしたら興味は持てるかーー?)もし彼らのファンがこの作品で不愉快にさせていましたらすいませんでした。(すいません、本当にごめんなさい。)またこの作品を通じて彼らに興味を持った方は僕に頼むと、喜んで貸しますのでいつでもどうぞ。

本作品は、99年6月16日に軽い気持ちで書き始めました。息抜きでした。第1話は思い付きでした。先の事など考えていませんでした。この時にタイトルを決めたのですが、意味はありませんでした。(構想ぐらい考えてから、ネットに載せろ!。)そしてその夜、家に帰るバイクの上で、ふと「この先あの作品をどうしようか?」と思ったのです。少しタイトルの「a hard day's night」をぼーと考えているとこの作品の感動のエンディングが思い立ったわけです。(感動じゃないだろ、寒いダジャレだけ。)この時の自分の才能に恐くなった僕です。(ある意味恐いよ、そのネットに載せる根性とセンス)それから勉強で疲れた合間に小説を書き、6/18に無事に完成したわけです。(昔を思い出すところ、親友の自殺、そしてその彼女と大学で会うと言う設定はパクリだからね。)今後も時間があれば新しい作品を世に送り出していきたいと思っています。(もうだれも読まないよ)またその時に会えることを楽しみにしています。(狂ったセンスの人がいればね。)

作家 Mitsunori Ishimasa

 

作品の解説

本作品は、99年真木(まさき)賞作家の処女作である。さりげなくぱくりと思わせる描写、人名まで変えないあつかましさ、そして誰もが予想できない、人を馬鹿にしきったエンディング。作者の人格を疑う事しか出来なかったと思います。このことはここで代わりに僕が謝ります。「すいません。」まじめに恋愛小説と思って期待した人(そんな奴いないか?もしいたらまだ石正の人柄がわかっていませんね。)にはまことに申し訳なく思っています。本人も反省していますので許してやってください。

小説評論家 水野はるおう

落ちまでためにためた今回の作品いかかでしたでしょうか。少しひっぱり過ぎたと思いました。まじめに期待している人も何人書いたのでつらかった。また落ちの説明も多かったかなと思います。今後の参考にしたいのでご意見ください。今度の作品で早めに落ちを見つけた人がいたら僕に言ってください。題名がヒントかな?今度はどうしよう。何も構想はない。ある意味推理小説です。でも、もしかしたらまじめに小説を書くかも。

石正光則