神様、大魔王 編
[ 神様、1円だけ ]
ぎんぞうくんは小学生。小学生にしてはなかなか処世術にたけていて、あなどれない子です。でも算数はちょっと苦手。
今、学校で大きな数を習っているのですが、1億ってどのぐらいなのかよくわかりません。
たくさんということだけはわかるけど、計算できません。宿題をしなくちゃならないのにそれがわからないので、
途中で投げ出して河原に寝そべって雲を眺めていました。
雲は少しずつ形を変えていきます。犬のように見えたかと思うと、どんどん大きくなって、人間ような形になり、
更に大きくなって、本で見たことのある神様そっくりな形になりました。
「ぎんぞうくん、何をしてるんじゃね」
雲の神様がしゃべりました!
「か、神様?!」
「そうじゃよ。宿題はどうしたんじゃ」
「神様、ぼくね。1億ってどれぐらいなんだかわからないんです。だから宿題するのいやになっちゃった」
「1億ねえ。なんと説明したらよいかな」
「じゃあ例えば、1億年ってどれぐらい?」
「1億年か。君にとっての1億年は、私にとっては1分と同じじゃよ」
「そうなの?じゃあ1億円ってどれぐらい?」
「1億円か。君にとっての1億円は、私にとっては1円と同じじゃよ」
あなどれない小学生ぎんぞうくん、即座に言います。
「神様、お願いがあります!ぼく、おこづかいがほしいんです。1円だけでいいんです。神様の
1円をください。ぼく、宿題も一生懸命やります。ママの言うこともちゃんと聞きます」
「いいとも。1円ぐらいおやすいごようだ」
「ほんと!?」
「ああ。ちょっと取ってくるから、そのまま1分ほど待ってなさい」
[ 三つの願い ]
ある日の森の中、クマは晩ご飯のおかずにしようと、ウサギを追いかけていました。
と、そこへ突然、黄金の大魔王が現れました。
「2人とも待って!きみがクマさん?こっちがウサギさん?ボク、他の動物に会ったの初めてなんだ。
うれしいから君たちの願いを3つかなえてあげる」
まずはクマが言いました。
「俺、メシの次に女が好きでさ。この森のクマを全部メスにしてくれい!」
「いいよ。ゲロリクゲロリタ!はい。今、全部メスになったはずだよ。ウサギさんは?」
「わたしはヘルメットがほしい」
ゲロリクゲロリタ!ウサギの頭にはヘルメット。
「あほウサギめ。そんな貧乏くさい願いでどうするんだ。俺の2つめ、隣の森のクマも、全部メスにしてくれい!」
「わたしの2つめ、原付でいいからバイクがほしい」
クマは、ヘルメット姿で原付にまたがったウサギに、心底あきれた様子。
「ほんっとにバカだなお前。おれの3つめ。世界中のメスグマが、俺に夢中になるようにしてくれい!」
そして、エンジンをかけたウサギは言いました。
「わたしの3つめ。このクマをゲイにして!」
[ 定番3つの願い ]
凧次郎さんは、散歩中に古ぼけたランプを見つけました。なにげなくこすったところ、煙とともに現れたのは大魔王。
「ふぁっふぁっふぁ。100万年の眠りから覚ましてくれた礼に、お前の願いを3つかなえてやろう」
「ええっ。ほんとかな。じゃあまずは、お金を100億円くれ!」
ボッ!目の前には100億円の札束。
「すごいや!2つめはじゃあ、海辺に大きな家がほしい!」
ボッ!白亜のお城が現れました。
「3つめは何だ?」
「3つめは、世界中の女に愛されたい!もうどんな女もおれに引き寄せられておれに夢中、
おれを見るだけで、ああもうダメ・・ってなるようにしてくれ!」
ボッ!
凧次郎さんは、あまーいケーキになっていました。
[ 素朴な願い ]
蛸田さんが海岸を散歩していると、きれいなびんが目に止まったので、なにげなく手に取りました。すると、
「ふぁっふぁっふぁっ。10万年の眠りから覚ましてくれたお礼に、願い事を1つだけかなえてやろう」
と現れたのはお決まりの大魔王。
「1つだけですか。うーん。そうだなぁ。どうしようかなぁ。じゃあやはり世界平和を願
いましょう。ちょうど地図があるんですよ。ほらここがコソボ、それからここが中東です」
「待て。中東もコソボも、それなりの歴史がある。歴史を変えようと思ったら、
ものすごいエネルギーがいるのだ。他の願い事にしてくれ」
「そうですか。じゃあ、えーと。うちの妻に、結婚前のような恥じらいを再びもたせてやってください」
大魔王は少し考えました。
「・・ごめん。さっきの地図、もう1回見せてくれる?」
[ 嫁と姑 ]
みけ子さんが、古びたランプをこすってみると---。
「ジャジャーン!げっぷ大魔王ですよー!あなたの願いを3つかなえましょう。ただし、
同じ願いを2倍にしてお姑さんに返しますからね」
「願い?まずお金よ!10億円ちょうだい!」
「はい。あなたに10億円。つまり、お姑さんには20億円」
「ぴちぴちの若いままで、100歳まで生きさせて!」
「はい。あなたは100歳まで。つまり、お姑さんは200歳までぴちぴち」
「く、くやしい・・」
「3つめは?」
「腎臓を1つ摘出して」
[ もとどおり ]
飛行機が不時着して、政治家とアイドルスターと会社員、3人の男が無人島に流れ着きました。
見渡す限りの大海原。3人は、途方に暮れて海辺を歩いていたところ、珍しい形のビンを見つけました。
何気なくこすってみると、突然あたりに煙がたちこめ、ビンからなにやら人影が。
「ふっふっふ。おいらはスリスリ大魔王。500年ぶりに外に出してくれたお礼に、1人1つずつ望みをかなえてあげよう」
真っ先に大魔王に飛びついたのは、政治家でした。
「家に帰してくれ!選挙も近いのに、こんな所で時間をむだにはできない!国を変えるのは私なんだ!!」
大魔王がなにやら呪文を唱えると、政治家の姿はすーっと消えました。それを見てアイドルスターは叫びました。
「僕も帰りたい!!こんな、人のいない所にいたくないよ。映画の撮影もあるし、ファンが何百万人も待ってんだよー!!」
大魔王の呪文とともに、アイドルスターの姿も消えました。
残った会社員は、控えめに言いました。
「私は別に、帰らなくていいんです。仕事も家庭も未練はありませんから。でも、ここで一人だけになるのは困ります」
政治家とアイドルスターが戻されました。
[ 議員の場合 ]
国会議員の脇之下さんは、国会が終わって帰る途中、古びたランプを拾いました。なにげなくこすったところ、煙とともに現れたのは大魔人。
「ふぁっふぁっふぁっ。1万年の眠りから覚ましてくれたお礼に、願いを3つかなえてやろうではないか」
「本当かなぁ?じゃあ試しに、今アイスコーヒー飲みたいんだけど」
ポッ!
目の前には突如、樽99999個分のアイスコーヒー。
「おおっ!すごい!よし。じゃあ、南の島に行きたい!美女がいっぱいの!」
ポッ!
いつのまにかそこは常夏の島。たくさんの裸の美女が、しどけない姿で脇之下さんに寄ってきます。
「うはー。あと1つだな。よし。もう何もしたくない!仕事をしないでいられるところに行きたい!」
ポッ!
気がつくと脇之下さんは、国会が開かれている場に戻っていました。