ワイン人の物語




僕は最近夕方になると古墳に行って夕陽を眺める。 日本最大の円墳の頂上からの眺めはとても良い。 キリンの金のファイアを飲みながら思索をめぐらす。 たとえば世界のパンツの需要と供給は一致しているのか。とかね。 もしかしたらパンツは足りないのかもしれないし,余ってるのかもしれない。 生産されたパンツの二分の一しか消費されてないのかもしれない。

今日は空を眺めながらワイン人について考えた。 ワイン人と言う呼び方が一般的かどうかは分からないけれども。 とにかくそのひとの体液は赤ワインなんだからワイン人と言うことが一番適当だと思われる。 もしかしたらブルゴーニュとかモン・ぺリ人なんて呼ばれているかもしれないけど。

僕は中学のときワイン人と席がとなりだった。 もちろん当時はその人の体液が赤ワインでできているなんて知らなかった。 全然匂いとかもしなかったからね。 ワイン人についての思い出といえば, ワイン人が昼時に 空腹のために腹がなるのが僕に聞こえるのではないかと気にしていたということだけだ。

僕はワイン人が何を考えているかよく分からかった。 ワイン人は誰が好きだったのだろうか。 もしかしたらワイン人は人間の男の人を好きになったりしないのかもしれないし。 その価値判断の基準がひどく一般の人からずれているのかもしれない。 まさかとは思うけれど,単性生殖をする可能性だって否定できないのだ。

けれどももしかしたらその人は当時はワイン人ではなかったかもしれない。 もしかしたら, ワイン人というのは先天的なものではなく後天的に獲得される 何かしらの能力の一つなのかもしれないから。 そのへんのことは僕はワイン人について詳しくないからよく分からない。 科学的にもまだ証明されてないだろう。 (もちろん, 一般的にワイン人という種類の人達が 普通の人間と区別されて認知されているかも分からないけどね。)

この前,ワイン人に七年ぶりに出会った。 恋人を連れていた。一見普通の男に見えたけどもしかしたらワイン人かもしれない。 ワイン人は外見的に普通の人と違った特徴があるわけではないからね。 もしかしたら,彼はポン酒人とかいう性質の人かもしれない。

僕はワイン人と少し話したんだけど,ワイン人は「私,AB型なの」といっていた。 ワインにAB型なんてあるのだろうか。 もしかしたらA級のぶどうからできたワインとB級のぶどうからできた ワインの混合体液と言う意味だったのかもしれない。 僕は,ワイン人はイザと言うときのために輸血用のワインを携帯しているのだろうな。と思った。 何しろ病院には赤ワインは常備されてないだろうから。

僕は心配になって, ワイン人が怪我をしたらなにワインを持って見舞いに行けば良いのか 帰りに自転車をこぎながら考えていた。 けれども結局よく分からないのでやめた。 空には星が冷たい光を放ちながら,自らも凍えていた。

このあたりで僕とワイン人の物語は中断する。 僕はワイン人ともう少し仲良くなってワイン人の性質について知りたかった。 けれども,僕は普通のA型の血液が流れている人間だから, ワイン人の興味をそそらないのかもしれない。 僕はほんの少しだけポン酒人や焼酎人がうらやましく思えた。