要旨

 

第1章では、前提条件として、①データは『会社四季報』である事、②リスクはコーポレートリスクのみを扱う事、③貨幣的インセンティヴのみを経済行為として扱う事、④格付のデータは日本格付研究所(JCR)と日本格付投資情報センター(R&I)の両社の判断基準を併用する事、⑤格付得点は等距離の間隔尺度として扱うという前提条件を立て、格付得点を従属変数とした時の独立変数と成り得る諸変数に正の変数には総資産・自己資本比率・ROEが当てはまり、負の変数として不良債権総額・一株当たり配当金が当てはまると仮定した。

 第2章では、合計67の変数を取り扱うにあたって代表変数を抽出しなければならないが、その操作の手始めとして8つの時間軸を取る時間変数を時間軸を一時外生変数とせんが為、標準化を試みるにあたり3つの代表値即ち平均値・中位数・最頻値の内のどれかを採用する事となるが、その内平均値を代表値と決定した。

 第3章では、42の諸変数についての相関係数を求め、それらの個々の格付けに対する役割について論証した。論点を分かり易くする為に表と図を用いてそれについて考察した。

第4章では、2000年度の期待格付記号を割り出したが、その手法は線形並びに非線形の重回帰モデルによる代入法を用いる事とした。

第5章では、第4章迄の格付得点の度数の配置という前提条件の変更を行ったが、内容としてはその度数分布に於ける格付カテゴリーから導かれる諸変数から4変数を選抜し、それらのデータを標準化しそれらに重みを乗じ加することによって総合化されるところによる総合得点を以てして歪度を0としてあらしめる様、度数配置を遂行し、分析者自身の格付けを行う基礎を整えた。それから、4類型したクラスターに於ける格付得点の数値自体の高さについて考察した。

第6章では、期待経常利益並びに期待一株あたり配当をトレンドを求めることにより導き出し、それらの変数の実測値に株主資本比率を加え線形並びに非線形としての重回帰分析にて各変数に乗せられるべき変数及び定数を求め、期待経常利益・期待一株・株主資本比率をそれ代入し格付得点を絶対評価として割り出し、それに相対評価の平均を取ることで中庸としての評価を割り出し、これを以て分析者自身の格付得点とすることで格付記号の再記号化を図った。

結論は、①外部負債や予想ROEは格付記号に対する影響力としては弱い若しくは比較的弱い変数として存在すること、②一株当たり配当は収益に対するリスクプレミアムとしての働きが認められること、③期待格付記号は財務指標に近似させる変換という演繹並びにその逆である帰納に関し、相関係数で凡そ0.30から0.40の間で誤差を生じさせてしまうということにより格付記号の構成は財務指標の要因があまり強く反映されていないこと、④『会社四季報』の期待経常利益の今年度との相関が低い値を示していたことが分かった。