頌栄女子学院中学校・高等学校


学校説明会 訪問日時:2002年10月26日

あいにく小降りの雨だったので地下鉄の浅草線高輪台駅を利用しようと思っていたんですけど、JR五反田駅に着いたときには雨は上がっていました。そこで、五反田から歩いて頌栄女子学院に向かってみることにしました。

とても幅の広い桜田通りはずーっとゆるやかな上り坂になっています。歩いていると反対側から制服のスカートを極端に短くし、ルーズソックスをはいた高校生たちが歩いてきました(@@) 中には茶色いハイソックスをはいた子もいます。髪の毛は当然のようにまっ茶っ茶です(@@)

ええっ?? この子たちが頌栄の子??とびっくりしたんですけど、男子の生徒の集団も歩いていましたから、どうやら頌栄の子ではないようなのでほっとしました(^^;; 男子も髪を茶色く染めた上、ポケットに手をつっこんで、道幅いっぱいに広がって歩いています(^^;; なんだかガラ悪そう・・・(^^;;

女子の生徒をじっくり見ると、ブレザーの下にV字型のライン入りの白いセーターを着ています(^^;; ブレザーは三つボタンのように見えました。うーん、どこの子たちでしょう・・・? 明治学院ということはないでしょうが・・・。

頌栄の子たちでなさそうとわかってほっとしつつ、なおもしばらく歩いて大きな交差点を左折すると、すぐにレンガ造り風の風格のある校舎が見つかりました。地下鉄の駅から出た人たちが続々とその校舎の中に入っていきます。

校内に入ると、会場のグローリアホールまで迷路のように曲がりくねった通路を歩いていきます。中庭の、雨に濡れた芝生の緑が目に鮮やかです。そして校舎のあちこちに木が植えられているのが目にとまります。とても緑の多い環境のようです。

グローリアホールはかなり広い講堂でしたが、開始15分前に入ったというのに、もう前の方から半分以上の座席が、びっしり埋まっていました(@@) 案内の先生がたはとっても感じが良かったです^.^ 帰国子女の受験が多い学校ですので、一般受験者は1階、帰国子女は2階と分けられました。

会場に受験生の姿がぜんぜん見えないな・・・と思ったんですけど、あとで児童たちは別室に誘導され、説明会のあいだはほかのことをしていて、校舎見学終了後に保護者と合流するシステムであるとわかりました。児童たちが説明会のあいだどんなことをしていたのかはわかりませんけど、学校説明会というのは、子どもたちにとっては退屈であることが多いでしょうから、すぐれた制度だと思います^.^

ちょっとせまい座席に座って待つと、あとからあとから来場者が詰めかけてきます。通路に補助いすを出しただけではたりずに、立ち見の人までがでるほどの盛況となりました(@@)

説明会は司会のかたがいらっしゃらずに、いきなり院長先生のお話から始まりました。さいしょ、スピーカーの調子が悪くて、院長先生のお声は切れ切れにしか聞こえませんでした(^^;;

かろうじて聞き取れたところによると、院長先生はいつもお話が長くなってしまうので、「45分経ったら手を上げてもらうように頼んでいる」そうですが、お話が1時間半にわたってしまったこともあるそうでした(^^;; これは相当長くなりそう・・・と覚悟を決めつつ、講堂のいすが固いものではないことに感謝しました(笑)

けっきょく院長先生のお話は1時間10分ほどでしたが、話術がとてもお上手でらっしゃるので、あまり長いとは感じられませんでした^.^ ことし86才でらっしゃるそうですから、豊島岡の二木校長先生よりも年上でらっしゃることになります(@@) ですが、実にかくしゃくとしてらっしゃって、お年を感じさせません。時には演壇を降りられて会場を歩きながらのお話は、ユーモアに富んでいて、しばしば会場から笑いが起こりました^.^ 年配の先生のお話というのは、枯淡の域に達してらっしゃるといいますか、味があってわたしは大好きです^.^

院長先生のお話は、あっちに行ったりこっちに行ったりでメモを取るのはたいへんでしたけど、とてもわかりやすいものでした。

本校は塾主催の説明会はもう11〜12回実施してらっしゃるそうですが、学校主催の説明会はただ1回のみだそうです。

現在の院長先生は3代目でらっしゃり、ことしで38年目になられるそうでした。昔、中学をなくす学校が多かったそうですが、「人の反対をやるのが好き」でらっしゃるそうで、中学に力を入れられたそうです。

「一貫をとなえている頌栄から中学がなくなったら一貫もなにもない」というお考えから、セントラルヒーティングの中学の新しい校舎を建てられたそうです。このことは、当時他校から「軽べつされた」そうです。

生徒が少なかったころは、教室をベニヤ板で仕切って少人数の授業をしていたこともあったそうですが、生徒がだんだん増えてきたのは「神の恵みだと思います」とのことでした。

本校の特色としては、「まじめな学校」であり「裏がない」ということでした。このことについては何度も強調されており、たとえば「裏口入学は一つもない」とのことで、しばしばお嬢さんを不合格にされた卒業生の方や、在校生の妹を不合格にされた保護者からいやみを言われるそうでした(^^;;

教育の原点は「正しいことをやる」ことであり、「絶対に不公平なことはいたしません」という信念を持っていらっしゃるそうです。

また、たいへん意外に思ったのは、本校の建学の精神が「良妻賢母」であるということでした(@@) 頌栄というと帰国子女の多い学校で有名ですから、なんとなく会話には英語が飛びかい、生徒たちは足を組んでポテトチップスでも食べながら授業を受けているんじゃあるまいか・・・というようなイメージがありましたから、なんだかほんとうに違和感を覚えました(@@)

この建学の精神については、「別に変えたわけじゃない」そうですが、「男女は同権だけど同質じゃないんだよ」ということが「良妻賢母から引き継いだ、私の建学の精神」であるそうでした。

「お父さんお母さんが仲良くしていると不良になりませんよ。子どもに心配をかけていたらいい教育はできませんよ。明るい家庭を作る。家庭が明るく団らんがあれば、子どもはかならずちゃんと育つ。育つようにできてるんですよ。お父さんお母さんが仲良くすること。そうすれば子どもはちゃんと勉強するんです」

「本当に大切なことはなにかというと、しつけです。必ず叱るということ。叱るということは教育ですから。scoldは教育なんです。叱らない親がいるとしたら、親としての価値がないんです」

「日本では叱ると怒るがいっしょになっている。怒ったら子どもは離れていく。2つ叱って3つほめる。頌栄の先生がたにも、ほめてやれよと言っている。ほめられれば、子どもはうきうきして先生が好きになる」

もし頌栄という学校名を伏せてこれらのお言葉だけをお聞きしたならば、まさに良妻賢母型の日本の女子校そのもののようなお話です。わたしの頭の中にあった頌栄という学校のイメージがすっかり変わりました^.^ あらためて、学校というのは実際に訪問してお話をお聞きしてみないとわからないものだなあ・・・と思い知らされました^.^

あいさつ、授業態度などについては、その場で叱る。現場で叱る。このお話は、いちおう教育のはしくれのようなおしごとをしているわたしも常に心がけていることですから、とても共感がもてました^.^

つづいて院長先生のお話はすこし脱線し、他校には耳の痛いお話もありました(^^;;

「入る前ならともかく、入ってから寄付を取ったりお金を無心するのは教育者じゃない」

「頌栄のラインより上の学校が繰り上げ合格を出している。あれもサギですよ。キリスト教の上位の学校が、3週間以上たって、制服まで作っていたのに繰り上げ合格を出す。商売と同じですよ。試験の時に上の方をとっていれば偏差値は上がる。インチキと同じですよ」

このあたりはご年配の先生ならではのお話だと思います(^^;; 50歳代、60歳代の校長先生がおなじお話しをなさったら、なまぐさい、とげのある雰囲気になりそうですが、院長先生のお話からはすこしもそんな感じは抱けませんでした。

本校では、「繰り上げ合格は、親子だから、きょうだいだからは一切ない。一人もいません。今は補欠もとらない。なぜやめたか。卒業式の謝恩会のお母さんのあいさつで『補欠で入れていただいて』というのがあって、ぐっときたからです。6年間引きずっているのかと」

「だんだん学校もこすっからくなっている。子どもの人数が減っているから。減ったらクラスを減らせばいい。人口が減ってるんだから」

まさに言いたい放題という感じですが、おそらく、戦争で何もかも失った経験のあるかたならではの強さといったようなものではないでしょうか。

つづいてお話は軽井沢の山荘のことになりました。この山荘は、去年壊して新しく作ったものだそうです。

山荘を新築するにあたって、「借金はしていません。預金しておくよりも、こういうものを作ったほうが生徒のためになるからです。ありがたいことに借金はありませんから、だから寄付金を取らないんです」というお話がありました^.^ この山荘では、都会では得られない、自然と親しみながらの教育がなされているそうです^.^

つぎに、本校の教育の成果について、具体的に数字を上げながらのご説明がありました。資料として、全校生徒の氏名入りの英検の取得状況の一覧表が配付されていました。全氏名を掲載されたことについては、「うそがないことを照明するため」とのことで、正直さ、誠実さのあらわれのようです^.^

その表を見てみますと、在籍生徒676名のうち、英検1級取得者が5名、準一級にいたっては72名もいます(@@) 2級(高校卒業程度)取得者285名のうち、129名は中学生で、しかもそのうち41名は中1です(@@)

「英語に関しては日本一だと思いますよ」という院長先生のお言葉がうそではないと思わせる、ものすごい結果です(@@)

また、大学合格実績についても、2002年度は東大2名、早稲田60名、慶應30名、上智31名などの堂々たる結果を出しています。なお、慶應については、2001年はなんと62名合格させています(@@) これは女子校の人数比ではナンバーワンの実績だったそうでした。

この合格実績についても、院長先生は「ひとりで3つ4つ受けているんですよ。同じ大学の別の学部を」と、さらりとおっしゃいました(^^;; これは他校ではぜったいに言いそうにないことです(^^;; じっさい、大学合格実績については、ひとりで同じ大学にいくつも合格実績を作っているというのがほとんどの学校での実情です(^^;;

それをあっさり白状してしまわれるところに、院長先生の、ごまかしはしないというご信念があらわれているように思いました^.^ さすが年の功と申しますか、嘘やごまかしはいつかはばれる。だったら最初から言わないほうがいい・・・という意気を感じます^.^

このように、学校の出している結果を数字として、誇張もせず謙遜もせず提示なさるご姿勢にはとても好感が持てました。美辞麗句は並べません。結果を見てください。その結果を見てご判断なさるのは保護者のかたがたです・・・というようなものを感じて、とてもすがすがしく思いました^.^

わたし自身が、得点なり偏差値なり合格実績なり、結果や数字を出さないと生きていけない世界にいるために、こんなに共感を抱くのかも知れませんけど・・・(^^;;

院長先生のお話は、それからご自身の「ぼけ」などについてもおよび、「もうじきいなくなるから、ご安心ください」などとおっしゃって会場の笑いをとったりなさいました(笑)

そして最後に「頌栄はお金がいっぱいございますから、寄付金はございません。少したまれば生徒のために使いますから。山荘で生徒たちは星や雲海を見ていろいろな感想を抱く。こういうことにお金をつかったほうがいいでしょう」

「中1はかわいい。中1のうちに仕込んどかないと、反抗期に言っても聞いてくれない。家庭での教育と学校での教育はまったくちがう。やる気を出させるのが得意なんです」などのお話のあと、

「学校は楽しい。学校へ来るのはぼけ防止のためなんです」と、会場を笑わせて終わられました。終わったあと、学校説明会としてはめずらしく、会場から拍手がわき起こりました^.^ 院長先生の正直さ、率直さに、きっとみなさん共感なさったんでしょうね^.^

つづいて壇上に立たれた広報部の先生は、院長先生がまだステージからお降りになりきる前に、会場に向かって「お疲れさまでした」とおっしゃって笑わせたのち(笑)、入試についての実務的なお話をなさいました。

そのほかの先生のお話はなく、説明会はまさに院長先生の独壇場という感じでしたが、少々長かったことをのぞけば、とてもいいお話で満足感がありました^.^

つづいて校舎見学となりましたが、なにしろ出席者の数が多いので、出発までかなりの時間がかかりました(^^;; ですけど、3列ずつ整然と指示されての移動でしたから、不快感は抱きませんでした。

引率の先生についてグローリアホールを出ると、木々のあいだを抜けて急な下り坂の道路を歩きます。はじめは校舎が見えたりしているのですが、すこし歩くとまわりを木々で囲まれ、小鳥が鳴いて、まるで公園のよう・・・というより、公園そのものです。やがて木々の枝のあいだから見えてきた、あの茶色い場所は池かな?などと思っていたら、そこは運動場でした。

五反田からわずか徒歩数十分という場所に、このような空間があるのは驚きでした。なんとなく子どものころにときどき行った井の頭公園を連想したりしました。森に囲まれた運動場なんて、うらやましいの一言です^.^

坂を下りきったところで校舎に入り、いろいろな教室を見せていただけました。土曜の午後なので生徒は一人もいませんでしたが、びっくりしたのは中1の普通教室でした。ふつうの学校の2倍近いと思える面積があり、黒板はその角の部分に設置されています。そして生徒の席は階段状になっており、黒板を中心に扇型に配置されています(@@)

こんな教室は、今までどこでも見たことがありません。生徒の机といすも独特のデザインで一体化されたもので、いすは左右に回転できるようになっています。まるでどこかの外国の学校のようです(@@)

扇型の席の後ろにもたっぷりとしたスペースがあり、生徒用のロッカーがあります。そのほか、壁にはフックがとりつけられており、色とりどりの私物入れの袋がぶら下げられていました。

校舎全体は決して新しいとは言えませんが、廊下にも教室にもたくさんの蛍光灯が取り付けられていて、とても明るいのには感心しました^.^ また、あちこちの壁に絵画や研究発表などの生徒の作品が展示されていました^.^

来るときには気付かなかったことですが、順路を回り終わってふたたび中庭を通ったとき、校舎に蔦がからまって覆いつくしているのがわかりました^.^ このあたりはイギリスの伝統校そのものという感じで、風格を感じさせられました。

説明会が終わっての感想ですが、この学校ほど、来る前のイメージと実際に来てみての感想がちがう学校は初めてだなあ・・・というものでした。

来る前は、なんとなくチャラチャラした学校・・・という偏見を抱いていたんですけど、実際はイギリス風の重厚な伝統の中に、日本的な感覚を融合させた、とても落ち着きのある学校でした。また、説明会のお話の中で聖書の時間と礼拝についてほんのちょっぴり触れられただけで、宗教色というものはまったくと言っていいほど感じられませんでした。

あいにく今回は生徒のようすはぜんぜん見れませんでしたけど、授業見学会のほか、毎週月曜と金曜に予約なしの校内案内が設けられていることから、学校の自信を感じ取ることができます。

学校に正直さと率直さ、そしてしっかりとした進学指導を求めるかたには、とってもお勧めの学校ではないかと思いました^.^


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