「古墳日誌」第十ニ号




最近気が付いたことは、終わりのないものなんてないということだ。
もし終わらないものがあったとしても、それはほんの限られたものなのだろう。
(僕はまだそれを発見していないが)
そして全てのものがいつかは終わりを迎えてしまうことが、
僕にとっては希望であると同時に絶望でもあるということ。
そんなこと考えた。

この古墳日誌も終わりに向かって着々と進んでおります。


2000年2月20日(日) 雨後晴れ

夕方古墳へ行く。
丸墓山古墳の頂上で月を待ったが、なかなか出てこないので帰った。

帰り道のさきたま緑道で、東の空に低く赤い満月を見た。
先月の満月は、僕が長くて暗いトンネルを通過中だったのと、
友人の犬が病気で死んだのとで、とても悲しい気分で眺めたけれど、今回は少し回復していた。
夜は少し文章を書こう。
それから少し月でも眺めるか。


2月25日(金)晴れ

日の光は黄色を帯びて随分と春めいてきた。

この日は夜に友人の車で古墳に行き丸墓山古墳に登った。
さすがに夜は冷え込んで、寒さに耐えかねて急いで古墳を降りた。
古墳の上からは、荒川にかかる大芦橋の明かりが見えた。

古墳の近くのセブンイレブンで女性誌を立ち読みしていたら、
A型のおひつじ座は「間抜けナンバーワン」で
「脳が合わせ味噌でできている」と書かれていたので憤慨した。
出版社を見たら婦人画報社だったので
「だからフランスの会社に買収されるんだ」と思ったが
怒りはなかなか収まらなかった。


2月27日(日)晴れ後曇り後晴れ

外は曇ってきていて北風が吹いてきていて寒かった。
この日は晴れていたので気温が上がるだろうと期待していたのだけれど。

寒かったため古墳に行こうか迷ったけれど、結局行くことにした。
北風が向かい風だったので大変だった。

この日の夕空は、空のほとんどの部分が黒い雲に覆われているのに、
西の空は夕方の光を覗かせていて、なんだか少し不気味な感じのする夕方だった。
行田市の利田という、いつも古墳に行く道よりも少し北の方から古墳へと向かう。

セブンイレブンでココアを買って丸墓山古墳に登り、
ココアを飲みながら何回も古墳の頂上を周回した。

丸墓山古墳の頂上の桜の芽はまだ堅く閉ざされていた。
僕は手を伸ばして枝に触れ、少し引っ張ってみると冷たい桜の木の枝は、柔らかく揺れる。
しなやかで、枝と枝がぶつかる振動がびりびりと手に伝わってきた。
桜の木も生きているのだなあと感じた。

仮死状態の桜の枝の間から一番星(宵の明星)が見えた。
空はいつのまにか晴れていて西のほうはまだ不吉な色をたたえていた。
一番星は小さかったがその一点に白い光が物凄い濃度で押し込められたような、
強い光を発していた。

暗く、けれども空に残った太陽の残光に照らされて茶色くなった空気の中、
僕は古墳の階段を降ってゆく。

この日丸墓山古墳に登頂したのは六時ごろだった。


3月5日(日)晴れ後曇り

夕方古墳へと向かった。
三月になって初めての古墳だった。
昼間は晴れていたのに、この頃になると曇ってきて暗くなり、
その暗闇に埋もれるように梅の花が霞んでいた。

セブンイレブンでサンドイッチを買って丸墓山古墳の上で食べた。
今日はとても暖かかったのでコーヒーの冷たいのを買ってしまったが、
古墳の上に登るとだいぶ寒くなってきていた。

ビックリマンを食べたけれどまだ二弾だった。


3月12日(日)曇り後晴れ

久々に古墳に行く。 夕焼けがまだ冬のものだったけれど、真冬の夕焼けよりも少し赤みが増してきていた。

古墳の頂上に白い猫がいた。
白い猫は古墳の上の乾いた砂の上に体を擦り付けていた。

セブンイレブンでビックリマンを九個買って帰った。


3月13日(月)晴れ

夜友人と車で古墳に行った。
丸墓山古墳の頂上はとても寒かった。


3月14日(火)晴れ

午後二時に友人と車で古墳に行って友人の犬を散歩させた。
犬はまだ数週間の子犬で臆病だったので、僕が近づくと車の下に隠れてしまった。

カップルの片割れの女が鼻にかかった声で「かわいー」と言った。
カップルがやけに目立って目障りだった。

さきたま古墳公園の周りを二周走ったらとてもつかれた。
さきたま古墳の愛宕山古墳から奥の山古墳、鉄砲山古墳を経て二子山古墳、 稲荷山古墳、そして丸墓山古墳を登って降りて愛宕山古墳に戻ってくるコースだ。 全体で2キロぐらいはあっただろうか。 丸墓山古墳の階段の昇降がかなりきつくて後で膝を痛めてしまった。

もうすっかり春で暖かく、雲の間から青空がのぞいてきてすがすがしかった。


3月15日(水)晴れ

この日は夕方と夜中の2回にわたって丸墓山古墳への登頂を果たしてしまった。

夕方には丸墓山古墳を、野菜ジュースを飲みながら頂上をぐるぐる回った。

夜中の12時過ぎに友人と車で古墳に行って、丸墓山古墳に登った。
桜のつぼみが少し膨らんできていた。
もう古墳の雰囲気は春そのものだった。
暗闇の色も、空気の匂いや風の雰囲気も、すっかり柔らか味を帯びていた。
あと半月もしないうちに桜の花も咲き始める。
もうそんな季節なのだろう。


それでは今回はこの辺で。