夏休みの終わりに、どうしても指輪が欲しくなった。半年前にも同じ症状に襲われ、お気に入りを捜しまくった。
その時はシルバーの太いシンプルなのが欲しくて、どこにでも売ってるものなのにこだわりにこだわりまくり、3日間歩いて捜して、BEAMSでとうとう出会ったあのリング。チャイナリングと言うらしく、表面に実に味のある文字で「喜」と彫りこまれていた。
惚れた。

その後も表面に動物が彫ってあるやつやら(これは吉祥寺の公園前の民族系の衣装や雑貨の置いてある店でげっちゅ)しばらくシルバーブームが続いた覚えがある。ええ、まぁ、自己満足の世界はいってましたが。
それが、いつのまにか全部なくし……。物に執着がないとか言えば聞こえはいいけど、要するに落し物・忘れ物が多いから。財布も良く落とすリストに入ってたりして。(これは結構まずい)学生部の落し物担当の人と仲良くなってしまうなんてね。ああ恥ずかしい。
それから、バイトの関係でマニキュアも塗れない時期が続き、完璧に開き直りの段階に入った頃。バイトの友達が休みの日だけはちゃんとネ−ルアートしてることに気がつく。
負けず嫌いじゃないけど、バイトも辞めたからには私もしてみよーってことで、塗ってみたところ、指が異常に寂しく…。

てな脈絡ありで、指輪捜しの旅に。変なところでこだわるもんで、「これだ!」と思うものに出会うまで執拗に捜し続ける性格。それなのにすぐなくすのはなぜか。永遠の謎。

捜してるものは、見つかりにくい。
小さい頃に聞いた話だと、妖精さんが隠してるんだとか。急いでる朝、定期が中々見つからないとかありますね。ないーって思ってふと気がついたらすぐ近くにあったり。なんで気がつかなかったんだろう、とか後で不思議に思うけど、あれは妖精さんがいたずらしてるそうで。

いくら色んな店を覗いてみても気に入るものに出会えなかった私は、そんなファンタジーワールドに頭を飛ばしかけてた。
妖精さんになんか悪いことしたっけな、と。真剣に過去1ヶ月の行動を顧み、もしも無意識に何かしてたのなら、謝らねばと。(注:薬やってません)
盛り塩の採用も検討しかけてた頃(嘘)、ふらついてたラフォーレで見つけましたですよ♪異常にかわいくて、即買い。本当に気に入ってて、毎日その指輪をしている。殆どお風呂に入る時以外はつけたまんま。

話しは飛ぶけど、うちの祖母は小渕前首相と同時期に同じ病気で倒れて、今だに入院中。転院したり、色々あったけど、意識は戻った。ただ、半身不髄で話すこともできない。
もう長くはないのが分かってるのもあり、またかわいがってもらった大好きなおばぁちゃんなので、なるべく病院には顔を出すようにしている。
病人は指輪なんてしない。ことにうちの祖母の場合、意識はあっても体は動かせないこともあって、装飾品は一切つけてない。(近くの部屋のおばぁちゃんでばっちり化粧してる方がいるが、体動かせないのどうしてるんだろう。看護婦さんそこまでやってくれるのか?)
おばぁちゃんの白い細い指を見て、自分の指と形がそっくりだな、と気がついた。他に似てるところはないのに、やっぱり似てるとこは似てる。何か訴えたいような目で見られてるうちに、なんとなく指輪をおばぁちゃんの指に移していた。
自分の指をなんとなく嬉しそうに見つめてるおばぁちゃんはなんとなくかわいらしかった。今も指輪はおばぁちゃんの指にある。