裏技

巻ノ弐


”タイタニックエスケープ”



少し前に大ヒットした映画「タイタニック」。この映画のラストシーンに、人
が両手を広げてゆっくりと海に落ちていくというのがあります(実は私、まと
もに見たことはないんですが・・・)。
今回の技、”タイタニックエスケープ”は、このシーンを見てひらめいた技で
す。元々「こういう技ができたらなぁ」と思っていたのですが、上手くできな
くて断念していたのが、このシーンを真似ることによってものの見事に成功し
た、という経緯があります。ですから、けっこう構想から完成までに時間のか
かった技です。前回のは20秒ほどで考えたものですから(笑)。
しかし、ここで私は大変なことに気がつきました。それは、


「これってフルーレの技じゃん」


・・・忘れてた。
いやあ、前回書いた予告の時に気づくべきでした。ここってエピャー養成所な
のにぃ。しかしまあ、書いたものはしょうがないので今回はこれでいきます。
それに私の持論の一つに、

「真のエピャーはフルーレだろうがサーブルだろうがエピャーのままである」

というのがありますし。
そういうわけで気を取り直して、始めます。
今回は、まずは技の開発を辿っていきます。


Ⅰ.発端

私は左フェンサーなので、よく右の人とフルーレをします。この時、左対左で
は有効なエスケープが、あまり成功しませんでした。自分の背中側(ここでは
左利きなので向かって左側)に逃げるこの技、相手も左利きなら相手の剣は右
側にあって避けやすいのですが、右利きだと剣が左側に来るのでむしろ自分か
ら当たりにいってしまうのです。そこで、「剣が左にあるなら自分が右に逃げ
ればいいじゃないか」と、逆逃げエスケープというのを思いつきました。
しかし、これがなかなか上手くいきませんでした。通常のエスケープなら利き
手を軸にして回転すれば簡単に避けの姿勢になれるのですが、逆回転の場合肩
が交差して反則になってしまうのです。また足の向きも何となく避けにくい感
じでした。そのためこの技は一旦お蔵入りになります。


Ⅱ.転機

そんな折、映画「タイタニック」が公開されました。繰り返しますが映画館で
見たわけではなく、TVのCMだったと思います。それで、だれでも一度は
やってみる(ですよね?)、ラストシーンの真似をしてみました。その時、頭
の中に閃光が走りました。
「これだ!」
ここで一度は封印された逆エスケープを思い出しました。この技の欠点は体の
回転と足さばきにあった、ならば回転することなく、そして足を動かすことな
く避ければいい、と。
「よし、これでいける。」


多分どういう技かは想像がついたとは思いますが、それでは実際のやり方につ
いて。

1.相手が攻撃してくる。
2.おもむろに両手を水平に伸ばす。
3.そのまま正面(右利きなら左)に倒れこむ。
4.するとどうだ!予想もしない方向に避けられた相手は、剣の軌道修正
    ができずアタック失敗!
反対にこっちの剣が鮮やかにヒット!
そして映画のワンシーンよろしく崩れ落ちる(ちと違うか)! 

となるわけです(ほんまかいな)。
私はこの技を食らったことがないので(当たり前だ)よく分からないのですが
やられた人に聞くと、思ったより防御しにくいらしいです。あと、スピードは
むしろゆっくりの方がだまされてくれるらしいです。遠目から突っ込んでくる
ところをさりげなく避けるというのが理想です。
というわけで、ここに新技「タイタニックエスケープ」が完成したように見え
ました。
ところが、この技にはとんだ問題点がありました。


Ⅲ.実践

早速、この技を使ってみることにしました。しかし、技を放った直後、私は気
がつきました。

映画の場合:落ちる先は海>痛くない
現実:落ちる先は床>すげえ痛え

だったのです(笑)。何せ両手を広げているうえ、真っ正面から倒れるわけで
すから(誰でも分かる?そりゃそーだ)。しょうがないので、姿勢を変えてみ
ることにしました。

<案その一>後ろの手を使う。
倒れきる直前に片手を床につく。これなら受け身が取れる!
結果:ついた手が倍痛い。メタピだとさらに倍。片手だけつくと変な風に転
ぶ。

<案その二>転ぶ前に足を出す、もしくは飛び出してバランスを保つ。
要は足をつけばいいってことだね!
結果:下手すると足をひねる。意外と足が出しにくい(前者)。
ピストから故意に出てしまい1mバック。もしくはコンビランプ破壊(後者)。

<案その三>ひざを突いてから二段階で倒れる。
ひざでショック吸収してからゆっくり倒れよう!
結果:ひざがついた時点でアルトがかかる。避けるのが遅くなる。

・・・どうも上手くいきません。
やはり、この技はお蔵入りになってしまうのでしょうか?


Ⅳ.結論

さまざまな試行錯誤の結果、私はこう思うことにしました。


「タイタニックエスケープは大技>痛いのはしょうがない」


そう、

<案その四>
耐える

です(身もふたもねえ)。
気をつけてやれば案外大丈夫なものです。ポイントとしては、
・顔は横向きで(正面から落ちるとマジで痛いです)
・胸を張る(頭よりは胴体の方がまし)
・どこか一個所だけ先につかせずに全体で落ちる
です。
なお、それでも危ないことは危ない技ですので、怪我しやすい人は止めておい
た方がよろしいです。「でも使いたい!」という人(多分いねえ)は知りませ
ん、と言いたいところですが、それでは無責任ですので、次回「神の手」をお
待ち下さい。

そう、次回予告!
完成したかに思われた「タイタニックエスケープ」。
がしかし、Ⅴ.新説で現れる新たな可能性!
全く違った観点から「避け」を考察する!
その結果生まれる技とは!?
こうご期待!

相変わらずたいしたものじゃないんですけどね・・・
特撮ヒーロー物系の次回予告にだまされないように。
それではまた次回。

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